食事の記録をつけていると、多くの方が一度は迷うことがあります。「鶏むね肉は、生の重さで量るのか、焼いたあとの重さで量るのか」です。同じ鶏むね肉なのに、成分表には「生」と「焼き」の両方が載っていて、数字が大きく違います。どちらを選んでも同じだろう、と思って適当に選ぶと、記録の数字が、思った以上にずれます。
この記事では、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の原典を読んで、数字の見方を整理しました。先に、いちばん大事な結論を書きます。
- 成分表の数字は、「その状態の食品を100g量ったときの値」です。
- だから、量った状態と、選んだ食品の状態(生・ゆで・焼きなど)を、そろえます。
- 生と調理後を混ぜると、数字は大きくずれます。ごはんでは、2倍以上ずれることもあります。
以下は、その理由を、成分表の数字を実際に見ながら確かめていく話です。
成分表の数字は、何グラムあたりの数字なのか
「可食部100gあたり」の数字です。可食部とは、殻や皮、骨など、捨てる部分を除いた、食べられる部分のことです。
成分表の各成分の値について、原典の説明(第1章「廃棄率及び可食部」)には、次のように書かれています。
- 可食部とは、食品全体あるいは購入した形の状態から、廃棄する部分を除いたものです。
- 廃棄率とは、通常の食習慣で廃棄される部分が、食品全体や購入した形に対して何%か、を示した数字です。
- 成分表の各成分の値は、すべて「可食部100gあたり」の数字です。
つまり、卵なら殻を除いた中身、バナナなら皮を除いた実の部分について、100gあたりの数字が載っている、ということです。殻つき、皮つきの重さで量ったときは、そのまま100gあたりの数字を掛けてはいけません。
廃棄率の例
成分表のExcelから、いくつか拾いました。廃棄部位は、Excelの備考欄に書かれているものです。
| 食品 | 廃棄率 | 廃棄部位 |
|---|---|---|
| 鶏卵 全卵 生 | 14% | 卵殻(付着卵白を含む) |
| バナナ 生 | 40% | 果皮及び果柄 |
| ブロッコリー 花序 生 | 35% | 茎葉 |
原典には、廃棄部を含めた質量から、食べられる部分の質量を出すための考え方も載っています(購入量を求める式(c5)を、逆に使います)。食べられる部分の質量は、次のように出せます。
食べられる部分の質量 = 殻や皮つきの質量 × (100 - 廃棄率)÷ 100
たとえば、殻つきで60gの卵なら、食べられる部分は、60 × (100 - 14)÷ 100 = 51.6g です。生の全卵は、100gあたり142kcal、たんぱく質12.2g、脂質10.2gなので、この卵1個分は、次のとおりです。
- エネルギー:約73kcal(142 × 0.516)
- たんぱく質:約6.3g(12.2 × 0.516)
- 脂質:約5.3g(10.2 × 0.516)
皮つきで150gのバナナも、同じ考え方です。食べられる部分は、150 × (100 - 40)÷ 100 = 90g。生のバナナは100gあたり93kcalなので、約84kcal(93 × 0.9)になります。皮つきの150gに、そのまま93kcalを掛けて140kcal前後と数えてしまうと、実際よりかなり多い数字になります。
なお、これらは卵やバナナの大きさを、私が例として決めた計算です。実際の食品は、大きさも、殻や皮の厚みも、一つ一つ違います。あくまで、考え方の練習として読んでください。
調理すると、100gあたりの数字は、なぜ変わるのか
調理で水分が抜けたり、水を吸ったりして、食品の重さが変わるためです。鶏むね肉(若どり・皮なし)のたんぱく質は、100gあたり、生で23.3g、焼きで38.8gです。
ここからが、本題です。成分表には、同じ食品の、生と、ゆで・焼き・炊きなどの調理後の数字が、別々に載っています。それは、調理で食品の重さが変わり、成分の割合も変わるからです。
鶏むね肉(若どり・皮なし)の、生と焼き
成分表のExcelから、100gあたりの数字を並べました。なお、鶏のむね肉には「若どり」と「親」の区分があり、数字が違います(皮なし・生のエネルギーは、若どりが105kcal、親が113kcal)。この記事の数字は、すべて「若どり」の区分のものです。
| 100gあたり | 生 | 焼き |
|---|---|---|
| エネルギー | 105kcal | 177kcal |
| 水分 | 74.6g | 57.6g |
