通所介護(デイサービス)の損益分岐点は、稼働率65〜75%程度が目安になる。

通所介護(デイサービス)の損益分岐点は、稼働率65〜75%程度が目安になる。 福祉事業の開業と運営

通所介護(デイサービス)の損益分岐点とは、収入と支出が等しくなる利用者数(または稼働率)のことです。定員20名・6〜7時間・要介護度構成が平均的な事業所では、おおむね稼働率65〜75%程度が損益分岐の目安になります。ただし、人件費・家賃・加算の取得状況によって大きく変わります。

この記事では、通所介護の損益分岐点の考え方と、稼働率が変わったときに収益がどう変わるかを整理します。

損益分岐点は「月の固定費÷1人あたりの粗利」で計算する

損益分岐点の基本的な考え方は次のとおりです。

  • 固定費:人件費・家賃・リース料など、利用者数に関わらず毎月かかる費用
  • 変動費:食材費・消耗品など、利用者数に比例して増える費用
  • 損益分岐点の利用者数=月の固定費 ÷(1人1日あたりの収入 − 1人1日あたりの変動費)

通所介護は人件費・家賃の割合が高く、固定費が大きい事業です。一方で食材費など変動費はそれほど大きくないため、「利用者が増えるほど利益が増える」構造になります。ただし、利用者が増えると職員を増やす必要があるため、人件費が段階的に増える点にも注意が必要です。

稼働率が1%変わると月収入が約1.7万円変わる(定員20名の場合)

通常規模型・6〜7時間・その他の地域(単価10.00円)・要介護度構成平均(加重平均約729単位)・入浴介助Ⅰ・送迎Ⅱで、定員20名の事業所の月収入を稼働率別に試算すると次のとおりです(月22日営業の場合)。

稼働率別の月収入(基本+加算、処遇改善加算除く)の目安(定員20名・月22日営業)
稼働率 1日の利用者数 月収入の目安 前の稼働率比
50% 10名 193万円程度 —
60% 12名 232万円程度 +39万円
70% 14名 271万円程度 +39万円
75% 15名 290万円程度 +19万円
80% 16名 309万円程度 +19万円
85% 17名 329万円程度 +19万円
90% 18名 348万円程度 +19万円
100% 20名 386万円程度 +38万円

当方の計算(通常規模型・6〜7時間・単価10.00円・加重平均基本報酬729単位・入浴介助加算Ⅰ40単位・送迎加算Ⅱ往復108単位・処遇改善加算除く・月22日の場合)。処遇改善加算の算定有無によって収入は変わります。

稼働率10%(2名)の差で月約39万円の収入差があります。開業初期に稼働率50〜60%の段階では、固定費を賄えるかどうかが経営の安定性を左右します。

人件費が損益分岐点を左右する最大の要素

通所介護の費用のうち、最も大きな比率を占めるのが人件費です。人員基準で必要な職種(管理者・生活相談員・看護職員・機能訓練指導員・介護職員)の詳細は、通所介護の人員基準の記事でまとめています。

定員20名の事業所で最低限の配置をした場合、常勤換算で5〜7名程度が必要になります。1人あたりの人件費(給与・社会保険・各種手当)が月25〜30万円とすると、人件費合計は月125〜210万円程度になります。

月の支出(人件費込み)と損益分岐点の目安(定員20名の場合)
費用項目 月額目安
人件費(職員5名・1人30万円) 150万円
固定費(家賃・光熱費・システム等) 48万円
月の支出合計 198万円程度

月の支出が198万円の場合、収入と支出が均衡する損益分岐点は、先ほどの収入表から稼働率50〜60%の間になります。稼働率60%(月収入232万円)では月34万円程度の黒字、稼働率50%(月収入193万円)では月5万円程度の赤字という計算になります(簡易計算・処遇改善加算込みの場合は黒字になる利用者数が変わります)。

稼働率は70〜80%台を目標とする事業所が多い

通所介護の稼働率(定員に対する月平均利用者数の比率)は事業所によって大きく異なります。一般的な目安として、稼働率70〜80%台を目指す事業所が多いとされます。上記の試算のとおり、稼働率60%台では損益分岐点に近い状態になる事業所が多く、80%台を安定的に維持できると収益が確保しやすくなります。

開業後3〜6か月は稼働率が低い時期が続く

新規開業の通所介護では、開業直後から定員いっぱいの利用者が来ることはほとんどありません。利用者の確保には、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)への営業・地域への認知浸透が必要で、定員の50〜60%程度に達するまでに3〜6か月程度かかる事業所が多いとされています。

この期間の赤字分が運転資金として必要になります。定員20名・稼働率50%・月の支出198万円の場合、月5万円程度の赤字になります。6か月で計30万円の赤字補てんが必要な計算です。実際は開業時の準備費用(家賃数か月分・採用費など)も加算されるため、余裕を持った運転資金が必要です。

損益分岐点を下げるための方法

損益分岐点を下げる(少ない利用者数でも黒字になる)ためにできることは次の3つです。

①固定費を下げる:家賃・人件費・リース費用を見直します。既存の建物を活用して改装費・家賃を抑える、兼務を増やして職員数を最小化するなどが考えられます。ただし人員基準は満たす必要があります。

②1人あたりの収入単価を上げる:加算の取得を増やします。入浴介助加算・個別機能訓練加算・サービス提供体制強化加算などを積み重ねることで、利用者1人あたりの収入が増えます。たとえば入浴介助加算Ⅰ(40単位)と送迎加算Ⅱ(往復108単位)を取得すると、1人1日あたり1,480円(単価10.00円)の収入が増えます。

③要介護度の高い利用者を確保する:要介護1と要介護5では基本報酬単位数が577対944で1.6倍の差があります(通常規模型・6〜7時間)。要介護度の高い中重度者ケア体制加算(45単位/日)も活用できます。


自事業所の稼働率・要介護度構成・加算の組み合わせで損益分岐点を確認したい場合は、当サイトの収支シミュレーターをお使いください。

→ 通所介護(デイサービス)の開業 収支シミュレーター

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました