訪問看護は、主治医の指示なしには行うことができません。この原則は基準に明記されており、職員全員が正確に理解しておく必要があります。
この記事では、訪問看護指示書の種類・有効期間・保存義務を整理したうえで、研修としてどの点を職員に伝えればよいかをまとめます。
訪問看護指示書がなければ、保険算定はできない
訪問看護は主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて実施します(指定居宅サービス等の事業の人員及び運営に関する基準 第70条の準用)。
指示書のない訪問看護は、介護保険・医療保険のいずれにおいても保険算定の根拠を失います。指示書の更新忘れや、有効期間を超えた状態での訪問は、算定の取り消しと返還請求の対象になる可能性があります。研修でこの点を職員全員に明確に伝えることは、事業所のリスク管理として必須です。
訪問看護指示書の種類は3種類あります。通常の訪問看護指示書・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書です。それぞれ対象・有効期間・交付の条件が異なります。
通常の訪問看護指示書の有効期間は6か月以内
通常の訪問看護指示書の有効期間は、発行日から6か月以内です。
介護保険の場合は指定居宅サービス等の事業の人員及び運営に関する基準第70条(準用)、医療保険の場合は診療報酬の訪問看護指示料の算定要件として、6か月以内が定められています。有効期間中であっても、主治医が指示内容の変更が必要と判断した場合は新たな指示書の交付が必要です。
実務上の注意点として、更新のタイミングがずれやすいのは次の場合です。
- 5か月で更新するクリニックと、6か月で更新するクリニックが混在している
- 利用者が入院・退院を繰り返し、指示書の期間が不規則になっている
- 主治医が複数いる利用者の場合、どの医師の指示書が有効か確認が必要になる
事業所として、利用者ごとに有効期限を一覧管理する仕組みを作っておくことが重要です。研修では「自分の担当利用者の指示書の有効期限を確認する習慣」を伝えます。
特別訪問看護指示書の有効期間は14日以内、月1回原則
急性増悪・退院直後・終末期などで頻回の訪問が必要なときに主治医が交付するのが、特別訪問看護指示書です。
有効期間は発行日から14日以内(最長14日)で、原則として月1回の交付です。ただし、次の2つの状態にある利用者については、月2回の交付が認められています。
- 気管カニューレを使用している状態
- 真皮を超える褥瘡(NPUAP分類でステージIIIまたはIV相当)のある状態
出典:診療報酬の特別訪問看護指示加算の算定要件(厚生労働省告示)
特別訪問看護指示書が出ている期間は、1日に複数回訪問することができます(介護保険では1日2回・2時間以上の間隔)。通常の訪問看護計画書に「特別訪問看護指示あり」の状態を明記し、担当する全職員がその事実を把握していることが求められます。
研修で伝えること:特別訪問看護指示書が出ている利用者の情報を職員間で共有する手順と、14日の期限切れを誰がどのように管理するかを確認します。
精神科訪問看護指示書は、精神科の主治医が交付する
精神科訪問看護(診療報酬の精神科訪問看護・指導料)を算定する場合は、精神科を標榜する保険医療機関の精神科担当医師が交付した精神科訪問看護指示書が必要です。
この指示書は、内科や外科などの主治医が交付する通常の訪問看護指示書とは別物で、精神疾患の診断と精神科医の判断が介在しています。精神科訪問看護を提供しているステーションでは、2種類の指示書(精神疾患以外の一般的な医療ニーズに対応する通常の訪問看護指示書と、精神科訪問看護指示書)が利用者によって異なることを職員全員が理解している必要があります。
指示書の保存義務は5年間
受け取った訪問看護指示書の保存期間は、完結の日から5年間です。
「完結の日」とは、有効期間の終了日です。たとえば2026年10月から2027年3月まで有効な指示書であれば、2027年3月が完結の日となり、そこから5年間(2032年3月まで)保存する必要があります。
保存形式の指定はなく、紙のまま保存するか、スキャンして電子保存するかは事業所の運用に委ねられています。ただし、運営指導の際に求められた場合に速やかに提示できる状態であることが必要です。5年分の指示書が無秩序に混在していると、必要な書類を探し出せないリスクがあります。利用者別・年月順にファイリングするか、電子保存の場合はファイル名のルールを決めておくことを研修で伝えます。
