訪問介護のヘルパー確保が難しい理由と、採用で使える手立て。

訪問介護のヘルパー確保は、業界全体で最も難しい経営課題の一つです。全国平均の月853.3回の訪問を常勤換算7.4人でこなすため、1人あたり月115回(1日約4〜5件)を担う計算になります(令和7年度介護事業経営概況調査)。なぜこれほど採用が難しいのか、背景と現実的な手立てを整理します。

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全国平均から見えるヘルパー1人あたりの実態

令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・訪問介護)の全国平均数値から計算します。

項目 数値
月収入 約316万円
延べ訪問回数 853.3回/月
常勤換算スタッフ数 7.4人
スタッフ1人あたり月訪問回数 853.3÷7.4=115.3回
給与費比率 67.8%
月給与費合計 316万×0.678=214.2万円
スタッフ1人あたり月給与(常勤換算) 214.2万÷7.4=28.9万円

1人あたり月28.9万円(常勤換算)は、週5日・月20日稼働の常勤前提です。実際には常勤換算のうちに登録ヘルパー(非常勤)が多く含まれるため、1人ひとりの手取りはこれより低くなるケースが多いです。

ヘルパー確保が難しい3つの理由

移動時間が収入にならない

訪問介護の報酬は訪問先での「サービス提供時間」に対して算定されます。利用者宅から次の利用者宅への移動時間は原則として報酬に含まれません。1日4〜5件の訪問をこなす場合、移動時間を含めると実質的な拘束時間は長くなりますが、収入は訪問時間分だけです。

登録ヘルパーは「隙間時間」だけの就労になりやすい

訪問介護のニーズは朝(7〜9時)・昼(11〜13時)・夕(16〜18時)に集中します。この時間帯以外のシフトは組みにくく、1日の稼働時間が2〜4時間にとどまる登録ヘルパーが多くなります。結果として、月の実収入が十分に確保できないため定着率が低くなります。

資格取得のハードルがある

訪問介護のヘルパーになるには、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級相当)以上の資格が必要です。受講時間は130時間程度・費用は数万円かかります。介護未経験者が「少し働きたい」と思っても、この資格取得が入口のハードルになっています。

採用で使える現実的な手立て

処遇改善加算の取得状況を求人に明示する

処遇改善加算(令和8年老発0313第6号)は職員の賃金改善に使うことが義務付けられています。求人票に「処遇改善加算 Iイ取得(+27%上乗せ)」と記載することで、他事業所との賃金差を可視化できます。処遇改善加算を取得していない事業所と比べると、採用力に明確な差が出ます。

短時間勤務ニーズに合わせた求人設計

登録ヘルパーが働きやすい「週3日・1日2〜3件」の求人を設計します。身体介護20分未満(163単位・1,630円)の短時間訪問を1日に複数組み込むことで、1時間あたりの収入効率を上げながらヘルパーの拘束時間を短くする組み合わせが可能です。

初任者研修の費用支援制度を活用する

ハローワークの「教育訓練給付制度」を活用することで、受講費用の一部が補助されます。また、事業所として採用条件に「研修費用を一部負担する」と明示することで、資格取得を検討している未経験者の応募を促せます。

スタッフ不足が収入に直接影響する仕組み

訪問介護は「スタッフが訪問できる件数」が収入の上限を決めます。ケアマネから紹介が来ても、対応できるスタッフがいなければ断らざるを得ません。1人断るたびに月収入に換算すると、身体介護30〜60分(3,870円・その他地域)×月12回=46,440円の機会損失になります。

スタッフの確保は集客と同じくらい重要な経営課題です。

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参照した資料
令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・訪問介護)。令和8年老発0313第6号(介護職員処遇改善加算等の算定要件)。令和6年厚生労働省告示第86号。数値は令和8年10月時点。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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