居宅介護支援事業所を開業するには、法人設立のあとに指定申請が必要です。指定を受けることで、はじめて介護保険法上の居宅介護支援事業者として活動できます。
指定申請にどんな書類が必要で、いつまでに準備すればよいか。この記事では、申請書類の標準的な一覧と、開業日から逆算したスケジュール、指定有効期間の管理まで整理します。
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指定権者は都道府県から市区町村に変わっている
居宅介護支援の指定申請は、市区町村の担当窓口に行います。
これは2018年4月(平成30年4月)から変わりました。それ以前は都道府県知事が指定していましたが、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(2017年6月公布)によって、居宅介護支援の指定・監督権限が都道府県から市区町村に移されました。
介護保険法第79条は、居宅介護支援事業者の指定について定めており、現在は市町村長が申請を受理・指定する仕組みになっています。
申請先は、開業予定の事業所が所在する市区町村の担当部署です。名称は自治体によって「介護保険課」「高齢福祉課」「地域包括ケア推進課」などさまざまです。申請書類を揃える前に、管轄の窓口がどこにあるかを確認しておくことが最初のステップです。
なお、都道府県が指定していた時代に設立された事業所は、指定更新時も市区町村が窓口になっています。もし指定更新でどちらに申請すればよいかわからない場合も、市区町村に確認するのが正しい手順です。
申請の前に事前相談をする
書類を揃えて窓口に持参する前に、担当部署への事前相談を行うことを強くお勧めします。多くの市区町村が「申請前相談」を設けており、電話または来庁でこれに応じています。
事前相談では以下の内容を確認します。
- 申請様式(市区町村独自の書式があることが多い)
- 申請書類のチェックリスト(提出部数・綴じ方・原本か写しかの区別)
- 申請受付の締め切り日(毎月の受付締め切りを設けている自治体がある)
- 指定日のスケジュール(月初め指定が多い)
- 当該自治体独自のルールや加算要件の確認
「書類を全部揃えてから提出したら、この様式ではなく自治体指定の様式で出し直してほしいと言われた」という事例は珍しくありません。書類作成の手間を二度かけないためにも、事前相談を先にするのが実務上の鉄則です。
事前相談の段階では、法人の登記が完了していること・事務所の物件が決まっていること・介護支援専門員証の有効期限を確認しておくと、相談がスムーズに進みます。
指定申請に必要な書類の一覧
市区町村によって書類の種類や様式は異なりますが、標準的に求められるものを整理します。
| 書類 | 補足 |
|---|---|
| 指定申請書 | 市区町村所定の様式。事業所名・所在地・開業予定日・代表者等を記載 |
| 付表(居宅介護支援事業所用) | 人員(管理者・担当者)・設備・営業時間等を記載 |
| 法人の定款(写し) | 目的事業に「居宅介護支援事業」の記載があること |
| 法人の登記事項証明書 | 申請日から3か月以内に発行されたもの |
| 介護支援専門員証の写し | 管理者・担当者全員分。有効期限内であること |
| 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 | 週の勤務日・勤務時間を記載 |
| 平面図 | 各部屋の面積・用途がわかるもの。相談室・事務スペースが確認できること |
| 賃貸借契約書の写し | 事業所が賃貸物件の場合。自己所有の場合は建物の全部事項証明書 |
| 運営規程 | 事業の目的・運営方針・サービスの内容・料金・苦情の処理等を記載 |
| 損害賠償保険の加入証明書 | 業務中の事故・損害に対する賠償責任保険等 |
| 誓約書 | 欠格要件に該当しないことを宣誓する書類 |
| 役員名簿 | 氏名・役職・生年月日・住所等 |
上記に加え、自治体によっては管理者の経歴書・直近の決算書や財産状況を示す書類・健康保険・厚生年金への加入状況を示す書類などを求めるところもあります。事前相談でチェックリストをもらっておくと、抜け漏れが防げます。
定款への記載が必要
法人の定款には、目的事業として「居宅介護支援事業」または「指定居宅介護支援に関する事業」の記載が必要です。
新たに法人を設立する場合は、設立時から定款に記載しておけば問題ありません。既存の法人が新たに居宅介護支援を始める場合は、定款変更が先に必要になることがあります。定款変更には株主総会(株式会社)または社員総会(NPO法人)などの手続きが必要で、登記変更も伴います。この手続きには最低でも2〜4週間かかります。開業スケジュールに余裕を持たせておくことが必要です。
運営規程は内容の確認が必要
運営規程には、事業の目的・運営方針・従業者の職種と員数・職務内容・営業日と営業時間・サービスの内容と費用・緊急時の対応・秘密の保持・苦情の処理方法などを盛り込む必要があります(平成11年厚生省令第38号第21条)。
市区町村によっては参考様式を提供していますが、事業所の実態(定休日・相談受付時間・管理者の氏名など)に合わせた修正が必要です。様式の文言をそのまま全部コピーした状態で提出すると、空欄のままになっている部分について差し戻しになることがあります。
開業日から逆算したスケジュール
指定申請の標準処理期間は、多くの市区町村で1か月から2か月に設定されています。この期間中、担当部署が書類を審査し、不備があれば補正を求めます。
開業日から逆算した準備スケジュールの目安は以下のとおりです。
| 開業日まで | 行動の目安 |
|---|---|
| 4〜5か月前 | 法人設立(登記完了)・事務所物件の確定 |
| 3か月前 | 管轄市区町村の担当部署に事前相談。書類様式と締め切りを確認 |
| 2か月前 | 申請書類を一式揃えて提出 |
| 1か月前 | 審査中。書類の補正依頼があれば対応 |
| 開業日 | 指定(または指定予定日からの開始) |
申請書類に不備があると補正を求められ、その対応にかかる時間だけ指定が遅れます。「補正を繰り返して開業が1か月ずれた」という事例もあります。書類の準備には余裕を持たせることが重要です。
