訪問看護のハラスメント研修、利用者・家族からの行為をどう扱うか。

訪問看護のハラスメント研修、利用者・家族からの行為をどう扱うか。 介護

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訪問看護ステーションには、利用者・家族等からのハラスメント(暴力・暴言・セクシャルハラスメントなど)を防止するための措置と研修の実施が義務づけられています。根拠は指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第28条第4項(訪問看護については第67条で準用)です。

「利用者・家族からのハラスメント」は、職員間のハラスメントとは法的な位置づけが異なります。この記事では、訪問看護のハラスメント研修で扱うべき内容と対応手順を整理します。

ハラスメント防止措置の法的根拠

指定居宅サービス等基準第28条第4項(訪問看護は第67条準用)は、管理者がハラスメントを防止するために次の措置を講じることを求めています。

  • 利用者・家族等からの身体的暴力・精神的暴力・セクシャルハラスメントに関する方針の明確化および当該方針の周知徹底
  • 当該ハラスメントに関する相談窓口の設置
  • 相談への適切な対応

同条は令和3年度の制度改正で導入されました。それ以前も雇用管理上の義務として各種ハラスメント防止義務(パワハラ:労働施策総合推進法、セクハラ:男女雇用機会均等法)がありましたが、「利用者・家族からのハラスメント」については今回の改正で明文化されました。

訪問看護で発生しやすいハラスメントの類型

研修では、訪問看護の現場で実際に発生しやすいハラスメントの具体例を確認します。

身体的暴力:叩く・蹴る・物を投げつける・引っ掻く・噛みつく、など。認知症の利用者からのケア中の暴力が多く見られます。家族が怒りをスタッフにぶつける行為も含まれます。

精神的暴力(暴言・ハラスメント):「殺すぞ」「馬鹿野郎」などの暴言、脅迫的な言動、不当な要求(「今すぐ来い」「24時間対応しろ」)、クレームとして繰り返される中傷・否定的発言など。

セクシャルハラスメント:不必要な身体接触(抱きついてくる・手を握り離さない)、性的な発言・冗談・写真の提示、プライバシーの侵害(下着の色を尋ねる、入浴介助中の性的発言)など。

その他のハラスメント:過剰なサービス要求(契約外の行為の強要)、録音・録画による威圧、SNSへの投稿による誹謗中傷、などがあります。

ハラスメントへの対応手順

研修では、ハラスメントが発生した場合の具体的な対応手順を確認します。手順を事前に決めておくことで、現場の看護師が一人で抱え込まずに済む体制を整えることが重要です。

1. 発生時の対処:危険を感じた場合はその場を離れる。無理に鎮めようとしない。身体的暴力については毅然と「それはやめてください」と言葉で伝える(エスカレーションしない言い方で)。

2. 速やかな報告:ハラスメントが発生したら、その日のうちに管理者に報告する。報告の敷居を低くするために、管理者は「報告してくれてよかった」という姿勢で受け止めることが大切です。

3. 記録の作成:発生した状況を「いつ・どこで・誰が・何をしたか・どんな言葉を言ったか・看護師はどう対応したか」を具体的に記録します。記録は後の対応策の検討・ケアマネジャーとの共有・必要な場合の法的対応の証拠として活用します。

4. ケアマネジャー・主治医との情報共有:利用者・家族によるハラスメントは、ケアプランの見直しや他のサービス事業者への情報提供が必要な場合があります。ケアマネジャーに状況を共有し、チームとして対応方針を検討します。

5. 深刻な場合は警察・弁護士への相談:身体的暴力で怪我をした場合、脅迫を受けた場合は、警察への相談または告訴も選択肢に含まれます。このラインを事前に研修で示しておくことで、スタッフが我慢しすぎる状況を防ぐことができます。

事業所としての体制整備

研修での周知と並行して、事業所として次の体制を整えることが求められています。

  • ハラスメント防止方針の文書化と周知:「どんな行為がハラスメントか」「発生した場合はどう対応するか」を文書にして、全スタッフが閲覧できる場所に置く
  • 相談窓口の設置:スタッフが相談しやすい窓口(管理者または外部相談窓口)を設ける
  • サービス提供の拒否基準の明確化:ハラスメントが継続・深刻化した場合に、指定居宅サービス等基準第9条(正当な理由による提供拒否)を根拠に契約解除・訪問中止を行える体制を整える

認知症による行動と意図的なハラスメントの区別

訪問看護の現場では、認知症の症状(BPSD:行動・心理症状)による暴力と、意図的なハラスメントを区別して対応することが重要です。

BPSDによる暴力については、環境調整・ケアの工夫・医師への相談が優先的な対応になります。一方、家族からの意図的な暴言・脅迫は、事業所として毅然と対応し、記録と報告を通じて組織的に対処することが必要です。

研修でこの区別を確認しておくことで、スタッフが「どちらの対応をすべきか」を適切に判断できるようになります。

まとめ

訪問看護のハラスメント研修では、①ハラスメントの類型と具体例 ②発生時の対応手順(報告・記録・連携) ③事業所としての体制整備 ④認知症BPSDとの区別、を中心に内容を組み立てることが有効です。令和3年度改正で義務化された措置(第28条第4項・第67条準用)を満たすために、方針の文書化・相談窓口の設置・研修の実施記録の整備を進めてください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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