整体院の人件費は、1人経営か、スタッフを雇うかで性質がまったく変わります。1人経営では人件費はオーナー自身の取り分そのものです。スタッフを雇う場合は固定費として経営を圧迫する可能性があります。この違いを理解した上で、自分の院に合った人件費の考え方を持つことが重要です。
作成:fufumumu_design(ふふ)/作成日:2026年10月20日/数字の出典は各表の下に記載しています。
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1人経営の場合の「人件費」の考え方
1人経営(個人事業主)の場合、整体師本人への報酬は厳密には「人件費」ではありません。個人事業主は従業員ではないため、自分への給与を経費として計上することはできません。ただし、生活費(事業主の取り分)は必要な支出として収支計画に組み込んでおく必要があります。
日本政策金融公庫の「創業計画書」の様式では、個人事業主の生活費は事業の費用として扱わず、資金繰りの中で別途引く項目として扱われています。この考え方に基づくと、整体院の収支計画で「人件費」として扱うのはスタッフへの給与のみで、オーナーの取り分は利益から引かれるという整理になります。
エステ系サービス業の人件費率の全国データ
整体院に近い業種として、日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査」(2025年度・エステ系サービス業 n=105)のデータを参照します。
| 区分 | 人件費対売上高比率 |
|---|---|
| 全体平均 | 38.0% |
| 黒字企業の平均 | 31.3% |
| 中央値 | 36.9% |
出典:日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査」2025年度・エステ系サービス業(サービス業 業種別)n=105、n(黒字)=47。調査対象は従業員20名以下の法人または個人企業。
黒字企業の人件費比率は31.3%です。売上100万円に対して31.3万円の人件費です。全体平均は38.0%で、差は約7ポイントあります。
1人当たり売上高の全体平均は1,015万円(年間)・黒字企業平均は1,166万円・中央値は823万円です。1人当たり人件費は全体平均285万円・黒字企業平均267万円・中央値273万円です(同調査より)。これはスタッフ1人あたりの数字のため、スタッフを雇う場合の給与水準の参考になります。
スタッフを雇う場合の人件費設計
スタッフを雇う場合は、人件費に加えて社会保険料の負担が発生します。
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 月給 | 20〜30万円 | 経験・資格・地域によって異なる |
| 社会保険料(事業主負担) | 月給の約15〜17% | 健康保険・厚生年金・介護保険(40歳以上) |
| 雇用保険(事業主負担) | 月給の0.95% | 2024年度・一般事業の場合(令和6年度料率) |
| 合計コスト目安 | 月給×約1.18倍 | 例:月給25万円なら合計約29.5万円 |
社会保険料率は2024年度の厚生労働省の公表値を参考にしています。実際の料率は年度ごとに変わります。詳細は日本年金機構のサイトでご確認ください。
1人スタッフを採用すると、月に30万円程度の人件費の支出が増えます。この分を回収するには、そのスタッフが生み出す売上がこれ以上ある必要があります。単価7,000円なら月に約43件(1日約2件、月22日)の施術を増やす必要がある計算です。
人件費比率を適切に保つためのポイント
人件費比率を黒字企業の目安(31〜35%)に収めるためには、次の点が重要です。
1つ目は、採用のタイミングです。稼働率が70〜80%程度で安定してから採用すると、増員の効果がすぐに出やすくなります。スタッフを先に採用して売上を待つ形は、人件費だけが先行して赤字リスクが高まります。
2つ目は、スタッフの稼働率管理です。スタッフが暇な時間があるとその分の人件費が損失になります。スタッフ側の施術枠も充填できるように、集客を先に強化しておくことが重要です。
3つ目は、業務委託か雇用かの検討です。フリーランスの施術者との業務委託契約は、固定費ではなく変動費(売上に応じた報酬)として扱えます。ただし、労働実態によっては労基法上の「雇用」とみなされる可能性もあるため、契約形態の設計は慎重に行う必要があります。
オーナーの取り分(手取り)はどう決まるか
1人経営の整体師であれば、売上から経費を引いた残りが事業所得になります。そこから所得税・住民税・国民健康保険料を支払った残りが手取りになります。
| 区分 | 計算の流れ |
|---|---|
| 売上 | 施術単価×件数 |
| 経費(家賃・消耗品・広告費など) | 売上から差し引く |
| 事業所得 | 売上 – 経費 |
| 所得税・住民税・国民健康保険料 | 事業所得から差し引く(税率は所得による) |
| 手取り | 事業所得 – 税・社会保険料 |
事業所得が年600万円の場合、所得税・住民税・国民健康保険料を合わせると150〜200万円程度になることがあります。手取りは400〜450万円程度の計算です(扶養・各種控除の状況によって異なります)。確定申告の際に実際の税額を計算することが必要で、事前に顧問税理士や税務署に相談することをおすすめします。
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