指定日は月の1日にすることが多い
指定の効力が生じる日(指定日)は、多くの場合「月の1日」です。介護報酬の国保連への請求サイクルが月単位になっているため、月途中からの開業は事務処理が複雑になります。このため、実際には「○月1日指定」を目指してスケジュールを組むことが一般的です。
自治体によっては「毎月15日締め切り・翌月1日指定」のように申請の締め切りを設けているところがあります。事前相談でこの締め切りも確認しておきましょう。
締め切り直前に提出して書類に不備が見つかった場合、翌月の指定日にずれ込む可能性があります。締め切りの1週間前には一式揃えて確認する余裕が必要です。
指定の有効期間は6年・更新申請を忘れない
居宅介護支援事業所の指定の有効期間は6年です(介護保険法第79条の6)。6年ごとに更新申請が必要で、更新申請を行わないと指定の効力が自動的に失われます。
更新申請は有効期限の90日前から受け付けているのが一般的です。満了日を過ぎてしまうと指定が失効し、新規申請と同じ手続きが必要になります。開業後は次の更新日をカレンダーや管理台帳に記録しておくことをお勧めします。
指定更新申請の書類は、新規申請とほぼ同じ内容です。指定更新の際は、運営規程に変更があれば変更後の内容で提出します。また、過去の苦情処理実績や事故対応の実績を求める自治体もあります。
変更届・廃止届も期限がある
指定を受けたあとも、以下の場合には届出が必要です。提出期限を守ることが、運営指導での指摘を防ぐうえで大切です。
| 届出の種類 | 届出のタイミング |
|---|---|
| 変更届 | 事業所名・所在地・管理者・法人代表者・連絡先等が変わったとき。変更から10日以内が一般的 |
| 休止届 | 事業を一時的に休止するとき。休止前に届出 |
| 廃止届 | 事業を廃止するとき。廃止1か月前に届出が必要な場合が多い |
| 指定更新申請 | 有効期間満了日の90日前から受け付け |
変更届の提出を忘れると、運営指導の際に「変更があったのに届け出ていない」として基準違反として指摘を受けることがあります。管理者が変わったとき・事務所を移転したとき・法人の代表者が変わったときは、速やかに届け出る必要があります。
指定の欠格要件
指定は、次の欠格事由に該当する場合には受けられません(介護保険法第79条第2項により第70条を準用)。
主な欠格事由を整理します。
- 申請者が法人でないこと(個人事業主は指定を受けられない)
- 申請者またはその役員等が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わっていないか、執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していないとき
- 介護保険法その他の法律の規定により指定を取り消され、取消しの日から5年を経過していないとき
- 申請書類や添付書類に虚偽の記載をしたとき
- 申請者が社会保険・労働保険関係法令に基づく申告等の義務を怠っているとき
特に「法人でないと指定を受けられない」という点は、個人で開業を検討している方が見落としやすい要件です。ケアマネジャーとして個人で業務を受けることはできますが、「居宅介護支援事業所」として指定を受けるには法人格が必要です。法人設立が最初のステップになります。
法人設立は指定申請の前に完了させる
居宅介護支援事業所の指定を受けるには、法人格が必要です。個人事業主のままでは指定が取れません。
設立できる法人の種類に制限はありません。株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人・医療法人などが実際に設立されています。
最も多く選ばれているのは合同会社です。設立費用が株式会社より安く(登録免許税6万円・公証役場での定款認証が不要)、設立後の手続きが比較的シンプルなためです。株式会社の場合は登録免許税15万円・定款認証費用5万円程度が必要になります。
NPO法人は設立の申請手続きに時間がかかります(所轄庁(都道府県または政令指定都市)の認証に2〜4か月かかることが多い)。開業スケジュールによっては、合同会社または株式会社の方が適している場合があります。
法人設立から申請書類の提出完了までには、合計で3〜5か月かかることを見込んでおくことをお勧めします。
複数の事業所を開設する場合
同じ法人が2か所目・3か所目の居宅介護支援事業所を開設する場合も、それぞれの事業所について個別に指定申請が必要です。指定はあくまで「事業所単位」で行われます。
法人としての書類(定款・登記事項証明書)は共通で使えますが、人員(各事業所ごとに介護支援専門員の配置)・設備(平面図・賃貸借契約書)・運営規程(事業所ごとの営業時間・担当区域など)は事業所ごとに必要です。
1つ目の事業所の指定を受けてから2つ目の指定申請を行う場合でも、手続きの流れは同じです。
まとめ
居宅介護支援事業所を開業するには、法人設立を先に完了させてから指定申請を行います。指定権者は2018年4月から市区町村に移っており、申請先は開業予定の事業所の所在する市区町村の担当部署です。
申請書類には、定款・登記事項証明書・介護支援専門員証・平面図・運営規程などが必要です。書類の種類や様式は市区町村によって細かい違いがあるため、まず事前相談を行って確認することが最初の行動として最も重要です。
開業日から逆算すると、4〜5か月前の法人設立・3か月前の事前相談・2か月前の申請書類提出が目安になります。指定の有効期間は6年で、更新申請を忘れないようにカレンダーで管理することが必要です。
出典:介護保険法(平成9年法律第123号)第79条・第79条の5・第79条の6 / 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)/ 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第21条
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