指示内容と実際の訪問看護の内容を合わせる
訪問看護は、医師の指示の範囲内で行うことが前提です。指示書に記載された「訪問看護の指示事項」(処置の内容・回数・特記事項など)と、実際に行っている訪問看護の内容が乖離していた場合、それは医師の指示を超えた行為とみなされる可能性があります。
定期的に指示書の記載内容と訪問看護計画書・訪問看護記録書を照合し、指示の範囲と実施内容が整合しているかを確認する習慣が重要です。利用者の状態が変わって新たな処置が必要になった場合は、主治医に連絡して指示を得るか、新しい指示書の交付を依頼します。
研修で伝えること:「指示があるからやる・指示がなければ主治医に確認してからやる」の原則と、その判断を誰がどのタイミングで行うかの事業所ルールを共有します。
指示書がない状態での訪問が発生しやすい場面
実務では、意図せず指示書のない状態で訪問してしまうケースが生じることがあります。特に注意が必要な場面を以下に整理します。
有効期限を過ぎた後に気づく
担当職員が交代した・管理者が確認を忘れた・クリニック側の発行が遅れた、などの理由で期限切れの指示書のまま訪問してしまうケースです。対策は、月初など定期的なタイミングで担当者が全利用者の指示書の有効期限を確認するルールを設けることです。
利用者が入院から退院したとき
入院中は在宅の訪問看護指示書は停止(入院中は入院医療機関の管理下になる)し、退院後に再開する場合は新たな指示書が必要です。退院調整のタイミングで指示書の手配が追いつかず、退院当日に訪問予定があるのに指示書が間に合っていない、という状況が起きることがあります。入院情報を把握したら早めに主治医またはケアマネジャーと連携して指示書の交付時期を確認します。
主治医が変更になったとき
利用者が転院・転医した場合、旧主治医の指示書の有効期間内であっても、新しい主治医に改めて指示書を発行してもらう必要があります(旧主治医はもはや担当医でないため)。変更の情報を把握したら、速やかに手配します。
研修として扱う内容のまとめ
以上を踏まえて、訪問看護ステーションの研修(テーマ「医師の指示と訪問看護指示書」)として職員に伝える内容のポイントをまとめます。
| 項目 | 研修で伝える内容 |
|---|---|
| 指示書の種類 | 通常・特別・精神科の3種類。それぞれ対象・有効期間・交付要件が異なる |
| 有効期間の管理 | 通常6か月以内・特別14日以内(月1回原則)。担当者が期限を確認する仕組みを共有 |
| 指示書がない状態での訪問 | 保険算定の根拠を失う。期限切れ・入院退院時・主治医変更時に特に注意 |
| 指示内容との整合 | 指示の範囲内で訪問看護を行う。指示を超える場合は事前に主治医に確認 |
| 保存義務 | 完結の日から5年間保存。利用者別・年月順の整理が必要 |
この研修テーマは、開業直後から全職員を対象に実施することを推奨します。特に訪問看護の経験が浅い職員や、他のサービス種別(通所・施設)から転職してきた職員は、指示書管理の重要性を知らないまま業務に入ってしまうことがあります。
法定研修キット(訪問看護版)で研修資料・テストを管理する
「医師の指示と訪問看護指示書」のテーマは、訪問看護ステーション向け法定研修・訓練キット( https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-kango/ )の12テーマのひとつとして収録しています。研修資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案をブラウザで管理できます。虐待防止テーマは無料で利用できます。
この記事で参照した根拠
- 指定居宅サービス等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第70条・第67条準用
- 診療報酬の特別訪問看護指示加算の算定要件(厚生労働省告示)
- 精神科訪問看護・指導料の算定要件(診療報酬点数表)
記事の内容は令和6年度(2024年度)時点の基準・告示に基づいています。改定があった場合は内容が変わる場合があります。


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