飲食店の黒字企業の平均営業利益率は4.3%です。日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査(2025年度)」によると一般飲食店(法人・464社)の全体平均は-2.2%で、中央値も-0.4%と赤字水準にあります。公庫の創業計画書の記入例(洋風居酒屋)を前提とした試算では計画どおりに進んだ場合の利益率は15.1%ですが、客数が計画比90%に落ちると8.7%まで下がります。利益率は最終的な結果として出てくる数字であり、その手前にある損益分岐点とFL比率の管理が利益率を左右します。
飲食店の営業利益率の全国水準は、黒字企業でも4.3%
日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査(2025年度)」では、一般飲食店(法人企業・従業者50人未満・464社)の営業利益率の全体平均は-2.2%です。赤字の事業者が多いため、平均が押し下げられています。中央値も-0.4%と、過半数の事業者が赤字水準にあることを示しています。
黒字かつ自己資本がプラスの企業だけに絞った平均は4.3%です。この数字が、採算が取れている飲食店の現実的な利益率の水準です。黒字企業の中でも10%を超える利益率は上位層の水準で、後述する記入例の試算値15.1%はそれを上回るトップ水準に相当します。
| 区分 | 営業利益率 | 備考 |
|---|---|---|
| 全体平均 | -2.2% | 464社 |
| 中央値 | -0.4% | 過半数が赤字水準 |
| 黒字企業の平均 | 4.3% | 黒字かつ自己資本プラスの企業 |
※対象は公庫国民生活事業の融資先の法人企業(従業者50人未満・決算期間1年)。役員報酬は人件費に含まれます。
この調査の対象は法人企業のため、役員報酬が人件費に計上されています。個人事業主が事業主の取り分を費用に含めずに計算すると見かけの利益率は高くなりますが、事業主の生活費を差し引いた後の実質的な収益水準は法人と大きく変わらないことが多いです。計画を立てる際は、個人事業主でも事業主の生活費を別枠で確認しておく必要があります。
業態別の黒字企業営業利益率には、3倍以上の開きがある
業態ごとに収益構造が異なるため、利益率の水準にも差があります。以下は公庫「小企業の経営指標調査(2025年度)」の業態別の黒字企業平均営業利益率です。
| 業態 | 黒字企業の営業利益率 | 原価率 | 人件費率 |
|---|---|---|---|
| すし店 | 9.9% | 41.1% | 27.5%(黒字) |
| 日本料理店 | 5.8% | 37.8%(黒字) | 29.3%(黒字) |
| 一般食堂 | 5.6% | 34.1%(黒字) | 24.5%(黒字) |
| 喫茶店 | 5.2% | 28.1% | 29.8% |
| 西洋料理店 | 4.6% | 31.3%(黒字) | 32.3%(黒字) |
| 酒場・ビヤホール | 4.4% | 30.6%(黒字) | 30.0%(黒字) |
| バー・キャバレー・ナイトクラブ | 4.5% | 20.4%(黒字) | 32.2%(黒字) |
| 一般飲食店(平均) | 4.3% | 32.2%(黒字) | 31.5%(黒字) |
| そば・うどん店 | 3.8% | 26.2%(黒字) | 35.1%(黒字) |
| 中華料理店 | 3.3% | 34.5%(黒字) | 32.5%(黒字) |
| カレー料理店 | 1.8% | 29.1%(黒字) | 38.1%(黒字) |
※黒字かつ自己資本がプラスの法人企業の平均。原価率・人件費率も黒字企業の値(黒字表記なしは全体平均)。
最も利益率が高いすし店の9.9%は、カレー料理店の1.8%の約5.5倍です。すし店は客単価が高く、1席あたりの売上が大きい業態です。一方、カレー料理店は原価率こそ29.1%と低いですが、人件費率が38.1%と全業態の中で最も高く、FL比率が67.2%に達しています。原価率だけを下げても人件費率が高ければ利益率は改善しないことを示しています。
喫茶店(カフェ)は原価率28.1%と低水準ですが、その他経費率(家賃・光熱費・通信費等)が34.1%と高く、利益率は5.2%にとどまります。テナント料の高い立地での開業を検討している場合は、家賃の水準が利益率に直結することを念頭に置く必要があります。
計画の15.1%と全国平均4.3%の差は、固定費の構成から来る
公庫の創業計画書の記入例(洋風居酒屋・月商322万円)を前提とした飲食店の開業 収支シミュレーターの試算では、軌道に乗った後の月次営業利益は485,165円で、利益率は15.1%です。全国の黒字企業平均4.3%と比べて10.8pt高い水準です。
この差がどこから来るかを費用構造で見ると、記入例のFL比率は64.3%(原価率35%+人件費率29.3%)です。全国平均67.9%(黒字企業63.7%)と比べてFL比率は近い水準ですが、その他経費率が記入例の14.4%に対して全国平均は30.7%と大きな開きがあります。記入例の「その他経費」は家賃20万円+各種固定費約27.5万円の合計47.5万円(月商比14.8%)です。実際の飲食店では、立地や業態によって家賃が月商の10〜20%を占めることも多く、その分だけ利益率が圧縮されます。
| 項目 | 記入例(軌道後) | 全国平均(一般飲食店) | 黒字企業(一般飲食店) |
|---|---|---|---|
| 原価率 | 35.0% | 35.0% | 32.2% |
| 人件費率 | 29.3% | 32.9% | 31.5% |
| FL比率 | 64.3% | 67.9% | 63.7% |
| その他経費率 | 14.4% | 30.7% | 29.0% |
| 営業利益率 | 15.1%(試算) | -2.2% | 4.3% |
※記入例の試算は個人事業主前提(事業主の生活費は費用に含めず)。全国平均は法人企業(役員報酬を人件費に含む)。
FL比率の全国平均の記事で確認したとおり、FL比率60%以内は業界の経験則であり、黒字企業でも平均63.7%です。利益率4.3%を出せている事業者は、FL比率を適切な水準に抑えつつ、家賃を含むその他固定費を低く保てているケースが多いと考えられます。
客数・客単価・原価率が変わると利益率がどう変わるか
利益率は売上と費用の組み合わせで変化します。以下は公庫の記入例の前提(月商322万円・原価率35%・固定費156万円)から各要素を変化させた場合の月次利益と利益率の試算です。
| シナリオ | 月次利益(円) | 利益率 | 計画比の変化 |
|---|---|---|---|
| 計画どおり | 485,165 | 15.1% | 基準 |
| 客数が計画の90% | 279,888 | 8.7% | -6.4pt |
| 客数が計画の80% | 74,612 | 2.3% | -12.8pt |
| 客数が計画の70% | -130,664 | 赤字 | 損益分岐点割れ |
| 客単価が10%低い | 279,888 | 8.7% | -6.4pt |
| 原価率が5pt高い(40%) | 324,290 | 10.1% | -5.0pt |
※公庫の記入例(洋風居酒屋・月商322万円・個人事業主)をベースにしたシミュレーターの試算。
客数が計画比90%になると利益率は15.1%から8.7%へ6.4pt下がります。黒字企業平均4.3%との差は4.4ptまで縮まります。客数80%では利益率2.3%となり、黒字企業平均を下回ります。客数70%では赤字に転落します。
客単価が10%低い場合も客数90%と同じ月次利益(279,888円・利益率8.7%)になります。売上の減少は客数の変化でも客単価の変化でも同じ影響を利益率に与えます。一方、原価率が5pt上昇(35%→40%)した場合は月次利益324,290円・利益率10.1%となり、客数・客単価の変化より利益率への影響が小さいことがわかります。ただし原価率の悪化は食材費の増加や廃棄ロスを示すことが多く、放置すると利益を継続的に圧縮します。
利益率より先に確認すべき2つの指標
営業利益率は重要な指標ですが、開業計画の段階で最初に確認すべき数字ではありません。利益率は結果として出てくる数字であり、その前に損益分岐点とFL比率の2つを固めることが先決です。
損益分岐点は「毎月最低いくら売れれば赤字にならないか」を示します。記入例の試算では損益分岐点は月商約246万円です。損益分岐点を毎月上回れていれば、利益率はゆっくりとでも改善します。逆に損益分岐点を毎月下回り続けると、どれだけ高い利益率目標を設定しても実現しません。
FL比率は「売上に対して食材費と人件費が占める割合」です。FL比率が高いほど、売上が少し落ちただけで損益分岐点を下回りやすくなります。また、閉店の判断の記事で整理したとおり、月商が計画を下回り続ける場合にどこで撤退するかの判断も、損益分岐点と月次の資金残高を軸に行います。
開業計画の段階で確認する指標は、以下の順番が実践的です。
| 順番 | 指標 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 1 | 損益分岐点 | 毎月現実的に達成できる売上かどうか |
| 2 | FL比率 | 64%前後に収まるか(全国黒字企業平均63.7%) |
| 3 | 営業利益率 | 黒字企業平均4.3%を上回るか |
| 4 | 3年間の資金残高 | 元金返済・生活費を払っても手元資金がプラスか |
これらの指標を同時に試算できるのが飲食店の開業 収支シミュレーターです。客単価・席数・原価率・人件費・家賃などを入力すると、損益分岐点・FL比率・月次営業利益率・36か月の資金残高(Pro版)を一括で確認できます。計画の段階で複数のシナリオを試しながら、達成できる見通しのある数字を固めることが、開業後の利益率管理の土台になります。
(この記事の数字は、日本政策金融公庫「創業計画書の記入例(2025年4月版)」および「小企業の経営指標調査(2025年度)」を参照して作成しています。当ツールは公庫が作成・提供するものではありません。作成日:2026年10月。)


コメント