就労継続支援B型の事業所数と利用者数、市場の現状を整理する。

福祉事業の開業と運営

就労継続支援B型の事業所数と利用者数、市場の現状を整理する。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 就労継続支援B型 開業収支シミュレーター

就労継続支援B型の開業を検討するとき、「この地域に参入する余地はあるか」「利用者は集まるか」という問いは、収支計画を立てる前に確認すべき前提です。市場の規模感や利用者層の特徴を把握しておくことで、稼働率の見込みをより現実的に置けるようになります。

この記事では、就労継続支援B型の事業所数・利用者数の推移と現状、利用者層の特徴、競合環境の実態、開業後の利用者確保ルート、そして市場の状況が収支計画に与える影響を整理します。

事業所数・利用者数はともに増加傾向が続いている

就労継続支援B型の事業所数と利用者数は、障害者自立支援法から障害者総合支援法への移行(2013年)以降、一貫して増加しています。厚生労働省が公表する「障害福祉サービス等の利用状況について」(各年度版)によれば、B型は障害福祉サービスの中でも事業所数・利用者数ともに最大規模のサービス類型のひとつに成長しています。

直近の概況としては、全国の就労継続支援B型事業所は2万か所を超える水準にあり、利用者数も30万人を上回る規模に達しているとされています(正確な数値は調査時点によって変動するため、厚生労働省が定期的に公表する「障害福祉サービス等の利用状況について」の最新版でご確認ください)。

この規模は、放課後等デイサービスや就労移行支援と比較しても大きく、障害福祉サービス全体の中でB型が占める比重は高いといえます。

事業所数・利用者数が増えてきた背景には3つの要因がある

就労継続支援B型がここまで拡大した背景には、大きく3つの要因があります。

給付費による収入の安定性:B型のサービスは、障害者総合支援法に基づく訓練等給付費によって収入が支えられます。利用者が通所した日数に応じて国・都道府県・市区町村から給付費が支払われるため、一般の民間事業と比べて収入の見通しが立てやすい構造です。参入しやすい事業類型として、福祉法人・NPO・株式会社を問わず多くの事業者が参入してきました。

精神障害・発達障害の診断数の増加:うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神疾患の診断数は長期的に増加しており、就労に困難を抱える方の数も増えています。発達障害(ASD・ADHD等)の診断が広まったことも、B型の潜在的な利用者層の拡大につながっています。精神障害・発達障害のある方にとって、就労継続支援B型は就労を段階的に目指す場として機能しています。

就労支援への社会的需要の高まり:障害のある方の「働きたい」というニーズは継続的に高まっています。一般企業での就労が難しい場合の受け皿として、B型は社会的に重要な役割を担っており、行政・福祉・医療からの紹介も増えています。障害者雇用促進法の法定雇用率引き上げによって、一般就労への意識も高まっており、就労支援を求める方の数は今後も一定以上維持されると考えられます。

利用者層の特徴は障害種別によって大きく異なる

就労継続支援B型の利用者は、障害種別が多様です。厚生労働省の経営実態調査によれば、B型の利用者のうち精神障害のある方が最も多い区分を占めています。次いで知的障害、身体障害、難病等の方が利用しています。

利用者の障害種別の特徴は、事業所の支援内容・作業内容の設計に直結します。主に精神障害のある方を支援する事業所では、体調の波による欠席が生じやすく、稼働率の安定には継続的な相談支援・連絡体制の整備が必要になります。知的障害のある方を中心に支援する事業所では、作業の定着に時間をかけながら工賃の積み上げを図る取り組みが求められます。

障害種別ごとに利用者の特性・支援ニーズが異なるため、開業にあたっては「どの層を主な対象にするか」を明確にすることが、人員配置・作業内容・施設設計に影響します。

同一市区町村内での競合は稼働率に影響する

事業所数の増加に伴い、同一の市区町村・生活圏内に複数のB型事業所が存在するケースが増えています。利用者は複数の事業所を見学・比較したうえでサービスを選ぶ権利があり、事業所の特色・作業内容・支援の質・立地が選ばれる要因になります。

競合事業所が多い地域では、新規開業後の利用者獲得に時間がかかる場合があります。相談支援専門員から見て「紹介しやすい事業所」として認識されるためには、事業所としての特色と安定した支援実績の蓄積が必要です。開業後しばらくは稼働率が低く推移することを前提に、運転資金を多めに確保しておくことが重要です。

総量規制がある都道府県では参入に制限がかかる場合がある

一部の都道府県・市では、障害福祉サービスの量的な調整(総量規制)として、新規の指定を一定期間制限したり、指定にあたって既存事業所との需給バランスを審査したりする仕組みを設けている場合があります。

総量規制の有無・内容は都道府県・政令市によって異なります。開業を検討している地域の担当課(都道府県の障害福祉担当部署)に事前相談の段階で確認することをお勧めします。総量規制がある地域では、申請書類の提出前に「需給状況の調査・意見書の取得」を求められる場合があります。

