児童発達支援(以下、児発)では0〜6歳の乳幼児が通所します。乳幼児の心肺蘇生(CPR)の手順は成人・学齢児と大きく異なるため、「AEDの使い方を知っている」だけでは不十分です。乳幼児向けの胸骨圧迫・人工呼吸・AED操作を職員全員が正しく実施できる状態にしておくことが必要です。
消防法に基づく消防計画では、一定規模以上の施設に対して防火・避難訓練とあわせた消火訓練の実施が義務づけられています。また、救命研修(応急手当)は指定通所支援基準の安全管理・事故発生防止の観点からも定期的に実施することが推奨されています。
乳幼児と成人でCPRの手順が異なる点
日本蘇生協議会(JRC)のガイドラインに基づく、乳幼児(おおむね1歳未満を乳児、1歳以上8歳未満を小児)のCPRの特徴を整理します。
| 項目 | 乳児(1歳未満) | 小児(1〜8歳未満) | 成人 |
|---|---|---|---|
| 胸骨圧迫の方法 | 2本指(中指・薬指)で胸骨下半部を圧迫 | 片手(手のひら根元)で圧迫 | 両手で圧迫 |
| 圧迫の深さ | 胸の厚さの約1/3(約4cm) | 胸の厚さの約1/3(約5cm) | 約5〜6cm |
| 人工呼吸 | 口と鼻を同時に覆って吹き込む(できない場合は胸骨圧迫のみでも可) | 口のみを覆って吹き込む(できない場合は胸骨圧迫のみでも可) | 口のみ(できない場合は胸骨圧迫のみでも可) |
| AEDパッド | 小児用パッド(または減衰器)を使用。ない場合は成人用で代用可 | 小児用パッドを使用(体重25kg未満の目安) | 成人用パッド |
| 気道確保 | 頭部後屈は軽め(過度な後屈は気道を閉塞する) | 成人に準じるが軽め | 頭部後屈・あご先挙上 |
(出典:日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2020」)
市民救助者(職員など医療従事者でない者)が実施する場合、JRC蘇生ガイドライン2020では人工呼吸の省略(胸骨圧迫のみのCPR)も認められています。感染リスクへの懸念がある場合や、口と鼻の覆い方が分からない場合は、胸骨圧迫を中断せずに続けることを優先します。圧迫のリズムは1分間に100〜120回が目安です。
AED設置と小児用パッドの確認
AEDは多くの施設に設置されていますが、小児(乳幼児)用パッドまたは減衰器が付属しているかどうかを事前に確認します。
- 小児用パッド・減衰器がある場合:1歳未満の乳児および体重25kg未満の小児に使用する
- 小児用がない場合:成人用パッドで代用できる(前胸部と背部に貼るか、パッドが重ならない位置に)
- パッドの貼り方の確認:乳幼児は胸が小さいため、前胸部と背中側の配置になることがある
施設のAEDが小児用パッドに対応しているか、訓練前に機種を確認しておきます。
研修・訓練で扱う内容
乳幼児CPRの手順確認:人形を使った実技訓練が最も効果的です。年1回程度は実際に圧迫の深さ・速さ・手の位置を体で確認します。座学だけでは「知っている」どまりで、実際に動けない職員が残ります。
AEDの操作手順:電源を入れてから音声ガイドに従う手順を確認します。乳幼児用パッドの有無・貼り付け位置・ショック中に子どもに触れてはいけないこと・ショック後の胸骨圧迫再開の判断を確認します。
役割分担の確認:心肺停止が起きた場合に誰が何をするかを事前に決めておきます。胸骨圧迫担当・AED取り出し担当・119番通報担当・他の子どもの安全確保担当・保護者への連絡担当の役割を、職員の人数に合わせて割り当てます。
異物による窒息への対応:乳幼児の気道閉塞は心停止と同様の緊急事態です。背部叩打法(背中をたたく)・胸部突き上げ法(乳児の場合)の手順を訓練に含めます。ハイムリック法(腹部突き上げ)は乳児には禁忌です。
訓練の記録として残すもの
- 訓練の実施日・内容・参加職員名・受講確認サイン
- 使用した人形・AEDトレーナーの確認記録
- 訓練後の振り返り(不明確だった手順・改善点)
- AED本体の点検記録(電池残量・パッドの有効期限・小児用対応の確認)
法定研修・訓練のキットを使う
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出典:日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2020」・消防法・指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準。


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