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生活介護の事業所では、「ハラスメント防止措置」の義務を知っていても、「研修で何を教えればよいか」に悩む管理者が少なくありません。
特に生活介護の現場では、障害のある利用者からの行為をどう考えるかという課題もあります。
この記事では、生活介護のハラスメント防止研修で教えるべき内容と実務の進め方を整理します。
根拠条文は省令第93条で準用される第33条の2です
生活介護のハラスメント防止については、指定障害福祉サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)の第93条の準用規定により、第33条の2が適用されます。
第33条の2の規定内容(準用)
第33条の2には、次のことが定められています。
「指定居宅介護事業者は、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。」
(省令第33条の2・生活介護へは第93条の準用規定により適用)
つまり、セクシュアルハラスメント(セクハラ)とパワーハラスメント(パワハラ)の防止措置を講じることが義務です。
ハラスメント防止措置として必要なこと
省令に基づく措置として、事業所は次のことを行う必要があります。
- 方針の明確化:ハラスメントを許さないという方針を明確にし、職員に周知する
- 相談窓口の設置:相談しやすい窓口を設け、職員に知らせる
- 行為者への厳正な対処:ハラスメントが発生した場合の対応方針を決めておく
- 研修の実施:職員がハラスメントについて理解できるよう研修を行う
これらの措置は厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)でも詳しく定められています。
生活介護の現場で起きやすい3種類のハラスメント
生活介護の現場では、次の3種類のハラスメントが起きやすい特徴があります。
1. 職員間のパワーハラスメント
管理者・上司から部下への言動が代表的です。
- 身体的な攻撃(暴力・物を投げるなど)
- 精神的な攻撃(怒鳴る・無視する・必要以上に責める)
- 過大な要求(業務量が多すぎる・能力以上のことを強要する)
- 過小な要求(仕事を与えない・取り上げる)
- 人間関係の切り離し(無視する・グループから外す)
業務上必要なことを伝えること、指導・指摘することはハラスメントではありませんが、その伝え方・頻度・強度が問題になることがあります。
2. 職員間のセクシュアルハラスメント
性的な言動が就業環境を悪化させるケースです。
- 性的な冗談・からかい
- 身体への不必要な接触
- プライベートの交際や性的な交際を求める
- 性的な発言・画像の共有
3. 利用者・家族からのハラスメント(カスタマーハラスメント)
生活介護の現場で特有の課題として、利用者や家族からのハラスメントがあります。
- 職員への暴言・暴力
- 過剰・不合理な要求(「毎日電話で報告しろ」「他の利用者より手厚くしろ」など)
- 性的な言動
利用者が障害の特性から行動コントロールが難しい場合もあり、「ハラスメントなのか、障害特性なのか」の判断が難しい場面があります。
ただし、職員が傷つくことには変わりはありません。「障害があるから仕方ない」と我慢させることは、職員の安全を守る観点から問題があります。
利用者からのハラスメントへの対応方針
厚生労働省は2020年以降、介護現場でのカスタマーハラスメント対応についての指針等を公表しています。生活介護でも同様の視点が参考になります。
- 利用者・家族への対応方針を事業所として明文化しておく
- 職員が一人で抱え込まず、管理者・チームで対応する体制をつくる
- 暴力・暴言が続く場合は、契約の解除も含めて検討できることを職員に知らせておく
- 行為を記録しておく(日時・内容・対応した職員名)
「利用者が相手だから報告しにくい」という心理が職員にある場合は、研修で「報告することは正しいことだ」と伝えることが大切です。
研修の進め方と内容
ハラスメント防止の研修は年1回以上の実施が求められています(解釈通知より)。
研修の内容として、次のものが含まれるとよいでしょう。
- ハラスメントの定義と種類:何がハラスメントに当たるかを具体例で理解する
- 事業所の方針と相談窓口の確認:「うちの事業所はこう対応する」を伝える
- ケーススタディ:実際に起きそうな場面を例に、どう対応するかを考える
- 利用者・家族からのハラスメントへの対応:生活介護特有の課題を扱う
- 報告・相談の流れの確認:何かあったときの手順を職員全員で確認する
研修後は、参加者名簿・研修内容・日時を記録として残します。
方針(ハラスメント防止規程)に書くべき内容
方針の明確化として、「ハラスメント防止規程」や「職場ハラスメント対応指針」を作成しておくと、運営指導でも示しやすくなります。
書くべき内容の例は次のとおりです。
- 事業所としての基本方針(ハラスメントは絶対に許さない)
- ハラスメントの定義と種類
- 相談窓口の設置と担当者
- 相談があった場合の手続き(事実確認・対処・プライバシーの保護)
- 行為者への対応(懲戒処分の方針)
- 相談者・被害者への不利益扱い禁止
- 研修の実施計画
運営指導で確認されるポイント
運営指導では、ハラスメント防止について次の書類を確認されることがあります。
- ハラスメント防止に関する方針・規程
- 相談窓口の設置状況(職員への周知)
- 研修の実施記録(参加者名簿・研修内容・日時)
「方針はあるけれど、職員に伝えていない」「相談窓口があるが、職員が知らない」という状態は、措置を講じているとは言えません。「知っている」という状態を作ることが重要です。
まとめ
- 生活介護のハラスメント防止の義務は省令第93条で準用される第33条の2が根拠
- セクハラ・パワハラの防止措置(方針明確化・相談窓口・研修等)が義務
- 生活介護では利用者・家族からのハラスメントへの対応方針も必要
- 研修は年1回以上、参加記録を残す
- 方針・相談窓口・研修の記録の3つが運営指導の確認対象
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