消防設備士 乙種第2類(乙2)は、泡消火設備の整備・点検ができる国家資格です。試験は、四肢択一の筆記30問と、記述式の鑑別5問。受験資格はなく、誰でも受けられます。合格するには、筆記の科目ごとに40%以上、筆記全体で60%以上、鑑別で60%以上の3つをすべて満たす必要があります。令和7年度の合格率は29.7%(受験者790人・合格者235人)で、乙種7類のうち下から3番目です。この記事では、試験の構造・出題範囲・合格ラインと、科目別に何を押さえるかをまとめます。
作成:fufumumu_design(ふふ)/作成日:2026年10月17日/数字の出典は各表の下に記載しています。
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泡消火設備の消防設備士は、第2類だけ
消防設備士の資格は、扱う設備ごとに類が決まっています。消防法施行令第36条の2と消防法施行規則第33条の3に、免状の種類と工事・整備できる設備が対応づけられています。泡消火設備を担当するのは第2類です。
甲種と乙種の違いは、できることの範囲です。甲種第2類があれば工事も整備も行えます。乙種第2類は整備だけです。ここでいう「整備」は、点検・修理・交換などで、新規に設備を取り付ける「工事」は含みません。受験資格がないのは乙種だけで、甲種には学歴や実務経験などの受験資格が必要です。
泡消火設備は、水を使う放水系の設備と違い、燃料火災(油火災)に対して泡で窒息・冷却する仕組みです。主な設置場所は、飛行機や回転翼航空機の格納庫、屋内駐車場、道路(屋内部分)などです(消防法施行令第13条)。日常的に目にする機会は少ないですが、空港や大型商業施設の駐車場、自動車整備工場などに設置されています。
試験は筆記30問と鑑別5問、時間は1時間45分
乙2の試験は、マークシートの筆記と、記述式の鑑別(実技)に分かれています。問題の数は次のとおりです。
| 区分 | 科目 | 問題数 |
|---|---|---|
| 筆記(四肢択一) | 消防関係法令(共通6問・類別4問) | 10問 |
| 基礎的知識(機械) | 5問 | |
| 消防用設備等の構造・機能・整備(機械9問・規格6問) | 15問 | |
| 実技 | 鑑別等(写真・イラスト・図面等による記述式) | 5問 |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「試験科目及び問題数」(2026年10月17日に確認)
「共通」は消防設備士全員が覚える法令で、消防法の基本、点検と報告の義務、免状の交付・返納・講習などが含まれます。「類別」は第2類(泡消火設備)に固有の法令で、どこに設置するか、どのヘッドを使うか、薬剤をどう貯蔵するかといった設置基準が出ます。
「機械」(構造・機能・整備)は、泡消火設備の種類・構成・各部品の仕組みと点検方法です。「規格」は、泡消火薬剤の作り方の基準(泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令)の内容で、比重・pH・流動点・膨脹率・還元時間など、数値の問題が多く出ます。
| 受験資格 | なし(誰でも受験できる) |
|---|---|
| 試験時間 | 1時間45分(科目免除がある場合は短縮) |
| 試験手数料 | 5,700円(非課税) |
| 試験の実施 | 都道府県の消防試験研究センター各支部が実施。年に複数回。電子申請は再受験を含む全員が利用可 |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「受験資格」「試験の方法」(2026年10月17日に確認)
合格ラインは「科目ごとに4割」と「全体で6割」と「鑑別で6割」の3つ
消防試験研究センターが定める合格基準は、「筆記試験において、各科目毎に40%以上で全体の出題数の60%以上、かつ、実技試験において60%以上」です。問題数に直すと、次のようになります。
| 科目 | 問題数 | 40%以上に必要な正解数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 10問 | 4問以上 |
| 基礎的知識 | 5問 | 2問以上 |
| 構造・機能・整備 | 15問 | 6問以上 |
| 筆記の合計 | 30問 | 18問以上(60%) |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「合格基準」(2026年10月17日に確認)
気をつけたいのが、基礎的知識(5問)です。5問しかないため、1問の重みが大きく、3問を落とすと40%(2問正解)でぎりぎり、4問落とすと不合格になります。筆記の合計は取れていても、この科目だけで不合格になるケースがあります。
