危険物取扱者 乙種第1類(乙1)の合格に必要な勉強時間は、乙4取得済みなら30〜50時間、初めて乙種を受験するなら60〜100時間が目安です。試験は法令・物理化学・性質消火の3科目で、科目ごとに独立した足切りがあります。最も差がつく科目は「性質消火(性消)」です。第1類(酸化性固体)の9品目の性質・指定数量・消火方法を品目ごとに整理することが合格への近道です。
3科目の特徴と攻略の優先順位
乙1の試験は35問で、科目ごとの配分は次のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 合格ライン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 法令 | 15問 | 9問以上(60%) | 乙4と共通の範囲が多い。乙4取得済みなら比較的易しい |
| 物理化学 | 10問 | 6問以上(60%) | 乙4・乙6など全乙種で共通。化学の基礎(酸化還元・燃焼・爆発など) |
| 性質消火(性消) | 10問 | 6問以上(60%) | 乙1固有。第1類(酸化性固体)9品目の性状・指定数量・消火方法 |
乙4取得済みの場合、法令と物理化学は科目免除を申請できます。この場合は性消10問のみの受験になります。免除申請を活用するか、全科目で受験するかは試験申し込み時に選択します。
法令の攻略:乙4の知識を整理して使い回す
乙種の法令は第4類以外の類でも出題範囲の大枠は同じです(消防法・危険物の規制に関する政令・規則)。ただし第1類固有の内容(指定数量・貯蔵取扱基準・運搬時の表示)は乙1でも問われます。
法令の頻出テーマは次のとおりです。
- 指定数量と倍数の計算
- 製造所等の区分と保安距離・保有空地
- 危険物取扱者の種類と業務
- 貯蔵・取扱いの基準(第1類の取扱い注意事項)
- 運搬の基準(容器・表示・積み重ね・混載禁止)
- 移送の基準(危険物取扱者の乗車義務)
出典:消防法・危険物の規制に関する政令・危険物の規制に関する規則(各条文)
物理化学の攻略:乙4の知識がそのまま使える
物化は第1類専用の内容がほぼなく、全乙種で共通の基礎知識が問われます。乙4取得済みならほぼ同じ内容です。初めての受験でも、以下のテーマを押さえれば得点しやすい科目です。
- 燃焼の3要素(可燃物・酸素・点火源)と消火の原理
- 爆発の種類(気相爆発・粉じん爆発)
- 酸化と還元の定義
- 化学式・元素記号の読み方
- 物質の状態変化(融点・沸点・蒸発熱)
- 静電気・電気火花
性消の攻略:9品目を表で整理して覚える
乙1の合否は性消で決まります。第1類(酸化性固体)の品目数は9つと多いですが、指定数量・危険等級・消火方法のパターンは大きく2グループに分類できます。
グループ1:指定数量50kg・危険等級I(要注意品目)
| 品名 | 代表物質 | 特徴 | 消火方法 |
|---|---|---|---|
| 塩素酸塩類 | 塩素酸カリウム(KClO₃) | 硫黄・木炭・有機物との混合で爆発危険・非常に鋭感性が高い | 大量の水 |
| 過塩素酸塩類 | 過塩素酸カリウム(KClO₄)・過塩素酸アンモニウム | 塩素酸塩類より安定。ロケット推進剤の酸化剤にも使用 | 大量の水 |
| 無機過酸化物 | 過酸化ナトリウム(Na₂O₂)・過酸化カリウム・過酸化バリウム | 水と激しく反応して酸素発生・発熱。CO₂とも反応する | 乾燥砂(水厳禁・CO₂厳禁) |
| 亜塩素酸塩類 | 亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂) | 酸と反応して二酸化塩素(ClO₂)発生。有毒・爆発性 | 大量の水 |
| 臭素酸塩類 | 臭素酸カリウム(KBrO₃) | 有機物・硫黄との接触で発火危険 | 大量の水 |
グループ2:指定数量300kg・危険等級II
| 品名 | 代表物質 | 特徴 | 消火方法 |
|---|---|---|---|
| 硝酸塩類 | 硝酸カリウム(KNO₃)・硝酸アンモニウム(NH₄NO₃) | 硝酸アンモニウムは大量・密閉空間での加熱で爆発危険 | 大量の水 |
| ヨウ素酸塩類 | ヨウ素酸カリウム(KIO₃) | 比較的安定。消毒薬・強化食塩の原料にも使用 | 大量の水 |
| 過マンガン酸塩類 | 過マンガン酸カリウム(KMnO₄) | 暗紫色。酸・還元剤との接触で危険。水溶液は脱色で分析に使用 | 大量の水(酸との接触を避ける) |
| 重クロム酸塩類 | 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇) | 橙赤色。酸化剤として使用。有毒(六価クロム含有) | 大量の水 |
グループ3:指定数量1,000kg・危険等級III
| 品名 | 代表物質 | 消火方法 |
|---|---|---|
| その他のもの | ジクロロイソシアヌル酸(DCCA)等 | 大量の水 |
出典:消防法別表第一(第一類)・危険物の規制に関する規則別表第4
記憶術:色・反応・用途で覚える
試験でよく問われる「色・特殊反応・用途」は以下の3点を押さえておくと得点が上がります。
- 過マンガン酸カリウム:暗紫色(水溶液も紫色。還元剤と反応で脱色)
- 重クロム酸塩類:橙赤色
- 無機過酸化物:水・CO₂厳禁(乾燥砂のみ)
- 硝酸アンモニウム:大量・密閉空間での加熱は爆発危険(ANFO爆薬の原料)
- 過塩素酸アンモニウム:ロケット推進剤の酸化剤
学習スケジュールの目安
乙4取得済みで科目免除を使わずに全科目受験する場合の目安です。
| 期間 | 内容 | 時間目安 |
|---|---|---|
| 1〜2週目 | 法令の復習(乙4の知識確認)・物化の確認 | 各10〜15時間 |
| 3〜4週目 | 性消の9品目を表で整理・品目ごとに問題演習 | 20〜30時間 |
| 5週目 | 過去問・模擬問題で総仕上げ・弱点補強 | 10〜15時間 |
問題演習は3科目を分けて練習する
乙1は各科目に足切りがあるため、全体の正答数だけでなく科目ごとに均等に点数を取る必要があります。性消が得意でも法令で6割を切ると不合格です。科目ごとに別々に練習して、苦手科目を早めに発見するのが効果的です。
危険物乙1 AI問題集では法令・物化・性消を科目ごとに分けて練習できます。確認済み220問は繰り返し無制限で無料です。
乙1でよくある間違いパターン
受験者がよくつまずくポイントを3つ挙げます。
間違いパターン1:無機過酸化物の消火方法を「大量の水」と答えてしまう
第1類の消火は「大量の水」が原則ですが、無機過酸化物だけは「水厳禁・乾燥砂」です。試験では「次のうち消火に水が使えない品目はどれか」という形で問われます。9品目の中で無機過酸化物だけが例外だと覚えておいてください。
間違いパターン2:危険等級IとIIの品目を混同する
危険等級Iは指定数量50kg(塩素酸・過塩素酸・無機過酸化物・亜塩素酸・臭素酸の5品目)、危険等級IIは300kg(硝酸・ヨウ素酸・過マンガン酸・重クロム酸の4品目)です。指定数量の数字と品目の対応を混同すると法令・性消の両方で失点します。
間違いパターン3:乙4の消火知識をそのまま使う
乙4取得済みの人に多いのが、第4類の泡・粉末・CO₂消火の知識を乙1(第1類)に当てはめるミスです。第1類(固体)は大量の水が原則で、第4類(液体)の消火方法とは全く異なります。乙4の知識はリセットして第1類専用の知識を入れ直す必要があります。
試験直前1週間のチェックリスト
試験前1週間で確認すべきポイントをリストアップします。
- 無機過酸化物:水厳禁・CO₂厳禁・乾燥砂のみ(例外品目として確実に覚える)
- 過マンガン酸カリウム(KMnO₄)の色:暗紫色
- 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)の色:橙赤色
- 硝酸アンモニウム(NH₄NO₃):密閉加熱で爆発危険・ANFO爆薬の原料
- 亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂):酸と反応で二酸化塩素(ClO₂)発生
- 危険等級Iの5品目(塩素酸・過塩素酸・無機過酸化物・亜塩素酸・臭素酸)はすべて指定数量50kg
- 指定数量の倍数計算(法令):(A品の実量÷A品の指定数量)+(B品の実量÷B品の指定数量)が合計1以上で規制適用
- 混載禁止:第1類と第2〜5類の混載は禁止(第6類は混載可)
科目別の重点テーマ(法令)
法令は15問あり9問以上(60%)が合格ラインです。頻出テーマを押さえれば得点しやすい科目です。
| テーマ | 重要度 | ポイント |
|---|---|---|
| 指定数量と倍数計算 | 高 | 第1類の50kg・300kg・1,000kgを使った計算問題 |
| 製造所等の区分と保安距離 | 高 | 製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所等の区分と距離基準 |
| 危険物取扱者の種類と業務 | 中 | 甲種・乙種・丙種の扱える危険物の違い・立会い義務 |
| 運搬の基準 | 高 | 容器・表示・混載禁止の組み合わせ・第1類は第2〜5類混載禁止 |
| 保安距離・保有空地 | 中 | 施設ごとの数値は範囲が広いため概念理解が優先 |
科目別の重点テーマ(物化)
物化は10問で6問以上(60%)が合格ラインです。全乙種共通の内容で、乙4の知識がある人はほぼそのまま使えます。
| テーマ | 重要度 | ポイント |
|---|---|---|
| 燃焼の3要素と消火 | 高 | 可燃物・酸素・点火源のどれかを除去する消火の原理 |
| 爆発の種類 | 中 | 分解爆発・混合爆発・粉じん爆発の違い |
| 酸化と還元 | 高 | 酸化剤(第1類)が還元剤と反応する反応性 |
| 化学式・元素記号 | 中 | 代表物質の化学式(Na₂O₂・KClO₃・KMnO₄等) |
| 熱化学 | 低 | 発熱反応・吸熱反応の基礎 |
性消の9品目を「品目ごと集中練習」で覚える
性消は10問10点の科目ですが、9品目から出題されます。9品目を無差別に覚えようとすると混乱するため、1品目ずつ集中して覚える「品目ごと集中練習」が効果的です。
- 1日1品目を集中的に学ぶ(性質・代表物質・指定数量・消火方法をセットで)
- 翌日はその品目の問題演習10問を解く
- 翌々日は前の品目と今日の品目を合わせて復習する
- これを9品目分繰り返すと計18日で一通り網羅できる
特に無機過酸化物・塩素酸塩類・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類は試験での出題率が高いため、最低2回以上の集中練習をすることを推奨します。
乙4免除を使う場合の性消攻略
乙4取得済みで科目免除を使って性消10問のみ受験する場合、10問中6問(60%)以上正解することが唯一の合格条件です。
性消10問は第1類の9品目から出題されますが、全品目から満遍なく出るとは限らず、特定の品目から複数問出ることもあります。9品目すべてを「合格点が取れるレベル」まで仕上げておくことが必要です。
性消のみ受験の場合の推奨学習時間は10〜20時間ですが、無機過酸化物の例外処理と危険等級別の指定数量の暗記に特に時間をかけてください。
乙1の試験日程を逆算してスケジュールを立てる
乙1の試験日は都道府県によって異なります。消防試験研究センターの公式サイトで申込期間・試験日を確認してから、逆算してスケジュールを立ててください。
目安として、試験の3〜4週間前までに9品目の一通りの学習を終えて、残り1〜2週間で模擬試験・弱点補強に充てるのが標準的な流れです。
乙4・乙6・甲種の問題集は危険物取扱者の問題集まとめからどうぞ。

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