データマネジメント試験(仮称)の重点分野は、「データマネジメント」「データ分析・データ利活用」「AI利活用」の3つです。IPAが2026年8月に公表したシラバス(案)Ver.0.1では、これら3分野を「目標とする知識(重点分野)」と位置づけています。試験全体の科目A(48問)のうち、重点3分野が7割以上を占める計算になります。
この記事では、シラバス(案)に記載された分野構成と各分野の具体的な内容、および勉強の優先順位を整理します。なお、合格基準・配点・分野別の出題数はIPAが公表していないため、この記事での「割合」はシラバスの分類に基づくものであり、本番試験での実際の出題数とは異なる場合があります。
試験の構成は科目A(48問)と科目B(12問)の2科目。
IPAが公表している改定案(2026年3月版)によると、データマネジメント試験(仮称)の構成は次のとおりです(出典:IPA「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」2026年3月)。
| 科目 | 内容 | 問題数 |
|---|---|---|
| 科目A | データマネジメント・データ分析・AI利活用などの知識 | 48問 |
| 科目B | データ活用の実務技能(ケース問題) | 12問 |
| 合計 | 試験時間120分・CBT方式 | 60問 |
科目Aは多肢選択式の知識問題、科目BはITパスポートやデータマネジメントの知識を実際の業務場面に当てはめて判断するケース問題形式です。科目Bは問題文が長く、状況設定や表を読んで最適な対応を選ぶ形式になる見込みです(IPA公表のサンプル問題2問を参照)。
科目Aの分野構成。重点3分野と出題範囲3分野に分かれる。
科目A(48問)の出題分野は、シラバス(案)Ver.0.1に基づくと次の6つに分かれます。
| 分野 | 位置づけ | 項目数 |
|---|---|---|
| データマネジメント | 重点分野(最多) | 5項目 |
| データ分析・データ利活用 | 重点分野 | 3項目 |
| AI利活用 | 重点分野 | 4項目 |
| デジタル技術(データベース) | 出題範囲 | 2項目 |
| セキュリティ | 出題範囲 | 3項目 |
| 倫理・コンプライアンス | 出題範囲 | 4項目 |
「重点分野」と「出題範囲」の違いは、シラバス(案)内での記載の深さにあります。重点3分野は用語例・概要・目標スキルが詳細に記載されているのに対し、出題範囲の3分野は項目名と簡単な説明のみです。これはITパスポートや応用情報技術者試験でも見られる構成で、重点分野から多く出題される傾向を示しています(ただし分野別の出題数はIPAが公表していません)。
重点分野①:データマネジメント(5項目・最多)。
3つの重点分野のうち、シラバス上の項目数が最多なのがデータマネジメントです(大分類2・中分類8の5項目)。この試験の名称そのものであり、中心的な分野です。
5項目の内容は次のとおりです(出典:IPA「データマネジメント試験(仮称)シラバス(案)Ver.0.1」2026年8月)。
| 項目 | 主な用語・内容 |
|---|---|
| データマネジメントの目的と考え方・機能 | データドリブン経営、データ資産、データガバナンス、データライフサイクル、DIKWモデル、マスターデータ、SSOT(信頼できる唯一の情報源)、データスチュワード |
| データライフサイクル | 生成・保管・処理・活用・廃棄の5段階。各段階でのデータの取り扱い |
| データガバナンス | CDO(最高データ責任者)、DMO(データマネジメントオフィス)、データオーナー、データスチュワード。組織構造(中央集権型・分散型・連邦型) |
| データ品質管理 | 品質特性(正確性・完全性・一貫性・信憑性・機密性)、データクレンジング、データプロファイリング。欠損値・外れ値・重複・表記ゆれの処理 |
| メタデータ管理 | ビジネスメタデータ・テクニカルメタデータ・オペレーショナルメタデータの3分類。データカタログ、データリネージ、データ辞書 |
ITパスポートや基本情報技術者試験の学習経験がある場合、「データベース」「セキュリティ」「情報倫理」は学んだことがあるはずです。しかし「データガバナンス」「メタデータ管理」「データライフサイクル」はこの試験で初めて体系的に学ぶ人が多い領域です。DMBOK(Data Management Body of Knowledge)はデータマネジメントの業界標準の知識体系として広く参照されており、その概念を押さえておくと用語の理解が早まります。
