生活介護の虐待防止研修、義務の内容と進め方。

生活介護の虐待防止研修 義務の内容と進め方 生活介護

生活介護の事業所には、虐待防止について3つの義務があります。研修の実施・委員会の開催・担当者の設置で、いずれも指定障害福祉サービス等の基準省令(以下、基準省令)に定めがあります。

この記事では、義務の内容・根拠・頻度・進め方を、基準省令と国の解釈通知をもとに整理します。

虐待防止の義務は3つある

生活介護の基準省令は、虐待防止について次の3つを義務としています。

  1. 虐待防止委員会を定期的に開催すること
  2. 全従業者を対象とした研修を定期的に実施すること
  3. 虐待防止の担当者を置くこと

これらは、居宅介護の条文(第40条の2)を第125条で準用する形で生活介護に適用されています。条文の「指定居宅介護事業所」などは、生活介護の事業所として読み替えます。

根拠条文と解釈通知

基準省令(第40条の2・第125条で準用)は、次のとおり定めています。

  • 指定居宅介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること
  • 指定居宅介護事業所において、従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
  • 前二号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと

「定期的に」の具体的な頻度は、国の解釈通知(障発第1206001号・平成18年12月6日付け・現行版は改正を含む)で次のように示されています。

義務 頻度(解釈通知)
虐待防止委員会 少なくとも年1回
虐待防止研修 年1回以上(新規採用時には必ず実施)
担当者設置 常時(担当者を決めて置く)

研修は年1回以上、新規採用時にも必ず行う

解釈通知は、研修について次のように示しています。

職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定居宅介護事業所の虐待防止委員会が作成した研修プログラムを実施し、定期的な研修を実施(年1回以上)するとともに、新規採用時には必ず虐待防止の研修を実施することが重要である。

(出典:厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」障発第1206001号)

年1回以上の定期研修に加え、新しく職員を採用したときにも必ず実施します。入職から研修までの間隔が長くなると、新入職員が虐待防止の知識を持たないまま業務に就く期間が生じます。採用のたびに実施することが義務として明確に示されている点は、年1回の定期研修と同等に重要です。

委員会は少なくとも年1回

虐待防止委員会の開催頻度は、解釈通知で「少なくとも年1回」とされています。テレビ電話などのオンラインツールを活用して開催することも認められています(条文に明記)。

委員会は、開催のたびに議事録を作成し、内容を従業者に周知徹底することが求められます。「開いたが記録を残さなかった」「記録を出席者だけ持っているが他の職員に伝えていない」という状態は義務の趣旨を満たしていません。

委員会の主な議題としては、次のような事項が考えられます。

  • 過去1年間の虐待・不適切ケアの発生状況の確認
  • 次年度の研修計画の決定
  • 指針・マニュアルの見直し
  • 担当者からの報告と課題の共有

生活介護の場で起きる虐待の特徴

障害者虐待防止に関する国の手引きは、サービスの種類ごとに虐待の発生要因を分析しています。その中で、生活介護については「教育・知識・介護技術等に関する問題」が高くなっていることが示されています。

この要因が高いということは、悪意ある行為だけでなく、「知らないまま行っていた」「よかれと思ってしていた」という行為が虐待に当たるケースが多いことを意味します。虐待の定義・具体例・発生しやすい場面を繰り返し学ぶことが、予防につながります。

生活介護の場で特に意識したい場面としては、次のようなものがあります。

  • 日中活動の場面(指示や声かけの仕方)
  • 食事・排泄など身体介護の場面
  • 送迎の車内
  • 職員と利用者が2人きりになる作業中

研修でどんな内容を扱うか

虐待防止研修で扱う内容は、次の4つの領域を網羅することが基本です。

1. 虐待とは何か(定義・種類)

障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)が定める5種類の虐待(身体的・性的・心理的・ネグレクト・経済的)の定義と具体例を確認します。

2. 不適切なケアとの境界

虐待に至らなくても、「不適切なケア」として改善が必要な行為があります。「子ども扱いする呼び方」「急かすような声かけ」なども不適切なケアに含まれます。虐待と不適切なケアの連続性を理解することが、早期発見・予防につながります。

3. 気づいたときの行動(報告・通報)

虐待を発見または疑ったときには、市区町村への通報義務があります(障害者虐待防止法第16条)。通報先・報告ルート・記録の方法を研修で確認しておくことで、実際に起きたときに迷わず対応できます。通報したことを理由に不利益な扱いを受けることはありません(同法第17条)。

4. 発生しやすい状況の把握と予防

職員の疲弊・孤立した状況・不十分な引き継ぎなど、虐待が起きやすい環境要因を確認し、職場として何ができるかを議論します。

担当者に求められること

担当者は、虐待防止の研修・委員会の計画と実施を中心となって進める役割を担います。具体的な業務としては、次のようなことが考えられます。

  • 年間の研修計画・委員会計画の作成
  • 研修の準備・運営と記録の作成
  • 委員会の準備・議事録作成と職員への周知
  • 虐待・不適切ケアの相談窓口
  • 事案が発生した際の初動対応と管理者への報告

担当者を決めることは義務ですが、担当者1人に任せきりにする体制は持続しにくくなります。管理者・サービス管理責任者とセットで体制を設計し、担当者が休んだときの代替も決めておくことが実務上は安全です。

記録と保存期間

虐待防止に関して作成した記録は、基準省令の規定(居宅介護の第34条第2項・第125条で準用)に基づき、完結の日から5年間保存する必要があります。保存が必要な主な書類は次のとおりです。

  • 研修実施記録(日時・参加者・内容)
  • 参加者名簿
  • 虐待防止委員会の議事録
  • 虐待・不適切ケアの発生記録(発生した場合)

5年間保存が必要なため、年度ごとにまとめてファイリングする、または電子データとしてバックアップを取る仕組みを整えておくことが必要です。

まとめ

生活介護の虐待防止に関する義務は、研修(年1回以上)・委員会(少なくとも年1回)・担当者設置の3つです。新規採用時の研修も義務として解釈通知に明記されており、定期研修と同じ位置づけで取り扱います。

生活介護では「教育・知識・介護技術等に関する問題」が虐待の発生要因として高くなっている特徴があります。知識の定着と場面ごとの対応を繰り返し確認することが、具体的な予防につながります。

義務のテーマ・回数・根拠の全体像は、別の記事(生活介護の研修は、何が義務で、年に何回か。基準と解釈通知で確かめた一覧。)で確認できます。


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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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