診療所の感染症届出義務、届出が必要な疾患と研修で伝える手順。

診療所の感染症届出義務、届出が必要な疾患と研修で伝える手順。 ??????????(????)

診療所(クリニック)の医師は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)第12条・第13条に基づき、特定の感染症患者を診断した場合に保健所への届出が義務づけられています。届出を怠った場合は同法第77条による50万円以下の罰則があります。届出義務の範囲と手順は診療科に関わらずすべての診療所の医師が把握しておく必要があり、研修で定期的に確認することが重要です。

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感染症法の届出分類と主な対象疾患

感染症法は感染症を1類〜5類・新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症に分類しています。届出の義務者は医師(診断した医師本人)で、施設の管理者(院長)への委任はできません。

分類 届出期限 代表的な疾患 届出先
1類感染症 直ちに(診断後即日) エボラ出血熱・ペスト・ラッサ熱など 保健所(最寄りの保健所へ直接連絡・その後書面提出)
2類感染症 直ちに 結核・SARS・MERSなど 保健所
3類感染症 直ちに 腸管出血性大腸菌感染症(O157など)・コレラ・腸チフスなど 保健所
4類感染症 直ちに E型肝炎・A型肝炎・狂犬病・マラリア・デング熱など 保健所
5類感染症(全数把握) 診断後7日以内 梅毒・淋菌感染症・HIV感染症・侵襲性肺炎球菌感染症・麻疹・風疹など 保健所(HER-SYS等を通じて電子届出)
5類感染症(定点把握) 週単位または月単位 インフルエンザ・手足口病・RSウイルス感染症・百日咳など 都道府県知事が指定する定点医療機関のみが届出義務
新型インフルエンザ等感染症 直ちに 新型インフルエンザ・再興型インフルエンザ 保健所

5類の定点把握疾患(インフルエンザ・手足口病・RSウイルス等)は、都道府県が指定した「定点医療機関」のみが週単位や月単位で届け出を行います。定点に指定されていないクリニックは5類定点疾患の届出義務はありません。ただし5類の全数把握疾患(梅毒・淋菌感染症・HIV等)はすべての医師に届出義務があります。

届出が必要か迷いやすい疾患と判断のポイント

結核(2類)は診断確定前でも届出が必要です

結核については、感染症法第12条が「患者」「無症状病原体保有者」「疑似症患者」それぞれに届出義務を定めています。胸部X線や喀痰の塗抹・培養の結果が出る前の段階でも、臨床的に結核が強く疑われる場合は「疑似症」として届出が必要です。診断が確定してから届け出ればいいという理解は誤りで、結核を疑った時点での対応を研修で確認しておく必要があります。

梅毒(5類全数)は血清反応陽性で届出の対象になります

梅毒の届出は、梅毒血清反応(RPR・TPHA等)が陽性であり、かつ臨床症状・治療歴等から梅毒と診断された場合が対象です。近年、梅毒の届出数は増加しており、性感染症を扱う泌尿器科・婦人科・皮膚科・内科では届出機会が増えています。届出様式に病期(第1期〜先天梅毒)・治療の有無・感染経路の推定を記載する必要があります。

腸管出血性大腸菌感染症(3類)は無症状でも届出対象です

腸管出血性大腸菌感染症(O157等)は3類で直ちに届出が必要です。特に食品取扱者・保育士・医療従事者などの集団感染リスクが高い職種の感染者については、保健所から就業制限の指導が入ることがあります。「症状がない(無症状病原体保有者)」でも届出対象になることを研修で確認しておく必要があります。

届出の方法と使用するシステム(HER-SYS)

感染症の届出は、保健所への書面提出が原則ですが、電子届出システム「HER-SYS(ハーシス)」(Health Emergency Registration System)を用いた電子届出が推奨されています。HER-SYSは厚生労働省が提供するクラウドシステムで、ウェブブラウザから届出書を入力・送信できます。

HER-SYSを利用するには事前の医療機関登録が必要です。登録済みの医療機関は、届出書の様式入力・送信・届出状況の確認をオンラインで完結できます。HER-SYSを利用していない場合は、管轄の保健所に電話連絡した上で、届出書を紙またはFAXで提出します。

研修でHER-SYSの利用手順を確認しておくと、実際に届出が必要な場面での対応がスムーズになります。ログイン手順・様式の書き方・送信後の確認方法を、操作デモを含めて研修で扱うことを推奨します。

届出を怠った場合の罰則と行政指導

感染症法第77条は、届出義務を違反した医師(診断した医師本人)に対して、50万円以下の罰金を科す規定を設けています。また、保健所は感染症法第15条に基づく積極的疫学調査を行う権限を持っており、届出がないまま感染が拡大した場合には行政調査の対象になることもあります。

「どの疾患が届出対象か分からなかった」という場合でも、知識不足は免責の根拠にはなりません。研修で定期的に届出対象疾患を確認し、最新の疾患分類の変更(感染症法の政令改正による追加・変更)を把握しておくことが求められます。

発生時対応の研修で扱う内容

感染症の発生時対応研修では、届出義務の確認だけでなく、発生後の院内対応についても扱います。

  • 届出対象疾患が疑われる患者が来院した場合の院内動線分離の手順
  • 患者を診察した医師から院長・感染対策担当者への報告ルート
  • 保健所への届出・連絡の手順(電話連絡→HER-SYS入力→書面確認)
  • 患者へ届出をする旨を伝える際の説明の仕方(個人情報に関わる部分)
  • 院内スタッフが感染した場合の就業制限と代替体制の確保
  • マスコミ等からの問い合わせへの対応方針(原則保健所・都道府県を通じた対応)

新型インフルエンザ等の緊急対応が必要な感染症については、BCPの感染症版(感染症BCP)と連動した訓練を行うことで、実際の発生に備えた準備が整います。感染症BCPについては「クリニックのBCP(業務継続計画)研修、2024年改定で義務になったか。」もあわせてご覧ください。

研修の実施頻度と記録

感染症届出義務の研修は、医療法施行規則第1条の11第2項第1号の院内感染対策研修の一部として実施するか、またはBCP・感染症対応研修の一部として組み合わせることができます。独立したテーマとして実施する場合は年1回以上が目安です。

感染症法の政令改正によって届出対象疾患が変更されることがあります(新興感染症の指定感染症への追加等)。改正があった際は、内容を更新した上で臨時の研修・周知を実施してください。

研修記録には実施日・参加者・内容・担当者を記載し、5年程度を目安に保存します。クリニックの研修全体の管理方法は「診療所の研修記録、何年間保管すればいいか。」に整理しています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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