特に押さえておきたい概念はDIKWモデルです。データ(Data)→情報(Information)→知識(Knowledge)→知恵(Wisdom)という4段階の階層構造を表すモデルで、「なぜデータをただ集めるだけでは不十分なのか」という問いへの答えがこのモデルに詰まっています。公式のサンプル問題にも出題されており、シラバス(案)の用語例にも明記されています。
重点分野②:データ分析・データ利活用(3項目)。
2つ目の重点分野はデータ分析・データ利活用です(中分類9の3項目)。データを使って何をするかという実務寄りの内容が中心です。
| 項目 | 主な用語・内容 |
|---|---|
| データ基盤 | データレイク・データウェアハウス(DWH)・データマートの違い。ELT/ETL、データファブリック、BIツール |
| データ分析・データ利活用 | データの種類(構造化・非構造化・時系列・ビッグデータ)。統計(正規分布・回帰分析・相関分析・仮説検定)。可視化(箱ひげ図・ヒートマップ・パレート図) |
| 業務分析 | 線形計画法、需要予測、クラスタ分析、ヒストグラム、散布図 |
この分野で注意が必要なのは「相関と因果の違い」と「バイアス(選択バイアス・情報バイアス・交絡バイアス)」です。「AとBが相関しているからAがBの原因だ」という誤った推論を見抜く力が問われます。また、データ基盤の「データレイクとデータウェアハウスの違い」は公式サンプル問題にも登場する頻出テーマです(データレイクは加工前の生データをそのまま格納、DWHは分析用に整理・統合されたデータを格納、という役割の違い)。
統計の分野(正規分布・回帰分析など)は、DS検定(データサイエンティスト検定)と出題範囲が重なる部分があります。統計の基礎を別の資格で学んでいる人には比較的なじみやすい内容です。
重点分野③:AI利活用(4項目)。
3つ目の重点分野はAI利活用です(中分類10の4項目)。2026年に追加・強化された分野で、生成AIやAIエージェントを含む現代的な内容が盛り込まれています。
| 項目 | 主な用語・内容 |
|---|---|
| AI利活用の原則及び指針 | 人間中心のAI社会原則(内閣府)、AI-readyな社会、AI事業者ガイドライン(経済産業省) |
| 識別AI利活用 | 目的(仮説検証・知識発見・原因究明・判断支援・活動代替)。教師あり学習(予測)・教師なし学習(グルーピング)・強化学習(意思決定支援) |
| 生成AI利活用 | マルチモーダルAI、RAG(知識連携)、プロンプトエンジニアリング、システムプロンプト。文章の添削・要約・コード生成・画像生成など活用例 |
| AIエージェント利活用 | AIエージェントの自律性と人間の関与(最終承認・例外処理)、ガードレール、ハーネスエンジニアリング |
AI利活用の分野は「AIを使ってビジネス課題をどう解決するか」という実務的な視点が問われます。識別AI(分類・予測・グルーピング)と生成AI(テキスト・画像・コードの生成)の違い、RAGとは何か、ハルシネーション(AIによる誤情報の生成)への対処、といった内容が出題されます。
「人間中心のAI社会原則」は内閣府が策定したAIに関する基本原則であり、「AI事業者ガイドライン」は経済産業省が公表しています。これらの名称と概要(透明性・公平性・安全性・プライバシー保護などの原則)は押さえておく必要があります。
出題範囲の3分野(データベース・セキュリティ・倫理)は基礎を確認する。
重点分野以外の3分野は、ITパスポートや情報セキュリティマネジメント試験の学習内容と重なる基礎的な内容が多いです。すでにそれらの資格を持っている場合は確認程度の学習で対応できます。
| 分野 | 主な内容 |
|---|---|
| デジタル技術(データベース) | データアーキテクチャ、データモデル(E-R図・UML)、概念・論理・物理モデルの違い |
| セキュリティ | 機密性・完全性・可用性。情報セキュリティポリシー、アクセス権管理、リスク評価・コントロール、インシデント対応 |
| 倫理・コンプライアンス | データのねつ造・改ざん・盗用。AI倫理・AIガバナンス、ハルシネーション。著作権法・不正競争防止法・個人情報保護法(匿名加工情報・GDPR) |
倫理・コンプライアンスの分野は項目数こそ4つありますが、各項目の内容は比較的シンプルです。「AI出力にハルシネーションが含まれる可能性があることを知っていて、確認する姿勢を持っているか」「個人情報保護法の匿名加工情報(データを匿名化したとはどういう状態か)がわかるか」「GDPRとは何か」といった知識が問われます。