| たんぱく質 | 23.3g | 38.8g |
| 脂質 | 1.9g | 3.3g |
| 重量変化率(原典の表12) | (調理前) | 61% |
たんぱく質は、生で23.3gなのに、焼くと38.8gです。肉そのものが変わったわけではありません。表の水分を見ると、74.6gから57.6gに減っています。焼くと水分が抜けて、100gあたりの中身が濃くなる、と読めます。
原典の表12(調理方法の概要および重量変化率)には、この焼きの条件が書かれています。長さ3cm、幅3cm、厚さ1cmに切った鶏むね肉(皮なし)を、電気ロースターで焼いたもので、重量変化率は61%でした。生100gを焼くと、成分表の条件では、およそ61gになる、ということです。
生と焼きを、同じものとして数えてみる
原典は、調理後の食品について、「調理した食品全質量に対する成分量」を求める式(c4)を載せています。
成分量(g) = 調理した食品の成分値(100gあたり) × 調理前の可食部質量(g)÷ 100 × 重量変化率(%)÷ 100
生のむね肉100gを焼いた場合に、この式を使ってみます。
- たんぱく質:38.8 × 100 ÷ 100 × 61 ÷ 100 = 約23.7g(生の23.3gに近い)
- エネルギー:177 × 61 ÷ 100 = 約108kcal(生の105kcalに近い)
- 脂質:3.3 × 61 ÷ 100 = 約2.0g(生の1.9gに近い)
生の数字に、近い値になりました。原典にも、調理した食品の成分値は、調理前の食品の成分値との整合性を考えて計算した、という趣旨の説明があります。つまり、「生100gの中身」と「焼いて約61gになった中身」は、ほぼ同じ量のたんぱく質を含んでいる、ということです。100gあたりの数字が違うのは、水分が抜けて、重さが減ったからです。
混ぜると、どれくらいずれるか
もし、焼いたあとの肉を100g量って、食品として「生」を選ぶと、次のようになります。
- 記録されるたんぱく質:23.3g
- 本来の成分表の数字(焼き):38.8g
- 差:15.5g(記録のほうが少ない)。エネルギーも、105kcalと177kcalで、72kcal少なくなります
逆に、生の肉を量って「焼き」を選ぶと、実際より多く記録されます。どちらの間違いも、毎日続けば、1週間、1か月の数字に、はっきり影響します。
炊く前の米と、炊いたごはんは、どれくらい違うのか
精白米(うるち米)の100gあたりのエネルギーは、炊く前の米が342kcal、炊いたごはんが156kcalです。炊くと水を吸って、重さが約2.1倍になるためです。
ずれが大きくなりやすい食品の1つが、お米です。精白米(うるち米)の、炊く前の米粒と、炊いたごはん(めし)を並べます。
| 100gあたり | 精白米(水稲穀粒) | 精白米(水稲めし) |
|---|---|---|
| エネルギー | 342kcal | 156kcal |
| 水分 | 14.9g | 60.0g |
| たんぱく質 | 6.1g | 2.5g |
| 脂質 | 0.9g | 0.3g |
| 炭水化物 | 77.6g | 37.1g |
| 重量変化率(原典の表12) | (調理前) | 210% |
炊くと、米はたっぷりの水を吸います。表12では、精白米(うるち米)を炊いたときの重量変化率が、210%です。炊く前の米の、約2.1倍の重さのごはんになります。表の水分も、14.9gから60.0gに増えています。
ここで、炊いたごはん150gを食べたとします。
- 「ごはん(めし)」を選んだ場合:156 × 1.5 = 234kcal
- 間違えて「米粒(生)」を選んだ場合:342 × 1.5 = 513kcal
差は279kcalで、約2.2倍です。ごはんは毎日食べる方が多いので、この違いは、そのまま、1日の合計のずれになります。
逆に、炊く前の米で量る場合は、重さの変化を考えます。たとえば、炊く前の米が75gなら、成分表の条件では、75 × 2.1 = 約158gのごはんになります。炊く前の米で記録するときは「米粒(生)」を、炊いたあとのごはんを量るときは「ごはん(めし)」を選ぶ、という使い分けになります。炊き上がりの量は、水加減や炊飯器によって変わることも、覚えておいてください。
原典は、ごはんの水分についても書いています。四訂の成分表では65%だった水分が、五訂以降は、実際に食べるごはんの水分に合わせて、60%としています。また、炊き方によって重量変化率が成分表と異なる場合は、ごはんの成分量も変わる、とも書かれています。数字は、あくまで、標準の条件で炊いたときの値です。
ゆで、焼き、油いためで、数字はどう変わるのか
ブロッコリー(花序)の100gあたりのエネルギーは、生が37kcal、ゆでが30kcal、焼きが83kcal、油いためが109kcalです。調理の方法で、数字は大きく変わります。
ブロッコリー(花序)を例にします。生の廃棄率は35%(茎葉)です。調理後の食品は、廃棄率が0%になっています。
| 100gあたり | 生 | ゆで | 焼き | 油いため |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | 37kcal | 30kcal | 83kcal | 109kcal |
| たんぱく質 | 5.4g | 3.9g | 9.9g | 6.9g |
| 脂質 | 0.6g | 0.4g | 1.2g | 6.3g |
| 炭水化物 | 6.6g | 5.2g | 8.4g | 6.1g |
ブロッコリーでは、ゆでると、成分がゆで汁に溶け出して、数字が下がっています。焼きは、水分が抜けて、100gあたりの数字が上がっています。油いためは、油を吸うので、脂質が6.3gまで増えています。同じ野菜でも、調理の方法で、100gあたりの数字がこれだけ違います。食品によって、変わり方は違うので、ほかの食品は、成分表の数字を確かめてください。
もう1つ、大事な注意があります。原典は、成分表の調理について、使う調味料の種類や量を決めにくいため、一部(マカロニ・スパゲッティのゆで、にんじんのグラッセ、塩漬、ぬかみそ漬)を除いて、調味料を加えずに調理した、と書いています。また、ゆでは、ゆで汁を捨てた状態の数字で、水煮も、煮汁に調味料を加えず、煮汁は捨てています。実際の料理は、調味料も、煮汁も含めて食べることが多いので、成分表の数字だけでは足りないことがあります。
皮つきと皮なしで、どれくらい違うのか
大きく違うのは、脂質です。生の鶏むね肉(若どり)は、100gあたり、皮つきが5.9g、皮なしが1.9gです。
鶏むね肉には、皮つきと皮なしがあります。成分表には、それぞれの生と焼きが載っています(若どり・主品目、100gあたり)。
| 100gあたり | 皮つき 生 | 皮なし 生 | 皮つき 焼き | 皮なし 焼き |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | 133kcal | 105kcal | 215kcal | 177kcal |
| たんぱく質 | 21.3g | 23.3g | 34.7g | 38.8g |
| 脂質 | 5.9g | 1.9g | 9.1g | 3.3g |
| 重量変化率(表12) | (調理前) | (調理前) | 62% | 61% |
特に違いが出るのは、脂質です。生で見ると、皮つきは5.9g、皮なしは1.9gで、3倍ほど違います。食事の記録でPFCを見ている方なら、この差は、1食ごとに、はっきり数字に出ます。食品を選ぶときは、「むね」だけでなく、「皮つき」か「皮なし」かも、確かめてください。
これは、皮を食べるか食べないか、という話ではありません。皮を食べるなら皮つきを、皮を外して食べるなら皮なしを選ぶ。ただそれだけの、記録の正確さの話です。
「-」や「Tr」は、何を意味するのか
「-」は未測定、「Tr」は微量、「0」は最小記載量の10分の1未満、または検出されなかったことを表します。
成分表を見ると、数字の代わりに、「-」や「Tr」、あるいは括弧つきの数字が出てきます。原典(第1章「数値の表示方法」)には、次のように説明されています。
| 表示 | 意味(原典の説明) |
|---|---|
| – | 未測定であること |
| 0 | 最小記載量の1/10未満、または検出されなかったこと |
| Tr(微量、トレース) | 最小記載量の1/10以上、5/10未満であること |
| (0)、(Tr) | 含まれないか、微量と推定されるもの(測定はしていない場合が多い) |
| 括弧つきの数字 | 諸外国の成分表の値の借用、レシピからの計算、類似食品からの類推などで求めた値 |
食事記録で気をつけたいのは、「-」(未測定)です。数字が入っていないので、そのまま計算に入れると、0として扱われがちです。本当に0なのか、測っていないだけなのか、は別のことです。
