就労移行支援の事業所は、利用者が就職した後も6か月以上にわたって定着支援を行うことが、基準で義務とされている。この義務は基準の第182条に書かれており、就職の前後を通じた支援の一連の流れ(実習・求職活動・就職後の定着)が第180条から第183条にまとめられている。
この記事では、基準の条文と国の解釈通知(障発第1206001号)をもとに、就労移行支援が就職前から就職後にわたって何をしなければならないか、記録として残すべきことは何か、を整理する。
就労移行支援の「就職・定着支援」が書かれている基準の場所
就労移行支援の基準(「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号))の第174条に、就労移行支援の基本方針が示されている。
(就労移行支援の基本方針)
第百七十四条 指定就労移行支援の事業は、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、利用者の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を適切かつ効果的に行うものとする。(以下略)
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第174条
この基本方針を受けて、就職前の準備(実習・求職活動の支援)が第180条・第181条に、就職後の定着支援が第182条に、求人開拓が第183条に定められている。
実習の受入先確保(第180条):就労移行支援特有の義務
第180条第1項では、就労移行支援の事業者が、利用者の就職のために実習の受入先を確保するよう努めることが求められている。
第百八十条 指定就労移行支援事業者は、指定就労移行支援を行うため、関係機関等と連携し、利用者の適性等を踏まえた実習の受入先等を確保するよう努めなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第180条第1項
実習は、利用者が実際の職場環境を体験し、就職先とのマッチングを確認する場として機能する。事業所は、実習先の確保だけでなく、利用者ごとに適性を踏まえた実習先を選ぶことが求められる。
求職活動の支援(第181条):具体的な支援の義務
第181条では、就労移行支援の事業者が利用者の求職活動を具体的に支援することが義務とされている。
第百八十一条 指定就労移行支援事業者は、利用者の求職活動を支援するとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連絡調整を行わなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第181条
連絡調整が必要な機関として、公共職業安定所(ハローワーク)・地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターが明記されている。これらの機関と具体的にどのような調整を行ったかを記録しておくことが、運営指導では確認されやすい。
就職後6か月以上の定着支援(第182条第1項):義務の核心
第182条第1項では、就職した利用者への定着支援として、就職後6か月以上にわたって職業生活上の相談等の支援を行うことが義務とされている。
第百八十二条 指定就労移行支援事業者は、利用者が就職したときは、当該利用者が職業生活上の相談等の支援を必要とする場合には、就職後六月以上の期間にわたり、相談等の支援を行わなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第182条第1項
「6か月以上」というのは最低限の期間であり、利用者が必要とする限り継続することが求められる。また、「職業生活上の相談等の支援」には、職場での人間関係の相談・体調管理の支援・給与や休暇の確認など、就職後の生活全般にわたる支援が含まれる。
就労定着支援への引き継ぎ(第182条第2項):速やかに連絡調整
第182条第2項では、利用者が就労定着支援(別のサービス種別)を希望する場合、就労定着支援の事業者と速やかに連絡調整を行うことが義務とされている。
2 指定就労移行支援事業者は、第二百六条の三第一項に規定する指定就労定着支援事業者の支援を希望する利用者に対し、速やかに当該指定就労定着支援事業者との連絡調整を行わなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第182条第2項
就労定着支援は、就職後の定着支援を専門に行う別のサービスで、就労移行支援から引き続いて利用できる。就労移行支援の事業所が「6か月以上の定着支援」を行いながら、必要に応じて就労定着支援への移行をサポートすることが求められる。
就職状況の都道府県への報告(第182条第3項)
第182条第3項では、就労移行支援の事業者が、毎年度、利用者の就職状況について都道府県へ報告することが義務とされている。
3 指定就労移行支援事業者は、毎年度、利用者の就職の状況を都道府県知事に報告しなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第182条第3項
この報告は、就労移行支援の基本報酬の区分(就労定着者の割合)の算定にも関係する。報告した就職状況をもとに、翌年度の報酬区分が決定されるため、正確な記録と報告が重要になる。
求人開拓と関係機関との連携(第183条)
第183条では、事業所が関係機関と連携して求人開拓に努めることが求められている。
第百八十三条 指定就労移行支援事業者は、関係機関等と連携を図ることにより、利用者に係る求人の開拓に努めなければならない。
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第183条
求人開拓は「努めなければならない」とされており、具体的な実施方法は事業所の判断に委ねられている部分が大きい。ハローワークや企業への訪問、就職フェアへの参加などが実務的な取り組みの例になる。
就職・定着支援で残すべき記録
就労移行支援の就職・定着支援では、次の記録を残しておくことが実務上求められる。
| 支援の段階 | 記録の内容 |
|---|---|
| 実習前・中・後 | 実習先の名称・実習の内容・利用者の状況・実習後の評価 |
| 求職活動 | ハローワーク等との連絡調整の記録・応募状況・面接の結果 |
| 就職後6か月 | 相談内容・支援内容・利用者の状況・職場との調整記録 |
| 就労定着支援への移行 | 引き継ぎの日時・就労定着支援事業所の名称・引き継ぎ内容 |
| 年度末 | 都道府県への就職状況報告の内容 |
個別支援計画には、就職・定着支援に関する目標と支援内容が明記されることが基準上求められており(第58条)、計画と記録が対応していることが運営指導では確認される。
就職・定着支援は基本報酬の区分にも直結する
就労移行支援の基本報酬は、前年度の就労定着者の割合によって7区分に分かれており、割合が高いほど報酬が高くなる仕組みになっている(留意事項通知)。定員20人以下の場合、最高区分(80%以上)では1日1,210単位、最低区分(40%未満)では479単位と、約2.5倍の差がある。
就職後の定着支援の質を高めることが、翌年度の報酬区分に直接影響するため、定着支援の記録と支援の内容を丁寧に積み上げることが経営上も重要になる。
就労移行支援版 法定研修・訓練キット
就労移行支援版の法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-ikou/)では、この就職活動と職場定着の支援(基準 第174条・第180条〜第183条)をテーマにした研修資料・確認テスト・受講記録を作成できる。就労移行支援だけのテーマとして収録しており、職員が基準の要求を理解して支援に当たるための研修として使える。
義務5テーマ(虐待防止・身体拘束・感染症・BCP・非常災害)に加えて、就職活動と職場定着の支援を含む計12テーマ。無料版では虐待防止の1テーマを使えて、有料版(買い切り14,800円)で全テーマが使える。
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