科目B(12問)はデータ活用の実務判断を問う。
科目B(12問)は4つの大項目に分かれています(出典:IPA「データマネジメント試験(仮称)シラバス(案)Ver.0.1」2026年8月)。
| 大項目 | 小項目数 | 問われる技能 |
|---|---|---|
| データの確認・取扱い | 6項目 | データの定義確認、品質確認、機密区分、メタデータ整備、AI利用時の注意、非構造化データの取扱い |
| データ活用の実施 | 5項目 | データの選定・取得、分析の実施、洞察の導出、検証と改善、教訓の共有 |
| データ活用環境の形成 | 2項目 | データ活用の意義の普及、協働によるデータ共有 |
| 技術動向への対応 | 3項目 | 新技術の動向把握、PoCの企画・実施、結果の関係者への提案 |
科目Bのケース問題は「あなたがある会社のデータ担当者だとして、次の状況でどう対応するか」という形式が予想されます(公式サンプル問題2問の形式を参照)。具体的には「データ品質に問題を発見したとき、誰に何を報告するか」「AIが生成した分析結果を業務判断に使う前に何を確認するか」といった判断問題です。
科目Bの対策として、科目Aの知識を「実際の業務でどう使うか」という視点で理解しておくことが効果的です。「データスチュワードの役割は何か」を暗記するだけでなく、「品質問題が起きたとき、データスチュワードとデータオーナーとIT部門のそれぞれが何をする立場なのか」まで理解しておく必要があります。
勉強の優先順位。重点3分野を先に固め、出題範囲3分野は確認で仕上げる。
分野の優先順位を決めるなら、次の順番が合理的です。
- データマネジメント(最優先):試験の中心で項目数が最多。DIKWモデル・データガバナンス・メタデータ管理・データ品質管理の4つを最初に理解する
- データ分析・データ利活用:データレイク・DWHの違い、統計の基礎概念(相関・回帰・バイアス)を整理する
- AI利活用:識別AIと生成AIの違い、RAG・ハルシネーション・AI倫理の基本を押さえる
- 倫理・コンプライアンス:個人情報保護法(匿名加工情報・GDPR)と著作権法の要点を確認する
- セキュリティ・データベース:ITパスポート等の既存知識を確認する程度でよいケースが多い
- 科目B:科目Aの知識が固まった段階でサンプル問題を解き、「業務場面での判断」の視点を養う
この試験はITパスポートより発展的な内容(データガバナンス・メタデータ管理・データ分析・AI利活用)を扱う試験として設計されており、ITパスポートで学んだ「セキュリティ・データベース・AI」の知識は本試験でも基礎として使えます。一方で「データガバナンス」「メタデータ管理」「データライフサイクル」はこの試験固有の内容なので、そこを上乗せすることが合格への道筋です。
シラバスはまだ「案」の段階。改訂があれば内容が変わる可能性がある。
2026年10月時点のシラバスはVer.0.1(案)であり、正式版ではありません。IPAの公表スケジュールによると、2027年度に第1回試験が実施される見込みですが、合格基準・受験料・申込方法はまだ公表されていません(IPA「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」2026年3月・公表時の記載内容による)。
シラバスが改訂されれば、分野構成や重点分野の範囲が変わる可能性があります。今後の動向はIPAの公式サイト(shiken.ipa.go.jp)の「シラバス・出題範囲」のページで確認できます。
分野ごとに繰り返し問題を解けるツール。
分野ごとに絞って演習できるAI問題集を公開しています。科目Aの6分野・難易度3段階を選んで問題を解き、模試モードでは科目A+B混合の60問に取り組めます。
問題はシラバス(案)の用語例をもとにAIが生成するため、毎回異なる問題が出ます。1日3問まで無料で使えます。
まとめ
- 科目A(48問)の重点分野は「データマネジメント」「データ分析・データ利活用」「AI利活用」の3つ(シラバス(案)Ver.0.1・IPA公表)
- データマネジメントが最多(5項目)。DIKWモデル・データガバナンス・メタデータ管理が核心
- 科目B(12問)はデータ活用の実務判断を問うケース問題。4大項目16小項目
- 勉強の優先順位は重点3分野→倫理・法規→セキュリティ・データベース→科目Bの順
- シラバスはVer.0.1(案)。合格基準・受験料・申込方法は未公表(2026年10月時点)


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