放デイのBCP(業務継続計画)、何が義務で何を書けばよいか。

放課後等デイサービス・児童発達支援のBCP(業務継続計画)研修・訓練の義務と内容 福祉事業の開業と運営

放デイのBCPは、研修と訓練が年1回以上の義務。

放課後等デイサービス(放デイ)のBCP(業務継続計画)には、研修と訓練が義務です(指定通所支援の人員及び設備及び運営に関する基準 第38条の2。児童発達支援も同じ)。

  • 研修:年1回以上(新規採用時は別に実施することが望ましい)
  • 訓練:年1回以上

また、BCP(業務継続計画)を策定していない事業所は、1日あたり所定単位数の1%を減算するペナルティが発生します(こども家庭庁 令和6年度報酬改定)。BCPの策定自体が義務であることに加え、研修・訓練も行わなければなりません。このページでは、放デイのBCPで求められていることを整理します。

BCPには「自然災害」と「感染症」の2種類が必要。

BCPには、想定する危機の種類ごとに2つの計画が必要です。

種類 主な想定リスク 参考ガイドライン
自然災害BCP 地震・水害・台風・土砂崩れなど 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(令和3年3月)
感染症BCP 新興感染症・インフルエンザ等による職員不足・事業所閉鎖 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」(令和2年12月)

2種類を別々に策定する必要はなく、1つの計画書に「自然災害への対応」と「感染症への対応」をそれぞれ章として盛り込む形でもかまいません(当方の考え)。運営指導では、両方に相当する内容が記載されているかを確認されます。

BCPに書くべき内容(自然災害)

厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(令和3年3月)は、以下の内容を整理するよう求めています。

項目 内容の例
被災シナリオ 地震・水害・台風など、地域の特性に合わせた想定
優先業務 被災時にまず継続すべき業務(利用者の安全確保・保護者への連絡・服薬管理等)
体制・指揮命令 管理者不在時の代行者・連絡先一覧
職員の参集基準 震度・警戒レベルごとの出勤・参集の判断
設備・物品の確保 非常用食料・水・医薬品・停電対応(医療的ケア児向けの電源確保を含む)
関係機関との連携 保護者・学校・市区町村・居宅介護支援との連絡体制
事業再開の目安 被災後にいつ・どの業務から再開するかの基準

放デイならではのBCP課題

放デイのBCPには、高齢者施設や一般の通所介護と異なる課題があります。

送迎中の被災

放デイは学校への迎えと自宅への送りを行う送迎が基本です。送迎中に地震・突風・水害が起きた場合、車内に利用者がいるという状況での対応が必要です。

BCPに記載しておくと対応しやすい事項(当方の案):

  • 送迎担当職員が被災した場合の事業所への連絡方法
  • 車内に利用者がいる状態での避難先・待機場所
  • 送迎中に連絡が取れなくなった場合の保護者への連絡手順
  • 緊急時の代替ルート・迂回手順

利用者の障害特性への対応

放デイの利用者は、状況の変化を理解しにくい・指示に従うことが難しい・パニックになりやすいなどの特性を持つ場合があります。避難誘導の際に声かけや個別の対応が必要な利用者については、支援計画と連動した避難手順を事前に決めておくことが求められます。

また、医療的ケア(気管切開・人工呼吸器・経管栄養等)が必要な利用者が在籍している場合は、停電・断水時の対応と医療機関への連絡体制を別途整理しておく必要があります。

保護者・学校との連絡体制

被災時には保護者への連絡が不可欠ですが、電話が混雑・不通になるケースがあります。BCPでは「保護者への連絡は○○を使って行う(緊急連絡アプリ・LINEグループ等)」を明記しておくと現場の混乱が減ります。

また、学校から送迎で受け取った後に被災した場合、学校への連絡手順も必要です。学校側のBCPと整合しているかを事前に確認しておくことが望ましい(当方の考え)。

研修の内容(年1回以上)

BCP研修は、年1回以上の実施が義務です。研修では次の内容を確認します。

  • BCPの内容(優先業務・役割分担・連絡先一覧)の読み合わせ
  • 自然災害BCP・感染症BCPのそれぞれの対応の違い
  • 被災時の指揮命令の流れ(管理者不在時の代行者確認)
  • 非常用物品・備蓄の場所と使い方の確認
  • 前回の訓練や実際の被災対応から見えた課題の振り返り

新規採用職員については、採用時に別途BCPの内容を伝えることが望ましいとされています(解釈通知)。年1回の定期研修とは別に、入職時のオリエンテーションに組み込む形が実務上は対応しやすい(当方の案)。

訓練の実施(年1回以上)

BCP訓練は年1回以上が義務です。感染症対策の訓練(年2回以上)や避難訓練(消防法の義務)とは別にカウントが必要です(「BCPの訓練は一般的な避難・救出訓練とは異なる」という自治体の指摘事例があります)。

訓練形式の例(当方の案):

形式 内容 目安時間
机上訓練(シナリオ型) 「震度6強の地震が発生した場面で、利用者が3名いる。次に何をするか」といったシナリオを職員で判断・議論する 30〜60分
参集訓練 非番・夜間帯に被災したと仮定し、誰が・どの経路で・どのくらいの時間で参集できるかを確認する 実施日を告知して記録を残す
連絡訓練 緊急連絡網(アプリ・電話)を実際に使って全員への連絡が届くか確認する 15〜30分

訓練で見つかった「連絡が届かない人がいた」「役割が不明確だった」「備蓄物品の場所を知らなかった」という課題は記録に残し、次回のBCP改訂に反映します。

記録の保存

研修・訓練の記録は完結から2年間の保存が必要です(指定通所支援基準第37条第2項)。記録に残す項目:実施日時・参加者名・実施した内容・見えた課題・対応の担当者名。

BCPそのものについても、見直した記録(見直し日・変更箇所)を残しておくと、運営指導の際に「BCPが実際に機能しているか」の確認に対応しやすくなります。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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