鑑別は5問の記述式で、配点は公表されていません。写真や図を見て、機器の名称・用途・点検方法などを書く形式が多いです。「5問のうち3問を完全に書ける」ことを目安にすると準備しやすいです。
令和7年度の合格率は29.7%。乙種の中での位置
令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の乙2の合格率は29.7%でした。受験者790人のうち、合格者は235人です。
乙種7類で並べると、次のようになります。
| 類 | 設備 | 合格率(令和7年度) |
|---|---|---|
| 乙種7類 | 漏電火災警報器 | 64.7% |
| 乙種5類 | 金属製避難はしご・救助袋・緩降機 | 41.2% |
| 乙種6類 | 消火器 | 35.6% |
| 乙種4類 | 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備 | 34.0% |
| 乙種2類 | 泡消火設備 | 29.7% |
| 乙種1類 | 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備 | 28.5% |
| 乙種3類 | 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備 | 26.8% |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況 令和7年度」(2026年10月17日に確認)
乙7(64.7%)や乙5(41.2%)と比べると難しいです。受験者数が790人と少ないため、年度によって合格率が動きやすいという特徴もあります。合格率の推移と読み方は、乙2の合格率の記事で詳しく書いています。
法令(類別)は、数字と場所の組み合わせが出る
類別法令は、施行令第15条(泡消火設備の設置基準)と施行規則第18条の2(細目の技術基準)が中心です。よく出る数字を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 規定値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 移動式のホース接続口〜防護対象物 | 水平距離15m以下 | 施行令第15条第2号 |
| 移動式の格納箱〜ホース接続口 | 3m以内 | 施行令第15条第4号 |
| 高さ5m超の場所に高発泡用放出口を使う場合 | 全域放出方式 | 施行規則第18条の2 |
| 冠泡体積(全域放出方式) | 床面から防護対象物の最高位より0.5m高い位置まで | 施行規則第18条の2 |
| 高発泡用放出口(全域放出方式)の最低設置数 | 床面積500m²に1個以上 | 施行規則第18条の2 |
| 起動装置の操作部の設置高さ | 床面から0.8m以上1.5m以下 | 施行規則第18条の2第10号ハ |
| フォームヘッド1個当たりの放射区域(通常) | 9m²以上につき1個(区域は50〜100m²) | 施行規則第18条の2第5号 |
| フォームヘッド1個当たりの放射区域(道路・駐車場) | 80〜160m² | 施行規則第18条の2第5号 |
低発泡と高発泡の区分は、膨脹比20以下が低発泡(フォームヘッド・FWSヘッドを使う)、80以上1000未満が高発泡(高発泡用泡放出口を使う)です(施行規則 別表第一の2)。高発泡はさらに第一種(80以上250未満)・第二種(250以上500未満)・第三種(500以上1000未満)に分かれます。
数字だけを覚えるより、「なぜその数字か」というイメージを持てると間違えにくいです。たとえばホース接続口から15m以内という規定は、ホースを引いて届く範囲で防護対象物をカバーするためです。詳しい数字のまとめは、乙2で覚える数字の記事にまとめています。
規格(薬剤)は、薬剤の種類ごとに数字を分けて覚える
泡消火薬剤の規格(泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令)は、比重・pH・流動点・膨脹率・還元時間などの数値が薬剤の種類ごとに決まっています。種類は、たん白泡消火薬剤・合成界面活性剤泡消火薬剤・水成膜泡消火薬剤の3つです。
| 規格値 | たん白 | 合成(たん白系除く) | 水成膜 |
|---|---|---|---|
| 比重(省令第5条) | 1.10以上1.20以下 | 0.90以上1.20以下 | 1.00以上1.15以下 |
| pH(省令第8条) | 6.0以上7.5以下 | 6.5以上8.5以下 | - |