開業後の利用者確保には複数のルートがある

就労継続支援B型の利用者確保は、開業後の稼働率に直接影響します。主な紹介・連携ルートを整理します。

相談支援専門員からの紹介

障害福祉サービスを利用する方は、計画相談支援(または障害児相談支援)を担う相談支援専門員が作成するサービス等利用計画に基づいてサービスを利用します。相談支援専門員は利用者の状態に合ったサービスを紹介する立場にあり、信頼関係を築けた相談支援事業所からの紹介は安定した集客につながります。

開業後は近隣の相談支援事業所に事業所案内・見学の案内を積極的に行い、作業内容・支援の特色・定員の空き状況を定期的に伝えることが必要です。相談支援専門員が「紹介しやすい事業所」として認識するためには、連絡に対するレスポンスの速さと、利用者の状態に合わせた柔軟な対応が評価されます。

医療機関・デイケアからの紹介

精神科クリニック・病院のデイケア・作業療法からB型へ移行するケースがあります。主治医やデイケアスタッフが「就労継続支援B型を利用してみてはどうか」と提案するルートです。医療機関との連携を深めるためには、医療側が「あの事業所に紹介すれば適切な支援を受けられる」と安心できる実績と情報提供が重要です。

ハローワーク・就労支援機関からの紹介

ハローワークの専門援助部門や、就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)からB型を紹介されるルートもあります。就労に困難を抱える方が相談に来た際に、一般就労の前段階として就労継続支援B型を案内されるケースです。ハローワーク・就労支援機関との関係構築も稼働率の安定につながります。

地域活動支援センター・自立訓練からの移行

地域活動支援センターや自立訓練(生活訓練・機能訓練)を経て、就労に向けた活動を始める段階でB型に移行するケースがあります。地域の福祉関係者とのネットワーク構築が、こうした移行ルートの開拓につながります。

家族・本人からの直接問い合わせ

事業所のウェブサイト・SNS・見学会の案内を見た家族や本人が直接問い合わせてくるケースも増えています。特に「どんな作業があるか」「通いやすい雰囲気か」を知りたいというニーズに応えるウェブ情報の充実は、直接問い合わせルートを増やす方法のひとつです。

市場の拡大と競争激化は同時に進んでいる

就労継続支援B型の利用者数が増えていることは、需要の拡大を意味します。一方で、事業所数も同じペースで増えているため、1つの事業所が取り込める利用者の数は単純に増えるわけではありません。

利用者と事業所が増える中で、事業所間の差別化が収益に影響する場面が増えています。作業内容の専門性(農業・製造・IT等)、支援の手厚さ(医療連携・生活支援)、立地の便利さ(駅近・送迎あり)などが、利用者に選ばれる要因になります。

新規参入の事業所は、既存事業所と同じ「汎用的な軽作業中心の事業所」として開業すると、稼働率の立ち上げに時間がかかる傾向があります。地域に根ざした特色(特定の作業に特化・特定の障害種別に専門的な支援など)を持つことが、開業後の稼働率確保に有効に働きます。

市場の状況は収支計画の稼働率仮定に反映させる

収支シミュレーターを使うとき、稼働率の仮定は最も重要な変数のひとつです。「定員20人で稼働率80%」という想定が現実的かどうかは、地域の競合環境・紹介ルートの充実度・事業所の差別化要素によって変わります。

競合が多い地域・紹介ルートがまだない段階では、開業後1年目の稼働率は50〜60%程度から始まることを想定しておくことが、資金計画の安全マージンを確保するうえで重要です。稼働率が低い期間に固定費(人件費・家賃)が収入を上回る状態が続くことを前提に、運転資金を見積もる必要があります。

シミュレーターのPro版では、稼働率を計画値・低水準・極低水準の3シナリオで試算できます。市場環境を踏まえた現実的な稼働率の幅をシナリオに入力することで、開業後に資金が尽きるリスクを事前に把握できます。

まとめ

就労継続支援B型の事業所数・利用者数は長期にわたって増加を続けており、需要の拡大は確認できます。増加の背景には給付費制度の安定性、精神障害・発達障害の診断数の増加、就労支援への社会的需要があります。利用者層は精神障害のある方が最も多く、障害種別によって支援ニーズが異なります。

一方で事業所数の増加により競合環境も激化しており、新規開業後の稼働率立ち上げには相談支援専門員・医療機関・就労支援機関との連携ルートの構築が不可欠です。総量規制のある地域では参入前に確認が必要です。

市場の状況を踏まえた稼働率の現実的な設定が、収支計画の精度を高めます。稼働率を複数シナリオで試算することで、開業後の資金リスクを事前に把握できます。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 就労継続支援B型 開業収支シミュレーター


出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」(各年度版)。厚生労働省「障害福祉サービス等経営実態調査」。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)。作成日:2026年10月。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました