テレアポで断られるのが怖い、という相談を受けたことが何百回あるかわかりません。
私は営業の現場に20年いて、うち10年以上はインサイドセールス(電話で商談を完結させる仕事)でした。その後、約70名の営業チームをマネジメントする立場になり、新人が電話を前に止まってしまう場面をずっと見てきました。
今回は、その経験から「テレアポが怖い理由」と「それをどう乗り越えるか」を書きます。最後に、私が実際に作ったAIの練習ツールも紹介します。
テレアポが怖いのは、練習量の問題ではありません。
「練習が足りないから怖い」と思っている人が多いのですが、これは少し違います。
正確に言うと、「断られることに慣れていないから怖い」のです。
テレアポの断り率は高いです。業種や商材にもよりますが、私がマネジメントしていたチームでは、100件かけて5件アポが取れれば十分、という感覚のジャンルも多くありました。つまり95件近くは断られる。
その95回の断りに、精神的に耐えられるかどうかが問題の本質です。練習量を増やしても、断られることへの免疫ができなければ怖さは消えません。
では免疫はどうやってつくるか。答えは単純で、断られる経験を積み重ねるしかありません。ただ、実際の業務でそれをやると成績に直結するのでプレッシャーが高い。だから練習が必要になります。
「先入観」が怖さを増幅させる。
怖さの原因をもう少し掘り下げます。テレアポを怖いと思っている人の多くは、「どうせ断られる」「怒られたらどうしよう」「変なことを言ったら恥ずかしい」という先入観を最初から持っています。
70名の組織を見ていて気づいたのですが、先入観と固定概念が営業を一番弱くします。「自分にはできない」が口癖の人は、どんなに外からアドバイスをしても変わらない。変われるのは自分の経験から「あ、できるかもしれない」と気づいたときだけです。
テレアポが怖い人に「大丈夫ですよ」と言っても気休めにしかなりません。必要なのは、実際に電話して「この程度か」と思える体験です。
怒る人は一定数いますが、全員が怒るわけではありません。普通に話を聞いてくれる人も、穏やかに断ってくれる人も、意外と多い。それを自分の体で知るまでは、頭でわかっていても怖さは消えません。
テレアポの相手は、大きく2種類います。
練習の話をする前に、テレアポの相手について整理しておきます。
テレアポの相手は、大きく分けて個人(BtoC)と法人(BtoB)の2パターンがあります。
個人向け(BtoC)は、自宅や携帯に電話をかけます。電力会社の切り替え、インターネット回線、保険、投資商品などが多いジャンルです。相手は仕事中ではないことも多く、手が空いていることもある一方、警戒心も強い。個人情報への反応が鋭く、「どこから番号を知ったんですか」というクレームが来ることもあります。
法人向け(BtoB)は、会社の代表番号にかけることが多いです。最初に出るのは受付や事務スタッフで、担当者への取り次ぎを判断するのが彼女・彼らの仕事です。SFA・CRMなどのクラウドシステム、人材サービス、広告サービス、複合機などのリースが典型的なジャンルです。
BtoBのテレアポで特に難しいのが「受付突破」です。担当者に取り次いでもらう前に終わってしまうケースが非常に多い。
受付に断られるパターンは、実はそれほど多くありません。
BtoBのテレアポで私が気づいたことがあります。受付に断られる理由は、見た目の言葉は違っても、本質的には数パターンしかないということです。
- 用件を聞いてから断るパターン(「担当者に確認してみます→やはり結構です」)
- 用件を聞かずに断るパターン(「営業のお電話はお取り次ぎしておりません」)
- 資料送付に誘導するパターン(「まずはメールかFAXで資料をお送りください」)
- 折り返しに誘導するパターン(「担当者から折り返しご連絡いたします」で実際はかかってこない)
断り方はこのパターンの組み合わせです。これを知っておくだけで、「また新しい断られ方をされた」という感覚が「また同じパターンだ」という感覚に変わります。怖さの正体を知ることが、怖さを減らす最初のステップです。
ベテランが断られても平気に見えるのは、鈍感なのではなくパターンを知っているからです。「このパターンは3回に1回は突破できる」という実感の積み重ねが、落ち着いた対応につながっています。
