乙4の物理化学10問には計算問題が含まれます。燃焼計算・ボイル・シャルルの法則・熱量計算のパターンと解法を整理しました。公式と解き方の手順をまとめています。
物理化学10問の出題傾向
乙4試験の物理化学10問は、次のテーマから出題されます。
- 燃焼の三要素・燃焼の種類(表面燃焼・分解燃焼・蒸発燃焼)
- 引火点・発火点・沸点・蒸気比重・燃焼範囲(爆発限界)
- 消火の原理(冷却・窒息・抑制)
- 静電気の発生と帯電
- 熱の伝わり方(伝導・対流・輻射)
- 計算問題(ボイルの法則・シャルルの法則・燃焼計算・危険度・蒸気比重)
計算問題は毎回1〜3問程度出題されます。複雑な計算は少なく、公式に数字を当てはめれば解けるものがほとんどです。
ボイルの法則とシャルルの法則
ボイルの法則(温度一定・圧力と体積の関係)
温度が一定のとき、気体の体積(V)と圧力(P)は反比例します。
P1 × V1 = P2 × V2(温度一定)
例題:1気圧で体積1Lの気体を、2気圧にすると体積は何Lになるか?
解法:1 × 1 = 2 × V2 → V2 = 0.5L
シャルルの法則(圧力一定・温度と体積の関係)
圧力が一定のとき、気体の体積(V)は絶対温度(T:ケルビン温度)に比例します。
V1 / T1 = V2 / T2(圧力一定)
T(ケルビン)= 273 + 摂氏温度(℃)
例題:0℃(273K)で体積1Lの気体を27℃(300K)にすると体積は何Lになるか?
解法:1/273 = V2/300 → V2 = 300/273 ≒ 1.098L
試験では「温度が上がると体積は増える」「0℃を273K(絶対零度)と換算する」という点が出ます。
ボイル・シャルルの法則(温度も圧力も変化する場合)
温度と圧力が両方変化する場合はボイル・シャルルの法則を使います。
P1 × V1 / T1 = P2 × V2 / T2
例題:0℃・1気圧で体積10Lの気体を27℃・2気圧にすると体積は何Lになるか?
解法:(1 × 10) / 273 = (2 × V2) / 300 → V2 = (1 × 10 × 300) / (273 × 2) ≒ 5.49L
この計算パターンが出題された場合、落ち着いて公式に当てはめれば解けます。
蒸気比重の計算
蒸気比重は「物質の分子量 ÷ 29(空気の平均分子量)」で求められます。
蒸気比重 = 分子量 ÷ 29
空気の平均分子量は約29(窒素N2:28・酸素O2:32の混合物の平均)です。
例題:ベンゼン(分子量78)の蒸気比重はいくらか?
解法:78 ÷ 29 ≒ 2.69(≒2.7)
試験では計算式を書かせるのではなく「蒸気比重が1以上なら空気より重く低所に滞留する」という結論が問われることが多いです。ただし計算で確認するパターンも出ます。
| 物質 | 分子量 | 蒸気比重(÷29) |
|---|---|---|
| ガソリン(平均) | 100〜110 | 3〜4 |
| ベンゼン(C6H6) | 78 | 2.7 |
| アセトン(C3H6O) | 58 | 2.0 |
| エタノール(C2H6O) | 46 | 1.6 |
| 二硫化炭素(CS2) | 76 | 2.6 |
燃焼範囲(爆発限界)と危険度
可燃性蒸気が燃焼するためには、空気中の蒸気濃度が「燃焼範囲(爆発限界)」の中にある必要があります。
- 燃焼下限界(LEL):これより薄いと燃えない(可燃性蒸気が不足)
- 燃焼上限界(UEL):これより濃いと燃えない(酸素が不足)
危険度の計算:危険度は燃焼範囲の広さと上限・下限の位置で判断します。
危険度 = (燃焼上限界 − 燃焼下限界)÷ 燃焼下限界
この計算式では「燃焼下限界が低く・燃焼範囲が広い」ほど危険度が大きくなります。
例:ガソリンの燃焼範囲(1.4〜7.6vol%)の場合、危険度 = (7.6-1.4)/1.4 = 6.2/1.4 ≒ 4.4
試験では「燃焼範囲が広いほど・燃焼下限界が低いほど危険度が高い」という定性的な理解が主に問われます。
比熱と熱量の計算
物質の温度を上げるのに必要な熱量の計算です。
熱量Q(J) = 質量m(g) × 比熱c(J/g・℃) × 温度差ΔT(℃)
例題:比熱4.2J/g・℃の水100gを20℃から100℃まで加熱するのに必要な熱量は何Jか?
