整体院の開業、やることを順番に整理します。

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整体院の開業 収支シミュレーター
整体院の収支・損益分岐点・資金繰りをブラウザで試算できます。

整体院の開業を考えているとき、「何から手をつければよいか分からない」という悩みはよくあります。

資格が不要な業種だからこそ、手続きの難しさよりも事業計画の精度が問われます。このページでは、整体院を開業するうえで必要なことを、検討段階から開業後まで順番に整理します。

整体院は、医療機関ではない

まず前提として確認しておきます。整体院は医療機関ではありません。

日本の医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めていますが、整体(骨格矯正・筋膜リリースなど)はここでいう「医業」には当たりません。また、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等に関する法律(昭和22年法律第217号)の規制対象でもありません。

つまり、整体師を名乗ることも、整体院を開業することも、国家資格がなくても法律上は可能です。

ただし、「資格が不要だから誰でも簡単に続けられる」わけではありません。集客・固定費管理・リピート確保という点で、他の小規模事業と同じ課題が正面からのしかかります。

整体院の開業形態は、主に3つある

整体院を始める場合、次の3つの形態から選ぶことになります。

形態 初期費用の目安 特徴
自宅開業 50万〜200万円程度 家賃負担がなく開業費が抑えられる。プライバシーの確保と集客の工夫が必要
賃貸テナント(新規内装) 500万〜1,500万円程度 立地・内装の自由度が高いが初期費用が大きい
居抜き物件 200万〜600万円程度 前テナントの設備を活用して工事費を抑えられる。物件探しに時間がかかることがある

費用の目安は参考値です。立地・規模・内装の仕様によって大きく変わります。物件の取得費(敷金・礼金・仲介手数料)と内装工事費で大半を占めることが多く、この2項目を先に試算しておくことが重要です。

開業の流れは、コンセプトの設定から始まる

整体院の開業は、次の順で進めるのが基本です。

  1. コンセプトと想定顧客の設定
    「肩こり・腰痛の会社員向け」「産後の女性向け」など、施術の専門性と顧客層を決めます。ここが集客の起点になります。コンセプトが明確な院ほど、口コミ・紹介が生まれやすくなります。
  2. 開業形態・物件の選定
    自宅か賃貸かを決め、物件を探します。賃貸の場合は契約前に「用途変更が必要か」「施術室として使用可能か」を確認します。商業地域と住居系地域では用途制限が異なります。
  3. 資金計画と融資の検討
    初期費用と開業後6か月分の運転資金を合計して必要資金を算出します。自己資金で賄えない場合は日本政策金融公庫の新規開業資金(旧:新創業融資制度)の活用を検討します。
  4. 設備・備品の購入
    施術台(ベッド)・リネン・タオル類・予約管理システム・レジなど。施術台は1台10万〜30万円が多く、数量と品質のバランスで費用が変わります。
  5. 集客の準備
    Googleビジネスプロフィール・ホームページ・SNS(Instagram・LINE公式アカウント)の整備。整体院は「近所で探す」という検索行動が多く、Googleマップ対策が重要です。
  6. 開業・運営
    開業後しばらくは集客が安定しません。最初の3〜6か月は売上が低くても運営できる資金の確保が必要です。

整体院の収支、全国の実態を確認する

日本政策金融公庫総合研究所が毎年行っている「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)では、整体院に近いカテゴリーのデータが公表されています。整体院単独の分類はないため、「エステティック業」(n=105)が参考値として使えます。

指標 全体平均 黒字企業平均 中央値
売上高営業利益率 −6.9% 4.5% 0.6%
損益分岐点比率 113.8% 98.2% 100.1%
人件費対売上高比率 38.0% 31.3% 36.9%
従業者1人当たり売上高 10,154千円 11,656千円 8,227千円

出典:日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)エステティック業(p.39、n=105)

損益分岐点比率の中央値が100.1%というのは、全国の半数の事業者がほぼ損益分岐点ちょうど、またはそれ以下の状態を示しています。全体平均が113.8%というのは、赤字の事業者が相当数いることを意味します。黒字企業の営業利益率4.5%は、事業が軌道に乗ったときの目安として参考になります。

整体院に資格は不要だが、取得するメリットがある

前述のとおり、整体師に国家資格はありません。民間団体が発行する各種整体師認定資格(療術師・整体師・カイロプラクターなど)は存在しますが、これらは国が認める資格ではなく、名称独占も業務独占もありません。

民間資格があることで次のようなメリットがあります。

  • ホームページ・チラシで「○○認定整体師」と名乗ることができ、施術者の信頼性を伝えやすくなる
  • 養成スクールで学ぶことで技術の基礎が身につく
  • 同じ認定機関のネットワークを通じて集客や紹介がある場合がある

あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・鍼灸師などの国家資格は、整体とは異なる施術範囲を持ちます。これらの資格を取得している施術者が整体院を開業するケースもありますが、資格の取得には数年かかるため、整体院の開業とは別の話として考える必要があります。

1人で始める整体院の収支構造

整体院は、施術者本人1人で始めることが多い業態です。1人の施術者が1日に対応できる件数には上限があります。60〜90分コースが主力であれば、1日6〜8件前後が実質的な上限です。これを超えると施術者の疲労が蓄積し、施術の質に影響が出ます。

1日8件、単価6,000円、月22日稼働とすると、月売上は8×6,000×22=1,056,000円になります。これが1人開業の売上の「天井」を決める大きな要素です。スタッフを雇用または業務委託で増やすと売上上限を引き上げられますが、人件費が加わるため収支構造が変わります。

損益分岐点を超えるために必要なこと

整体院が黒字になるかどうかは、固定費を月々の売上が超えられるかどうかで決まります。賃貸物件で開業した場合、家賃・光熱費・通信費・広告費・リース料などの固定費が毎月かかります。施術の売上が固定費を超えた分が利益になります。

整体院はサービス業であり、変動費(タオル・消耗品など)の割合は比較的低いため、「固定費を賄えるだけの施術件数を確保する」という計算が基本になります。公庫データでは、黒字企業の損益分岐点比率は98.2%であるのに対し、全体平均は113.8%です。この差を生む主な要因は、固定費の水準(特に家賃と人件費)です。

固定費を低く抑えながら、安定した予約件数を確保できた事業者が黒字化できています。自宅開業や居抜き物件を活用して家賃を抑えること、開業初期から集客に投資することの両方が重要です。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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