居宅介護支援費には「逓減制」という仕組みがあり、1人のケアマネジャーが担当する件数が増えると1件あたりの報酬単価が下がります。境界となるのは45件・50件・60件の3段階です。担当件数が増えるほど1件あたりの収入は減りますが、事業所全体としての月次収入は増えます。ICT機器を活用している場合は上限が引き上げられる特例もあります。
担当件数・要介護度・加算・地域区分を入力して開業後の収支を試算できます。
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逓減制とは何か
居宅介護支援費の「逓減制」は、1人の介護支援専門員(ケアマネジャー)が担当する利用者が一定数を超えると、超えた分の1件あたりの報酬単価が低くなる仕組みです。「逓減」は「段階的に減る」という意味です。
導入の背景には、ケアプランの作成やモニタリングに必要な時間の確保があります。担当件数が多すぎると1人ひとりへの支援の質が下がるリスクがあるため、単価の逓減によって適切な担当件数を保つ設計になっています。
居宅介護支援費の3区分と単価
居宅介護支援費の単価は、担当件数に応じて費(Ⅰ)・費(Ⅱ)・費(Ⅲ)の3段階に分かれます。
費の区分と件数の境界(ICT特例を使わない場合)
| 区分 | 担当件数の範囲 | 要介護1・2 の単価 |
要介護3〜5 の単価 |
|---|---|---|---|
| 居宅介護支援費(Ⅰ) | 45件未満 | 1,086単位 | 1,411単位 |
| 居宅介護支援費(Ⅱ) | 45件以上〜60件未満 | 544単位 | 704単位 |
| 居宅介護支援費(Ⅲ) | 60件以上 | 326単位 | 422単位 |
出典:厚生労働大臣が定める居宅介護支援に係る居宅介護支援費の算定に関する基準(告示第125号・令和6年3月改定)
費(Ⅱ)は費(Ⅰ)のほぼ半分、費(Ⅲ)は費(Ⅰ)の約30%の単価になります。
計算のルール
「45件を超えたら全件が費(Ⅱ)になる」わけではありません。担当件数の多い少ないに応じて、件数ごとに費(Ⅰ)・費(Ⅱ)・費(Ⅲ)のいずれかが適用されます。
具体的には、1か月の末日時点での担当件数の多い順に区分が決まります。1〜44件目は費(Ⅰ)、45〜59件目は費(Ⅱ)、60件目以降は費(Ⅲ)の単価が適用されます(ケアマネジャー1人あたりの件数で判定)。
担当件数別の月次収入の計算例
要介護1・2と要介護3〜5が半々の構成(例:要介護1・2が50%、要介護3〜5が50%)で、地域区分が10円/単位の場合を例に計算します。
担当件数40件(費Ⅰのみ)
| 要介護度 | 件数 | 単価 | 月収入 |
|---|---|---|---|
| 要介護1・2 | 20件 | 1,086単位 × 10円 | 217,200円 |
| 要介護3〜5 | 20件 | 1,411単位 × 10円 | 282,200円 |
| 合計 | 499,400円 | ||
担当件数50件(費Ⅰ + 費Ⅱ)
| 区分 | 要介護度 | 件数 | 単価 | 月収入 |
|---|---|---|---|---|
| 費(Ⅰ) | 要介護1・2 | 22件(1〜44件目のうち半分) | 1,086単位×10円 | 238,920円 |
| 費(Ⅰ) | 要介護3〜5 | 22件 | 1,411単位×10円 | 310,420円 |
| 費(Ⅱ) | 要介護1・2 | 3件(45〜50件目のうち半分) | 544単位×10円 | 16,320円 |
| 費(Ⅱ) | 要介護3〜5 | 3件 | 704単位×10円 | 21,120円 |
| 合計(概算) | 約587,000円 | |||
費(Ⅱ)の単価は費(Ⅰ)の約半分ですが、件数が増えた分が加わるため事業所全体の収入は増えます。
担当件数60件(費Ⅰ + 費Ⅱ)
60件の場合は費(Ⅰ)が44件・費(Ⅱ)が16件(45〜60件目まで)の組み合わせになります。この場合の概算月収入は約650,000〜680,000円程度になります(要介護度構成・地域区分によって変動します)。
ICT特例:担当件数の上限引き上げ
令和6年4月から、一定の条件を満たす事業所では費(Ⅱ)の適用開始件数が45件から50件に引き上げられる特例があります(ICT特例)。
ICT特例を使った場合の区分
| 区分 | 担当件数の範囲(ICT特例あり) | 要介護1・2 | 要介護3〜5 |
|---|---|---|---|
| 費(Ⅰ) | 50件未満 | 1,086単位 | 1,411単位 |
| 費(Ⅱ) | 50件以上〜60件未満 | 544単位 | 704単位 |
| 費(Ⅲ) | 60件以上 | 326単位 | 422単位 |
ICT特例の要件
令和6年4月改定の50件への引き上げ特例は、次の2つを両方とも満たすことが条件です。
- ケアプランデータ連携システムを活用していること
- 事務職員を配置していること
令和3年4月改定では「ICT機器の活用または事務職員の配置(いずれか一方でよい)」で45件まで緩和されていましたが、令和6年4月改定では「両方を満たすこと」に条件が厳しくなりながら、上限が50件に拡大されました(令和6年厚生労働省告示第86号)。
ICT特例を使えば費(Ⅰ)の適用範囲が50件未満まで広がるため、1件あたりの報酬を高く維持したまま担当件数を増やすことができます。収入の増加幅は40〜50件の間の担当件数で最もはっきり出ます。
逓減制が収入計画に与える影響
担当件数が増えるにつれて1件あたりの収入は下がりますが、事業所全体の月次収入は増え続けます。ただし費(Ⅱ)・費(Ⅲ)の単価は費(Ⅰ)より大きく低いため、件数を増やしても収入の増え方は鈍くなります。
損益分岐点(収入が費用を上回る件数)を計算するうえでも、逓減制の影響を正しく組み込むことが重要です。40件・50件・60件と仮定した場合の収入が変わるため、費用の見積もりと合わせて試算することをお勧めします。
なお、地域区分(1単位あたりの単価が地域によって異なる・10〜11.1円)によっても月次収入は変わります。都市部の事業所は地方より1件あたりの収入が高くなる計算です。
まとめ
- 居宅介護支援費は担当件数が45件・60件(ICT特例あり時は50件・60件)を超えると単価が段階的に下がる
- 費(Ⅰ)と費(Ⅱ)の単価差は約半分。費(Ⅲ)は費(Ⅰ)の約30%
- 件数が増えても事業所全体の収入は増えるが、増え方は緩やかになる
- ICT機器を活用してモニタリングを行う場合は特例で費(Ⅱ)の開始が45件→50件に引き上げ
- 収入計画を立てるときは逓減制を正しく組み込んだ試算が必要
担当件数・要介護度の構成・ICT特例の有無・地域区分を入力して、逓減制を反映した月次収入を試算できます。
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【参考にした資料】
・厚生労働大臣が定める居宅介護支援に係る居宅介護支援費の算定に関する基準(告示第125号・令和6年3月改定)
・指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)


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