現在最も普及している粉末消火器(ABC粉末)は1960年代以降に量産が始まり、日本での普及は1970〜80年代です。それ以前は炭酸水素ナトリウム系の化学泡消火器や四塩化炭素消火器が使われていました。消火器の規格を定める法令の整備とともに、薬剤・容器の技術は大きく変化してきました。
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日本初の消火器と初期の普及
日本に消火器が登場したのは明治後期から大正時代にかけてです。初期に使用されたのは炭酸水素ナトリウム(重曹)と硫酸を反応させて二酸化炭素を発生させる「化学泡消火器」や、ソーダ酸消火器(炭酸水素ナトリウムと硫酸の反応で放射)です。これらは手提げ式で小型ながら、使用のたびに薬剤を調合する必要があり、取り扱いに専門知識が求められました。
戦前から戦後にかけては、四塩化炭素(CCl₄)を充填した消火器も広く使われました。四塩化炭素は不燃性の蒸気を発生させることで窒息消火できますが、加熱時に有毒なホスゲンガスが発生することが明らかになり、1950年代以降に廃止されました。
昭和30〜40年代:粉末消火器の登場と法令整備
1950〜60年代に炭酸水素ナトリウム(BC粉末)を使った粉末消火器が普及し始めました。粉末消火器はB火災(油火災)とC火災(電気火災)に有効で、軽量・安価・取り扱いが容易という利点から急速に広まりました。
1964年(昭和39年)には「消火器具の技術上の規格を定める省令」(自治省令第27号)が制定されました。この省令が現在の消火器規格の基礎となっており、消火器の能力単位・充填量・安全装置・本体容器の強度基準等を規定しています。
リン酸塩系粉末(ABC粉末)の普及
1970年代には第二りん酸アンモニウム(リン酸二水素アンモニウム)を主成分とするABC粉末消火器が登場しました。ABC粉末はA火災(普通火災)・B火災(油火災)・C火災(電気火災)のすべてに対応できることから、BC粉末に代わって家庭・事務所・商業施設に急速に普及しました。
ABC粉末の消火原理は「負触媒効果」(燃焼連鎖反応の阻害)が主で、加熱分解によるメタリン酸が可燃物表面をコーティングする「再燃防止効果」も有しています。この2つの効果により、A火災への有効性が確保されました。
蓄圧式の標準化と加圧式の廃止誘導
1980〜90年代まで普及していた「加圧式」粉末消火器は、本体内部に小型の加圧ガスカートリッジを内蔵し、レバーを操作した際にカートリッジを破ってガスで粉末を放射する方式でした。加圧式はレバー操作のタイムラグが短い利点がある一方で、使用後の不完全な操作で内部圧力が残留し、廃棄・整備時に破裂事故が発生する事例が出ました。
これを受けて、消防庁は2010年代以降に加圧式から蓄圧式への切り替えを促進しました。現行の製造品のほとんどは蓄圧式です。蓄圧式は常時ガスが充填されており、圧力計(指示圧力計)で内部圧力を目視確認できるため、異常の早期発見が容易です。
廃ハロン(ハロン消火器の廃止)
ハロン1301・ハロン1211を使ったハロゲン化物消火器は、オゾン層破壊物質であることが判明し、1994年(平成6年)以降、新規の製造・輸入が禁止されました(モントリオール議定書に基づく規制)。現在もハロン消火器は設置・保有できますが、新品の調達はできません。試験では「ハロンは現在製造禁止」の知識が問われることがあります。
現在の消火器規格と型式適合検定
現在、消火器は「消火器具の技術上の規格を定める省令」に基づき、日本消防検定協会(FMEC)による型式適合検定を通過したものだけが「型式承認品」として販売・設置できます。型式記号は消火器本体に表示されています。型式が廃止(失効)になった消火器(旧規格品)は2021年12月31日で設置義務が終了し、以後は交換が求められました。
まとめ
日本の消火器は化学泡・四塩化炭素から始まり、BC粉末・ABC粉末の順に主流が変化しました。1964年の「消火器具の技術上の規格を定める省令」制定が現行規格の出発点です。加圧式から蓄圧式への移行が進み、ハロン消火器は1994年以降製造禁止です。乙6の試験では各種消火器の薬剤・加圧方式・消火効果を理解することが求められます。
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