テレアポでクレームを受けることが怖い、という話をよく聞きます。怖い理由を聞くと、多くの場合「怒鳴られたらどうすればいいか分からない」という答えが返ってきます。
これは正直な答えです。そして、ここに解決の糸口があります。
クレームが怖い本当の理由は、怒鳴られることそのものではありません。「どう対応すればいいか分からない状態で怒鳴られること」が怖いのです。逆に言うと、対応の型が分かっていれば、クレームの恐怖は大きく減ります。
私は20年間の営業経験と、約70名の営業チームをマネジメントしてきた中で、数えきれないほどのクレームを見てきました。自分でも受けてきました。その経験から、テレアポのクレームへの向き合い方を書きます。
テレアポのクレームは、大きく3種類に分けられます。
クレームを「漠然と怖いもの」として扱っているうちは、対応の型が作れません。まず種類を整理します。
テレアポで受けるクレームは、大きく次の3種類に分類できます。
個人情報・連絡先に関するクレーム
「どこからこの番号を知ったんですか」「俺の個人情報を勝手に使うな」という類のクレームです。電話番号の入手経路に対する怒りが中心です。個人向け(BtoC)のテレアポで多く出ます。
許可・断り意思に関するクレーム
「誰が電話かけていいって言ったんだ」「以前断ったのにまたかけてきたのか」という類のクレームです。電話をかけてきたこと自体への怒りが中心です。BtoCとBtoBの両方で発生します。
内容・誇大表現に関するクレーム
「前に来た営業は違うことを言っていた」「説明が違う」「詐欺だ」という類のクレームです。サービスの説明や前回のやりとりに対する不満が中心です。
この3種類に当てはまらないクレームは、私の経験ではほぼありませんでした。分類できると「またこのパターンか」という感覚で受けられます。パターンが分かると、次の一手が見えます。
クレームへの「基本の型」は、シンプルです。
クレームへの対応に共通する基本の型があります。
まず謝罪を一回する。次に「今後はご連絡いたしません」と伝えて、電話を終わらせる。
これだけです。
この型が機能する理由は、電話を続けてもお互いにとって良いことがないからです。クレームを受けた相手は怒っています。その状態で説明を続けても、相手の耳には入りません。聞いてもらえない状態で話し続けるのは、怒りに燃料を追加するだけです。
「今後はご連絡いたしません」という一言は重要です。相手が怒っている理由の多くは「また同じことが繰り返されること」への不安を含んでいます。繰り返さないと明言すると、怒りが一段落することが多い。
なぜ謝罪は一回なのか。繰り返すと逆効果になります。「申し訳ありません」を何度も言い続けると、相手はその言葉を「まだ引っ張ることができる」と判断して怒りを続けます。一回誠実に謝り、終わらせることが相手のためにもなります。
種類別に対応の考え方を整理する。
基本の型の上に、種類別の対応を乗せます。
個人情報クレームへの対応
「どこから番号を入手したか」を問い詰められることがあります。多くの場合、実際の入手経路を答えることができます(名簿サービス経由、公開情報など)。ただし、説明を始めると相手は「それが問題だ」という別の議論に入ることがあります。
私がチームに教えていたのは、入手経路の説明は一文だけにすることです。「○○の公開情報をもとにご連絡しました」と一文で伝え、「不快をおかけして申し訳ありません。今後はご連絡いたしません」に続けて終わらせる。入手経路についての議論には乗りません。
「法的に問題があるのか」という問いには「問題のない形で入手しております」と一文で答えます。証明を求められても、電話口では証明できません。その場での証明を求められたら「確認のうえご連絡いたします」と伝えて終わらせます。
許可・断り意思クレームへの対応
「誰が許可したんだ」という怒りには、許可の有無を議論しません。「ご不快をおかけして申し訳ありません。今後はご連絡いたしません」で終わらせます。「以前断ったのにまたかけてきた」という場合は、記録の確認ができないことを誠実に伝え、謝罪して終わらせます。
このタイプのクレームで注意が必要なのは、相手が「謝罪させること」を目的として電話を続けようとするケースです。謝罪が繰り返されると「まだ引き出せる」と感じて相手が止まらなくなります。一回謝ったら、電話を終わらせることを優先します。
内容・誇大表現クレームへの対応
「説明が違った」「前回と話が違う」という場合、相手が何を言われたと認識しているかを一度確認します。確認した上で、事実と異なる部分があれば謝罪します。事実と同じであれば、説明の仕方が伝わっていなかった可能性があります。
ただし、電話口で内容の正誤を議論することは避けます。「ご不満をおかけして申し訳ありません。担当のものから改めてご連絡いたします」として、その場の議論を終わらせることが先決です。
やってはいけない対応が3つあります。
