訪問介護との一体的開業で変わること。コストと収入の両面から整理する。

訪問介護との一体的開業で変わること。コストと収入の両面から整理する。 介護

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居宅介護支援事業所と訪問介護事業所を同じ法人で運営する「一体的開業」を選ぶ事業者は少なくありません。サービスを一体的に提供できるメリットがある一方で、介護報酬の算定に制限が設けられています。

この記事では、一体的開業が収入・コストに与える影響と、注意すべき規制を整理します。

一体的開業のメリット:運営の効率化と連携の強化

居宅介護支援と訪問介護を同一法人で運営する場合、次のメリットがあります。

  • 利用者の状態変化への迅速な対応(ケアマネジャーとヘルパーが同じ法人内で連絡できる)
  • 管理業務の効率化(請求・人事・経理を一元化できる)
  • 新規利用者の獲得(医療機関や病院からのケアマネ紹介と訪問介護のセットで受け入れやすい)

利用者側から見ても、担当ケアマネジャーが作ったケアプランに基づいて、同じ法人のヘルパーが訪問するため、情報の連携がとりやすいというメリットがあります。

一体的開業の注意点:特定事業所集中減算

居宅介護支援事業所が、利用者のケアプランに特定の事業所のサービスを集中して位置づけた場合、収入が減算される制度があります。これを「特定事業所集中減算」といいます。

具体的には、同一事業者のサービス(訪問介護・通所介護・福祉用具貸与など)が、ケアプラン全体の一定割合を超えた場合に、居宅介護支援費から200単位/月が減算されます。

出典:「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」(厚生省告示第20号)および「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」(老企第22号)。

減算が適用される判断基準(前6か月間のデータで判定)は次のとおりです。

対象サービス 減算となる集中割合の目安
訪問介護・通所介護・福祉用具貸与など 前6か月間の当該サービスの依頼のうち、特定の事業者への依頼が80%超の場合

自分の法人内の訪問介護事業所へのケアプラン位置づけが80%を超えていると、居宅介護支援費に減算が適用されます。担当件数30件の場合、200単位×30件×10円=6万円/月の減収になります。

集中減算の回避:利用者の選択を尊重した記録が必要

特定事業所集中減算が適用されないようにするためには、利用者に複数の事業者の情報を提示し、利用者自身が自法人のサービスを選択したという記録を整備することが重要です。

運営基準(省令)は、ケアマネジャーが利用者に対して複数の事業者の情報を提示することを義務づけています。自法人のサービスを勧める際にも、他の選択肢を示した上で利用者が選んだという事実を記録に残すことが、集中減算の回避につながります。

具体的な対応として次の書類管理が求められます。

  • サービス事業者の一覧を提示した記録(居宅サービス計画原案への利用者の同意)
  • 利用者が特定事業者を選択した理由の記録(「希望した」「距離が近い」「以前から信頼関係がある」など)
  • 前6か月間の集中割合の定期的な確認

一体的開業でのコスト:人件費と施設費を同居させる場合の配分

居宅介護支援と訪問介護を一体的に運営する場合、共通の事務所スペース・管理職の兼任・経理業務の共有によるコストメリットがあります。

一方で、指定申請上は居宅介護支援と訪問介護は別々の指定が必要です。同一の建物内で事業を運営する場合でも、それぞれのサービスに必要な人員・設備基準を満たす必要があります。

項目 居宅介護支援 訪問介護
管理者 主任介護支援専門員(常勤専従が原則) 常勤の訪問介護員等(専従が原則・兼務規定あり)
サービス提供責任者 不要 訪問介護員等のうち1名以上(常勤・専従)
居室・設備 相談室・保管設備等 訪問介護員の控室・サービス提供責任者の執務スペース等

管理者の兼務については、省令上は「専従」が原則ですが、同一の場所での複数サービスの管理を認める取り扱いが一部にあります。具体的な扱いは指定権者(都道府県・市町村)に確認が必要です。

収入の試算:両サービスの収入合算で見る損益分岐点

居宅介護支援と訪問介護を同時に運営した場合の収入構造を整理します。

居宅介護支援の収入は、担当利用者ごとの居宅介護支援費です。訪問介護の収入は、実際に訪問したサービス時間・内容に応じた介護報酬です。2つのサービスの収入は独立して発生するため、合算した収益が運営コストを上回るかを確認する必要があります。

一体的開業では次の費用が追加的に発生します。

  • 訪問介護の指定申請費用(都道府県・市町村への申請)
  • サービス提供責任者の人件費(常勤・専従が必要)
  • 訪問介護員(ヘルパー)の人件費(登録ヘルパーも可だが労働時間の管理が必要)
  • 訪問に使う交通費・移動コスト
  • 訪問介護向けの損害賠償保険

訪問介護を開業する場合、ヘルパー1名あたりの月人件費・交通費を含めた固定コストを計算し、何件の訪問をこなせば収支が合うかを試算することが開業前の準備として重要です。

まとめ

  • 居宅介護支援と訪問介護の一体的開業では、利用者連携の効率化・管理業務の一元化のメリットがある
  • 自法人のサービスをケアプランに80%超集中させると、特定事業所集中減算(200単位/月/件)が適用される
  • 集中減算の回避には、利用者への複数事業者の提示記録と利用者の選択根拠の記録が必要
  • 訪問介護の指定申請はケアマネ事業所とは別が必要で、サービス提供責任者の専従配置など独自の人員基準を満たす
  • 一体的開業の収支は、両サービスの収入合計がそれぞれの固定コストを上回るかを試算して確認する

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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