短期入所(ショートステイ)の事業所数は増え続けている一方、1施設あたりの定員は小さい水準にあります。令和7年障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算)では、短期入所の集計対象の平均定員は全体で7人、定員20人以下の施設に絞ると5人でした。
国は、定員が小さい理由そのものは示していません。この記事では、背景として考えられる設備・人員・報酬の定めと、全国の収支の数字を、原典に沿って整理します。
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算)
短期入所には、併設型・空床利用型・単独型の3つの形がある
「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)は、短期入所の事業所を次の3つに分けています。
- 併設事業所:障害者支援施設などと一体的に運営する事業所
- 空床利用型事業所:障害者支援施設などの空いている居室を使う事業所
- 単独型事業所:上の2つ以外の事業所
単独型には、生活介護やグループホームなどの事業所で行う短期入所も含まれます。「単独型=短期入所だけを行う事業所」という意味ではない点に注意が必要です。
出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第115条
単独型の居室は、1室4人以下・1人あたり8平方メートル以上
同じ省令の第117条は、単独型事業所の居室について、「一の居室の定員は、四人以下とすること」「利用者一人当たりの床面積は、収納設備等を除き八平方メートル以上とすること」などを定めています。
例えば定員10人なら、1室4人以下のため居室は少なくとも3室が必要で、居室の床面積は収納設備などを除いて合計80平方メートル以上が必要です。既存の建物の空いた部屋を使う場合でも、この要件を満たす必要があり、確保できる居室の広さと数が、受け入れられる定員の上限を決めます。
出典:省令第171号 第117条
単独型の職員は、利用者6人以下なら1人以上、6人を超えると6人ごとに1人を加える
単独型事業所の生活支援員の数は、第115条第3項で定められています。
- 生活介護やグループホームなどの事業所で行う単独型は、その事業所のサービス提供時間中は、その事業所の利用者と短期入所の利用者を合わせた数で、その事業所の基準に必要な職員を置きます。
- それ以外の時間(夜間など)と、生活介護等の事業所以外で行う単独型は、その日の利用者が6人以下なら1人以上、7人以上なら6人を超えて6人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上を置きます。
利用者が7〜12人の日は2人以上が必要です。宿泊を伴うサービスのため、夜間も職員の配置が必要になり、利用者が少なくても人件費は一定程度かかります。
出典:省令第171号 第115条第3項
全国平均の収支差率は2.3%、定員20人以下の施設では1.2%
令和7年経営概況調査の短期入所の結果は次のとおりです。
| 指標 | 全体 | 定員20人以下 |
|---|---|---|
| 集計施設数 | 337 | 323 |
| 平均定員 | 7人 | 5人 |
| 年の収入 | 8,802千円 | 8,665千円 |
| 収支差(年) | 203千円 | 100千円 |
| 収支差率 | 2.3% | 1.2% |
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算)短期入所。集計は単独型だけでなく、併設型・空床利用型を含みます。
経営主体別では、社会福祉法人(247施設)の平均の収支差率が-1.6%で、赤字でした。
全体平均の収支差は年203千円、月にすると約1.7万円です。平均定員7人の施設で、利用が定員1人分減ると、収入は単純計算でおよそ7分の1(年約126万円)減り、年203千円の収支差を大きく上回ります。定員が小さいほど、1人分の利用の増減が収支に与える影響は大きくなります。
単独型事業所には1日320単位の単独型加算がある
報酬告示は、単独型事業所で短期入所を行った場合に、1日につき320単位の「単独型加算」を定めています(医療型短期入所サービス費などを算定する場合を除く)。
また、利用定員が20人以上であるとして届け出た単独型事業所では、所定単位数の100分の90で算定します(定員超過特例加算を算定している場合を除く)。基本報酬は、例えば福祉型短期入所サービス費(Ⅰ)の区分5で1日784単位です。
出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第7 短期入所
職員の配置の形によって、収支が成り立つ稼働率は大きく変わる
単独型で短期入所を行う場合、職員の配置には大きく2つの形があります。一つは、短期入所のためだけに職員を確保して24時間を回す形です。もう一つは、生活介護やグループホームなどの事業所で行い、その事業所のサービス提供時間中は、その職員と合わせて配置できる形です。
当サイトの短期入所の収支シミュレーターで、短期入所の職員だけで24時間を回す形の初期値(定員6人)を計算すると、稼働率を初期設定の上限(90%)まで上げても赤字になります。同じ定員・同じ稼働率でも、配置の形によって損益分岐は大きく変わるため、開設前に、配置の形ごとの収支を分けて試算しておくことが必要です。
事業所数は、令和3年から約40%増えた
国保連データによると、短期入所の事業所数は令和3年4〜6月の4,688か所から、令和7年1〜3月には6,565か所と、約40%増えています。
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会 第149回 参考資料8)国保連データ。値は各3か月分の平均値。
開設を検討する際には、対象エリアの短期入所の受け入れ状況と、利用者の紹介ルートを事前に確認しておくことが起点になります。
小さな定員は、居室・夜間の人員・薄い収支差を前提にした選択肢
全国の平均定員が小さい背景として考えられるのは、居室の面積と人数の要件、夜間も含めた人員の配置、そして薄い収支差率です。大きな定員にすれば収入の上限は上がりますが、居室の確保と職員の配置にかかる費用も増えます。
小さな定員で始めることは、初期投資を抑え、稼働率を安定させてから規模を考える選択肢の一つです。大切なのは、設定した定員と職員の配置の形で、損益分岐を超える稼働率が現実的に達成できるかを、開設前に数字で確認しておくことです。
短期入所の開業前に、定員・稼働率・職員の配置の形・各種加算を組み合わせた収支の試算が必要な方は、以下のシミュレーターをご利用ください。職員の配置の形ごとに収支がどう変わるかを確認できます。
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