型を知ることと同じくらい重要なのが、やってはいけない対応を知ることです。
謝り続けること
私が現場で見ていた中で最も多かったミスです。相手が怒っているのに「申し訳ありません」「本当に申し訳ございません」と繰り返してしまう。相手の怒りが収まるまで謝り続けようとすると、相手の怒りはむしろ長続きします。
謝罪は誠意を伝えるためのものです。繰り返すことで誠意が増すわけではありません。
言い訳・説明を続けること
「でも、ルールに従ってご連絡しております」「法的には問題ありません」という説明を続けることは逆効果です。怒っている相手に正論を伝えても届きません。正しいことを言うより、早く終わらせることが双方にとって良い結果になります。
口論に引き込まれること
相手が「お前みたいな人間が営業をやっている会社はダメだ」「こんなやり方でよく恥ずかしくないな」という人格への攻撃に入ることがあります。これに対して反論すると口論になります。
口論になると収束に時間がかかり、結果として自分が消耗します。人格への攻撃には反応せず、謝罪と終話に集中します。「おっしゃることは承りました。今後はご連絡いたしません」で終わらせます。
クレームを受けた後の気持ちの処理。
クレームへの対応が終わった後、気持ちの整理が必要です。これを後回しにすると、次の電話に影響します。
私がチームメンバーに伝えていたのは、クレームを受けた後5分だけ時間を取ることです。次の電話をすぐにかけない。水を飲む、席を立つ、別の作業をする、何でもいい。一度切り替えてから次に進みます。
クレームを引きずったまま次の電話をすると、声のトーンが硬くなります。相手はトーンの変化に敏感です。「この人、怖がってるな」という空気は電話越しにも伝わります。
切り替えの練習も、実は練習が必要な技術です。頭では「切り替えよう」と思っていても、感情は時間差で追いかけてきます。クレームを受けた後の自分の状態を観察し、どれくらいで落ち着けるかを自分で知っておくことが大事です。
クレームへの慣れは、営業全体の構えを変えます。
クレームの対応型を知り、繰り返し体験すると、クレームに対する構えが変わります。
「怒鳴られるかもしれない」という前提で電話をかけると、最初の一言から声が緊張します。相手はその緊張を感じます。逆に、「怒鳴られても対応できる」という構えで電話をかけると、声が自然です。
クレームへの耐性は、テレアポに限らず使えます。面接、社内での提案、取引先との交渉、あらゆる場面で「相手が怒ったとき」の対応力は使えます。感情的にならず、型通りに対応する力は、営業という仕事を通じて身につく最も実用的なスキルの一つです。
ただし、この耐性は知識からは生まれません。実際にクレームを受け、対応し、切り替える経験の積み重ねから生まれます。だから練習が重要です。
アポトレでクレーム対応の練習ができます。
私が作ったAIのテレアポ練習ツール「アポトレ」では、クレームの練習に特化した設定ができます。
態度の設定で「個人情報クレーム」「許可クレーム(誰が電話かけていいと言ったんだと激怒)」「激怒クレーム(最初から怒鳴り・一方的にまくし立てる)」を選べます。難易度を上げると、AIは相当激しく反応します。
練習でのおすすめは、最初から「激怒クレーム」の中級以上で繰り返すことです。気持ちの良い練習ではありませんが、本番でクレームに遭遇したとき「あの練習よりはひどくない」と思えます。練習の激しさが実戦の基準になります。
また、クレーム対応の練習で重要なのは「終わらせる練習」です。謝り続けない、言い訳しない、口論に乗らない、というやってはいけない3つを実際にやってしまいやすい。AIが激しく反応してくるとき、早く終わらせる決断ができるかどうかを繰り返す練習が実戦に効きます。
音声入力で声に出して練習すると、声のトーンへの影響も体で確認できます。
対応の型を知ることが、恐怖を減らす最短の方法です。
クレームへの恐怖は、「何をすればいいか分からない状態」から来ます。一回謝って終わらせる、という型を知るだけで、恐怖の正体が変わります。「怒鳴られること」への恐怖から、「型通りに動けるかどうか」という技術の問題に変わります。
技術の問題は、練習で解決できます。
型を知り、練習で繰り返し体験し、実戦で積み重ねていくと、あるときクレームを「ただの業務の一つ」として受けられる自分になっています。それは鈍感になったのではなく、対応の筋肉がついたということです。
アポトレは無料で1日1回使えます。プレミアム版(月額980円・税込)で回数制限なく練習できます。クレームの練習から始めてみてください。
クレームを受けたとき「どうしよう」から「はい、この型で対応しよう」に変わる瞬間があります。その変化が、テレアポという仕事の怖さを根本から変えます。


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