キッチンカーの季節変動。梅雨・夏・冬の売上への影響と安全資金の計算。

キッチンカーの売上は、季節・天候によって月ごとに大きく変動します。梅雨(6〜7月)と真夏(8月)は雨天・猛暑で出店できない日・客数が減る日が増えやすく、売上が計画を下回りやすい時期です。冬(12〜2月)も寒さで外食を避ける傾向から来客数が落ちる業態があります。この記事では、季節ごとの売上変動のパターン・月の安全資金の計算方法・変動を乗り越えるための対策を解説します。

季節による売上変動のパターン

業態・出店場所によって変動のパターンは異なりますが、一般的な傾向を整理します。

季節ごとの売上変動の傾向(参考・業態・立地によって異なる)
時期 売上への影響の傾向 主な要因
3〜5月(春) 回復・安定しやすい 気候が過ごしやすい・外出・イベント需要が増える
6〜7月(梅雨) 出店日数が減りやすい 雨天による出店中止・屋外イベントの中止
8月(真夏) 業態により大きく異なる 猛暑で外食・屋外滞在を避ける客が増える一方、アイス・ドリンク系は好調になることも
9〜11月(秋) 回復・好調になりやすい 気候が過ごしやすい・食欲の秋・イベントが多い
12〜2月(冬) 屋外出店の来客が減りやすい 寒さで屋外での食事を避ける傾向。ただし企業内の固定出店は影響が少ない

この傾向はあくまで参考値であり、実際の変動は出店場所・メニュー・立地(屋外か屋内かに近いか)によって異なります。同じ梅雨でも「屋根のある工場駐車場の固定出店」は雨天の影響を受けにくく、「公園や広場のスポット出店」は大きな影響を受けます。

梅雨・台風シーズンの資金の計算方法

雨天が多い月の影響を具体的に計算してみます。

前提条件

  • 通常月:月20日出店・1日50食・客単価900円・変動費率55%・固定費月5万円
  • 梅雨月(6〜7月):雨天で月3〜5日出店できない想定
雨天影響による月の利益の変化(客単価900円・1日50食・変動費率55%・固定費5万円)
月の出店日数 月の売上 変動費(55%) 月の利益 通常月との差
20日(通常) 900,000円 495,000円 355,000円 基準
17日(3日雨天) 765,000円 420,750円 294,250円 ▲60,750円
15日(5日雨天) 675,000円 371,250円 253,750円 ▲101,250円
12日(8日雨天) 540,000円 297,000円 193,000円 ▲162,000円

固定費5万円は出店日数に関わらずかかります。出店日数が月8日減ると、月の利益は16.2万円減る計算です。梅雨と台風が重なる7〜9月にかけて、複数月で同様の状況が続く可能性があります。

季節変動を乗り越えるための「安全資金」の計算

季節変動のある月でも固定費と借入返済を払い続けられるように、通常月の利益から「安全資金」を積み立てておく考え方が重要です。

計算方法は次のとおりです。

  • 悪化月の想定赤字(または利益の減少) = 通常月の利益 − 悪化月の利益
  • 安全資金 = 悪化月の想定赤字 × 悪化月が続く期間(か月)

計算例

梅雨・台風シーズン(6〜9月の4か月)で毎月利益が10万円減る場合:

  • 4か月間の利益の減少合計 = 10万円 × 4か月 = 40万円

この40万円分の安全資金を、3〜5月(好調期)の利益から積み立てておけば、梅雨・台風シーズンに資金不足になりにくくなります。

業態別の季節変動の対策

業態によって、季節変動の対策の方向性が異なります。

冷たい飲み物・スイーツ系(夏が得意な業態)

夏の好調期に稼ぎを最大化し、冬の落ち込みを安全資金でカバーする戦略が基本です。冬に向けてホット飲料・温かいスイーツへのメニュー切り替えを計画しておくことも有効です。ただしメニュー変更は仕込み方法・設備が変わることがあるため、切り替えコストを事前に確認します。

弁当・惣菜系(企業固定出店が主な業態)

企業構内の固定出店は天候の影響を受けにくいため、年間を通して比較的安定します。ただし盆休み・年末年始・GWは出店先が休みになるため、その期間は売上がゼロになります。年間の出店日数を計算する際は、長期休暇を出店日数から除いておきます。

揚げ物・カレー等(秋〜冬が得意な業態)

温かい食事が好まれる秋〜冬は好調になりやすいです。春〜夏の低調期は出店日数を減らして固定費を圧縮するか、よく売れる夏メニューを並行して用意するかを検討します。

台風・大雪等の突発的な出店中止への備え

台風・大雪・猛暑日(気温35℃以上)などで出店を中止せざるを得ない日は、売上がゼロでも固定費はかかります。1日の固定費(月の固定費 ÷ 出店日数)の計算で「出店できない1日のコスト」を把握しておきます。

  • 1日の固定費 = 月の固定費 ÷ 月の予定出店日数
  • 例:月の固定費5万円 ÷ 20日 = 2,500円/日

台風で3日出店中止になった場合、売上ゼロ3日分の機会損失(売上3日分 × 変動利益率)+固定費7,500円が発生します。年間に台風・大雪で何日出店できないかを保守的に見積もっておくことが年間の資金計画の精度を上げます。

季節変動を組み込んだ収支計画の作り方

年間の収支計画を立てる際は、月ごとに出店日数の見込みを変えて計算することをお勧めします。「すべての月を通常月として計算する」計画は楽観的すぎ、梅雨・夏・冬に資金が不足するリスクがあります。

月ごとの収支・資金残高の推移を計算したい場合は、キッチンカー開業 収支シミュレーターで月次の出店日数・食数を変えながら36か月の試算ができます。

資金繰りの基本については「キッチンカー開業後の資金繰り、最初の3か月が山場。」で解説しています。


記事中の季節変動の傾向は一般的な参考情報であり、実際の変動は出店場所・メニュー・地域の気候によって大きく異なります。具体的な計画は自分の出店場所・業態の条件を元に計算してください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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