受付突破は「取り次いでもらえる理由」を作ることです。
受付スタッフの立場で考えると、取り次ぎの判断基準は一つです。「担当者が知りたいと思うかどうか」です。担当者が後で怒らないかどうかを常に考えています。
だから「ご担当者様はいらっしゃいますか」という入り方は弱い。担当者が誰かも、なぜかけてきたかも分からない状態では、取り次ぐ理由がありません。
私が現場でよく見ていたパターンは、用件の具体性と緊急性を先に示すことです。「○○に関してご確認したい件があるのですが、担当の方はいらっしゃいますか」というように、抽象的な「営業です」ではなく、相手が聞いたことがある言葉やジャンルを入れる。
もう一つは、「誰に繋げばよいかわからないのですが」という入り方です。「教えてください」というトーンは、受付にとって判断の余地を与えます。「断るか取り次ぐか」という二択ではなく、「誰に繋げばいいか」という別の問いにすり替わります。
ただし、こうした「コツ」を知識として持っているだけでは意味がありません。実際に声に出してみないと、タイミングや間が体に入らない。頭でわかっていても、緊張した状態では出てこない。だから練習です。
個人向けのテレアポで、最初の5秒が9割を決める。
BtoCのテレアポも、受付突破とは違う難しさがあります。個人に電話をかけるとき、相手はさまざまな状況にいます。仕事中かもしれない。食事中かもしれない。子どもの世話をしているかもしれない。運転中の場合もあります。
その状況で突然かかってくる電話に、どれだけ自分を警戒させずに用件を伝えられるかが勝負です。
70名のチームを見ていて、成績が良い人と悪い人で一番差が出たのは最初の5秒でした。最初の一言で相手が「切ろう」と判断してしまうと、その後のトークは届きません。
具体的には、「いつもお世話になっております」で始めると個人の相手は「どこだろう」と混乱します。「突然のご連絡、大変失礼いたします」という一言から入るだけで、壁が少し下がることがあります。
ただし、これも相手の状況によって反応が変わります。機嫌が悪い相手、急いでいる相手、子どもが泣いている最中の相手など、状況によって最適な対応は変わります。このバリエーションを体で覚えるためにも、練習が必要です。
クレームは、怖くなくなります。
テレアポをやったことがない人が一番怖れているのが、怒られることです。「怒鳴られたらどうしよう」という不安が、電話を前に止まらせます。
これも経験の問題です。最初に激しいクレームを受けたときは誰でも動揺します。ただ、2回目、3回目になると「またこのパターンか」と思えるようになります。怒鳴る人は怒鳴る前提で接すると、実際に怒鳴られたときにも落ち着けます。
私が現場で見ていた最悪のパターンは、クレームを受けた後に電話を切れなくなる新人です。相手が怒っているのに「申し訳ございません」と繰り返してしまい、相手の怒りをさらに引き出してしまう。
対処は単純で、謝罪を一回して、すぐに「今後はご連絡いたしません」と伝えて切ることです。続けてもお互いにとって良いことは何もありません。でも、これも頭でわかっていても、実際のクレームの場面では動揺して出てこない。練習あるのみです。
練習相手がいないのが、テレアポ上達の最大の壁です。
テレアポを練習しようとすると、最大の問題にぶつかります。練習相手がいないことです。
ロールプレイは有効な練習方法です。私も部下に対してよくやっていました。ただ、相手が必要です。先輩や上司に頼む必要があり、時間も取らせてしまう。毎日気軽に頼めるわけではありません。
また、ロールプレイの相手が本気で断ってくれないケースも多い。特に上司が相手だと、適当なところで「じゃあ次回お伺いしていいですか」みたいな優しい展開になりがちです。実戦の厳しさが練習で得られない。
録音した自分のトークを聞き返すのも良い練習ですが、断られる場面を練習することはできません。また、自分のトークを客観的に聞くのが恥ずかしくて、すぐに聞くのをやめてしまう人も多い。
私はこの「練習相手がいない」という問題を解決したくて、AIのロールプレイ練習ツールを作りました。それが「アポトレ」です。
アポトレでできること。