炭水化物の求め方も、知っておくと役に立ちます。原典では、炭水化物は、水分、たんぱく質、脂質、灰分などの合計を100gから引いた「差引き法」の値、と説明されています。ただし、魚介類、肉類、卵類の原材料的な食品は、炭水化物が微量で、差引き法が適さないので、原則として全糖の分析値に基づく値を使っています。
結局、どう記録すればいいのか
量った状態と、選ぶ食品の状態(生、ゆで、焼きなど)を、そろえます。迷ったら、調理する前に、生の状態で量ります。
ここまでの内容から、記録のルールを3つにまとめます。
- 量る状態と、選ぶ食品の状態を、そろえます。生の重さで量ったら「生」、焼いたあとの重さで量ったら「焼き」を選びます。食品名の最後に、「生」「ゆで」「焼き」などが書かれているので、そこを見ます。
- 殻や皮、骨がある食品は、廃棄率を思い出します。殻つき、皮つき、骨つきの重さで量ったときは、食べられる部分の質量に直してから、数字を掛けます。
- 迷ったら、調理する前に、生の状態で量ります。調理で重さが変わる肉、魚、米などは、調理前に量って「生」で記録すると、調理による重さの変化を気にしなくて済みます。ただし、油を吸う調理や、調味料を加える料理は、その分が数字に入りません。別に足す必要があります。
作り置きは、どうするか
まとめて作って、何回かに分けて食べる料理は、量り方に迷いやすいものです。考え方は、これまでの話と同じです。
- 材料を、調理前の状態で量って、それぞれの「生」の数字で、全部の合計を出します。
- できあがった料理の総重量を量ります。
- 合計を総重量で割ると、料理100gあたりの数字が出ます。
- 食べるときは、その料理を量って、100gあたりの数字を掛けます。
加熱で水分が抜ければ総重量が減り、100gあたりの数字は大きくなります。でも、合計の中身は、大きくは変わらないので、食べた分を量って掛ければ、近い数字になります。先ほど見た、鶏むね肉と同じ理屈です。ただし、調理で油や調味料を足したときは、その分も、合計に足してください。ゆで汁や煮汁を捨てたときは、溶け出した分だけ、実際の中身は少なくなります。
もう1つ、大切なことがあります。成分表の数字は「標準」の値です。食品そのものにも、産地や部位の個体差があります。調理の条件も、家庭ごとに違います。どんなに丁寧に記録しても、数字には、ある程度の幅があります。細かい数字に振り回されるより、同じルールで、毎日続けて記録することのほうが、意味があると思います。
グラム帳では、どうなっているか
私が作っている食事記録ツール「グラム帳」は、この成分表(2,538食品)のデータを、加工して同梱しています。食品を検索すると、「にわとり (若どり・主品目) むね 皮なし 生」「にわとり (若どり・主品目) むね 皮なし 焼き」のように、状態まで含めた名前が出ます。量った状態に合うほうを選び、グラム数を入れる形です。この記事で書いた考え方が、そのまま、使い方になります。
グラム帳が、なぜ成分表を使うことにしたか、何を決めて何をやめたかは、こちらの記事に書いています。40代の体調管理のために、PFCをグラムで直接記録できるツール「グラム帳」を作りました
まとめ
- 成分表の数字は、「可食部100gあたり」です。可食部は、廃棄する部分(殻、皮、骨など)を除いた部分です。
- 調理すると、水分が抜けたり、吸ったりして、重さが変わり、100gあたりの数字も変わります。
- 鶏むね肉(皮なし)は、生でたんぱく質23.3g、焼きで38.8g(100gあたり)。焼くと、成分表の条件で約61%の重さになります。
- 精白米は、炊く前の米粒が342kcal、炊いたごはんが156kcal(100gあたり)。ごはん150gを米粒の数字で数えると、約2.2倍になります。
- 鶏むね肉は、皮つきか皮なしかでも、脂質が大きく違います(生で、皮つき5.9g、皮なし1.9g)。
- 量る状態と、選ぶ食品の状態を、そろえます。迷ったら、調理前の生の状態で量ります。
この記事の数値と説明は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(第1章の説明、表12、およびExcelの成分値)から引用し、当サイトで計算・加工して作成しました。国が作成したものではありません。記事内の計算例(卵やバナナの大きさ、ごはん150gなど)は、考え方を示すための当サイトの例です。本記事は、個別の食事や健康についての助言ではありません。


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