| 流動点・普通型(省令第7条) | −7.5℃以下 | −7.5℃以下 | −7.5℃以下 |
| 流動点・耐寒型(省令第7条) | −12.5℃以下 | −12.5℃以下 | −12.5℃以下 |
| 低発泡の膨脹率(省令第12条) | 6倍以上 | 6倍以上 | 5倍以上 |
| 25%還元時間(省令第12条) | 1分以上 | 1分以上 | 1分以上 |
出典:泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年自治省令第26号)各条文(2026年10月17日に確認)
ここで注意が必要なのは、水成膜の膨脹率です。たん白と合成が「6倍以上」なのに対し、水成膜は「5倍以上」と別の基準になっています(省令第12条)。試験では「合成界面活性剤泡消火薬剤の膨脹率は6倍以上か5倍以上か」という形で問われることがあります。薬剤の種類ごとの詳細は、泡消火薬剤の種類と規格の記事にまとめています。
基礎的知識(機械)は、乙6・乙1と共通する範囲
基礎的知識は、力のつり合い・荷重・圧力・流体の基礎など、機械系の理論問題です。乙1(屋内消火栓・スプリンクラー)や乙6(消火器)と共通する内容も多く、他の乙種を持っている人には科目免除の制度があります(同一受験地内であれば、甲種・乙種を同時受験することも可能)。
5問しかない科目なので、苦手な場合は基本問題に絞って確実に2問取ることを目標にするのが現実的です。理論が難しく感じる場合は、「力 = 圧力 × 面積」「パスカルの原理(密閉容器内の圧力はあらゆる方向に均等に伝わる)」といった基礎だけを押さえて、残りは法令・規格で稼ぐ方針でも合格ラインには届きます。
鑑別(実技)は、機器の名称と目的を正確に書く練習をする
鑑別は、写真や図を見て、機器の名称・種別・用途・選定理由などを記述する問題です。採点は記述の正確さで行われるため、うろ覚えでは得点が安定しません。よく出るのは、泡ヘッドの種類(フォームヘッドとFWSヘッド)、プロポーショナーの種類(ライン式・プレッシャー式・ポンプ式)、一斉開放弁、泡消火薬剤の容器などです。
準備のしかたは、「見て名前が言える」段階から入り、「特徴と用途を文章で説明できる」段階に上げていくと、本番で白紙を防ぎやすくなります。鑑別の詳細は、泡ヘッドの鑑別対策とプロポーショナーの鑑別対策の記事で詳しく書いています。
試験の日程と申し込みの流れ
消防設備士の試験は、都道府県ごとに消防試験研究センターの各支部が実施します。乙2は全47都道府県で実施されていますが、年間の実施回数は都道府県によって異なります。東京・大阪・神奈川などは複数回実施されますが、受験者が少ない道県では年1〜2回のことがあります。
| 受験スケジュールの確認 | 消防試験研究センターのWebサイト(shoubo-shiken.or.jp)で受験地・日程を検索 |
|---|---|
| 申し込み方法 | 書面申請または電子申請(電子申請はWebで完結) |
| 受験料の支払い | 電子申請:クレジットカード・コンビニ・ペイジーなど。書面:郵便振替 |
| 受験票の受け取り | 書面申請:郵便で届く。電子申請:マイページから印刷 |
| 合格発表 | 試験後おおむね1か月。センターのWebで受験番号が確認できる。ハガキも送付 |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「受験の手続き」(2026年10月17日に確認)
乙2を受験する際は、試験会場のある都道府県に居住・勤務していなくても申し込めます(居住地・勤務地の縛りなし)。受験者が少ない乙2は、都市部の試験を受ける選択肢もあります。
他の乙種をすでに持っている場合、「消防関係法令(共通部分)」と「基礎的知識」が免除になります。免除を使うと試験時間が短くなり、残る「消防関係法令(類別)」「構造・機能・整備」「鑑別」に集中できます。試験での免除申請には、所有免状のコピーを申込書類と一緒に提出します。
まとめ:乙2は薬剤の数字と設置基準の数字が両方出る
乙2の特徴は、他の乙種と比べると試験範囲の「数字問題」が2層ある点です。法令(類別)は設置の数値基準(ヘッドの間隔・放射区域・ホース長さなど)、規格は薬剤の物性値(比重・pH・流動点・膨脹率)です。2種類の数字を混同しないよう、科目ごとに整理しながら覚えていくと取りこぼしが減ります。
受験者数が少ないため年度によって合格率が揺れますが、4割を切ることが多い難しめの類です。時間をかけて確実に仕上げることが合格への近道です。
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