アポトレは、ブラウザで動くAIのテレアポ練習ツールです。インストール不要、スマホでも使えます。
練習相手の設定を自分で選んで、AIが相手役になります。設定できる項目は次のとおりです。
- 業種:Wi-Fi・光回線、電気・ガス切替、不動産投資、クレジットカード、IT・SaaS、採用・人材紹介、法人保険など14ジャンル。BtoCとBtoBの両方に対応
- コールの種類:新規コール(全く接点なし)、折り返しコール、再アプローチなど
- 相手の年代・性別・属性:一般層・富裕層・リテラシー低めなど
- 相手が電話を受けた状況:手が空いている、仕事中・忙しい、食事中、運転中、受付スタッフ(法人向け)、医療機関の受付、美容院のスタッフなど
- 相手の態度:穏やか、強めに断る、激怒クレーム、サバサバ系、相槌だけ系など15パターン
- 難易度:超簡単から「鬼」まで5段階
練習が終わると、AIが5軸でフィードバックをくれます。スコアと一言講評が出て、前回との比較も見られます。練習を続けると成長のグラフが積み上がっていきます。
音声入力にも対応しているので、実際に声に出して練習できます。テキストで打ち込むより、声に出した方が実戦に近い感覚になります。
法人の受付役としても使えます。
アポトレの特徴の一つが、BtoBの受付突破練習に対応していることです。
「受付スタッフ(法人向け)」という状況設定を選ぶと、AIが受付の役を演じます。担当者への取り次ぎを拒否するパターン、資料送付に誘導するパターン、「担当者は席を外しています」で一旦様子を見るパターンなど、受付の典型的な反応を練習できます。
「激怒クレーム」や「強めに断る」という態度設定との組み合わせで、かなり厳しい練習ができます。ただし「鬼」難易度の受付は、かなり強烈に断ってきます。本番前の免疫づくりとして使ってください。
難しい相手を先に練習するのがコツです。
アポトレを使うときのおすすめは、最初から難しい相手に挑戦することです。
超簡単のモードでは、AIはほとんど断りません。それは気持ちいいですが、実戦では役に立ちません。
「激怒クレーム」や「受付ブロック型」など、難しい相手と練習しておくと、実際の電話でその相手が来たときに「あの練習と同じだ」と思えます。慣れの力は大きいです。
一方、落ち込んでいるときや自信をつけたいときは、あえて簡単なモードで成功体験を積む使い方もあります。状況に合わせて使い分けてください。
スコアよりも「続けること」が大事です。
アポトレでは毎回スコアが出ますが、1回の点数を気にしすぎる必要はありません。
練習の目的は、断られることへの免疫を作ることです。そのためには回数を積み重ねることが最優先です。スコアが低くても続ける。怒鳴られるパターンを何度も練習する。繰り返すうちに「このくらいか」という感覚が体に入ります。
話し方分析機能では、発話比率・平均文字数・口癖なども確認できます。「あ〜」「えーと」という口癖が多い人は、それが出るたびに相手の集中が切れます。意識して直すためにも、まず数値で見えることが大事です。
テレアポで身につくことは、テレアポ以外にも使えます。
テレアポの練習をすると、電話に限らず使える力が身につきます。
最初の5秒で相手に警戒させない話し方、断られたときに感情的にならず次に進む切り替え、状況を素早く読んで対応を変える判断力。これらは対面の営業でも、面接でも、社内での説明でも使えます。
テレアポが上手い人は、話し始めの数秒で相手との間を作るのが自然にできています。それは生まれ持った才能ではなく、断られながら繰り返した経験の積み重ねです。
無料で試せます。
アポトレは無料で使えます(無料版は1日1回まで)。プレミアム版は月額980円(税込)で回数制限なく練習できます。
まずは一度、実際に使ってみてください。どんな業種・どんな相手の設定があるか、眺めるだけでも「こういう状況が実際にあるのか」という確認になります。
テレアポを続けていると、最初に怖かったことが怖くなくなる瞬間があります。それは技術が上がったというより、慣れた、ということが大きいです。
慣れる回数を増やすために、練習の場所を増やす。アポトレはそのための道具です。


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