解法:Q = 100 × 4.2 × (100-20) = 100 × 4.2 × 80 = 33,600J
この計算は乙4試験でそのまま出題されることは少ないですが、「熱量計算の基本公式」として押さえておくと物理化学全般に応用できます。
燃焼の計算(有機化合物の完全燃焼)
アルコール類や炭化水素の完全燃焼反応式が出題されることがあります。
エタノールの完全燃焼:
C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O
この反応式では「酸素が3モル必要」「二酸化炭素が2モル生成」「水が3モル生成」という係数が重要です。試験では「エタノール1モルを完全燃焼させるのに何モルの酸素が必要か」→「3モル」という問いが出ることがあります。
ガソリン(オクタン:C8H18)の完全燃焼:
C8H18 + 12.5O2 → 8CO2 + 9H2O
燃焼計算は「炭素はCO2に・水素はH2Oに・硫黄はSO2になる」という基本を覚えれば係数が分かります。
燃焼範囲(爆発限界)の品目別一覧
乙4試験でよく出る危険物の燃焼範囲を整理します。燃焼下限界が低く・燃焼範囲が広いほど危険度が高くなります。
| 危険物 | 燃焼下限界(vol%) | 燃焼上限界(vol%) | 燃焼範囲の幅 |
|---|---|---|---|
| ガソリン | 1.4 | 7.6 | 6.2 |
| アセトン | 2.5 | 12.8 | 10.3 |
| ジエチルエーテル | 1.9 | 48.0 | 46.1(非常に広い) |
| 二硫化炭素 | 1.3 | 44.0 | 42.7(非常に広い) |
| エタノール | 3.3 | 19.0 | 15.7 |
ジエチルエーテル(燃焼上限界48%)と二硫化炭素(燃焼上限界44%)は燃焼範囲が非常に広く危険度が高い危険物です。これらは特殊引火物として第4類の中でも最も危険な区分に属します。
物理化学10問の全体チェックリスト
物理化学10問で得点するための最終確認チェックリストです。
- □ 燃焼の三要素(可燃物・酸素・熱源)を言える
- □ 表面燃焼・分解燃焼・蒸発燃焼の違いを言える
- □ 引火点・発火点・沸点の定義を区別できる
- □ 蒸気比重の計算(分子量÷29)ができる
- □ 燃焼範囲(爆発限界)・危険度の計算ができる
- □ ボイルの法則(P1V1=P2V2)を使える
- □ シャルルの法則(V1/T1=V2/T2・ケルビン換算)を使える
- □ 熱の伝わり方(伝導・対流・輻射)を区別できる
- □ 静電気の発生条件と防止策を言える
- □ 消火の3原理(冷却・窒息・抑制)と代表的な消火剤を言える
この10項目をすべて押さえれば物理化学10問で7〜8問以上の正解が期待できます。
燃焼の三要素と消火の原理(物化の基礎)
燃焼が起こるには「可燃物・酸素・熱源(点火源)」の3要素が必要です(燃焼の三要素)。消火はこのうちのひとつを取り除くことです。
| 燃焼の要素 | 消火方法 | 代表的な手段 |
|---|---|---|
| 可燃物を取り除く | 除去消火 | 危険物を別の場所に移す・ガスを止める |
| 酸素を取り除く | 窒息消火 | CO2・泡・砂で覆う・ふたをする |
| 熱源を取り除く | 冷却消火 | 水・水噴霧で冷やす |
| (連鎖反応を止める) | 抑制消火(負触媒) | 粉末・ハロゲン化物消火剤 |
試験では「第4類危険物に棒状注水が禁止な理由」→「飛散させるため」、「粉末消火の主な消火原理」→「抑制消火」という問いに答えられれば得点できます。
熱の伝わり方の計算(伝導・対流・輻射)
物理化学では熱の伝わり方も出題されます。計算というより「種類の区別」として問われます。
- 熱伝導:固体の中を熱が伝わる。鉄の鍋が熱くなるのがこれ。熱伝導率が高い金属は熱が伝わりやすい
- 熱対流:液体・気体(流体)が動きながら熱を運ぶ。熱い空気が上に行くのがこれ
- 熱輻射(放射):電磁波(赤外線)で熱が伝わる。太陽の熱が地球に届くのがこれ。真空中でも熱が伝わる
試験では「真空中でも熱が伝わる現象は何か」→「熱輻射(放射)」、「液体・気体の流れで熱が伝わる現象は何か」→「対流」という問いが出ます。
静電気と危険物取り扱いの関係
静電気は第4類危険物の取り扱い時に引火の点火源になります。物理化学の問題として「静電気の発生条件と防止策」が出題されます。
- 静電気は絶縁性の高い物質(プラスチック・ゴム)が摩擦や流動で帯電して発生する
- 液体の流速が速いほど静電気が発生しやすい(流体摩擦)
- 防止策:接地(アース)・静電気防止服・流速を制限・湿度を高める(湿気で電気が逃げる)
試験では「静電気の防止策として適切でないものはどれか」→「絶縁体の手袋を着用する(逆に帯電する)」という問いに答えられるようにしましょう。正しい防止策は「接地・流速制限・静電気防止服」です。
計算問題対策のコツ
乙4の物理化学計算問題で確実に得点するためのコツをまとめます。
- 公式を書き出す:問題文を読んで何の公式を使うか特定し、まず公式を書き出す
- 単位を確認する:ケルビン(K)と摂氏(℃)の変換、体積の単位を統一する
- 問題の条件を整理:「何が変化して・何が一定か」を明確にしてから計算する
- 選択肢を活用:乙4は選択式(5択)なので、概算で正解を絞り込める
計算ミスで落とすのは非常にもったいないため、落ち着いて手順を踏むことが大切です。
試験で確認しておくポイント
- ボイルの法則:P1V1 = P2V2(温度一定)
- シャルルの法則:V1/T1 = V2/T2(圧力一定)。温度はケルビン(℃+273)
- 蒸気比重:分子量÷29
- 危険度:(上限界−下限界)÷下限界
- 熱量:Q = m×c×ΔT
- 燃焼下限界が低く燃焼範囲が広いほど危険度大
まとめ
乙4の物理化学計算問題は、ボイルの法則・シャルルの法則・蒸気比重計算・危険度計算・熱量計算の5パターンが中心です。公式を覚えて数字を代入するだけで解けるものがほとんどです。選択式なので概算でも対応できます。試験前に各公式を一通り確認して、計算練習を2〜3回こなしておくと自信を持って臨めます。


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