粉末消火薬剤は吸湿と固結で劣化する
粉末消火器に充填されている薬剤は、空気中の水分を吸って固まる「固結」が主な劣化原因です。固結が起きると、放射時に薬剤がノズルを詰まらせ、充填量の90%以上を放射するという規格(消火器の技術上の規格を定める省令 第9条)を満たせなくなります。
劣化のメカニズムは大きく3つあります。
- 吸湿:消火器のキャップやホースの接続部から微量の湿気が入り込み、薬剤の粒子表面に水分が付着する
- 固結:水分を吸った粒子同士が結合し、粉末がケーキ状に固まる。一度固結すると振っても崩れにくくなる
- 分離(偏析):加圧式消火器では、ガス放出時の振動で粒子サイズが不均一になり、放射性能が低下することがある
再充填できる粉末薬剤の判定基準
機能点検で消火器を放射試験した後、薬剤を再充填できるかどうかの判断は、消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第28号)の基準によります。再充填が認められる条件は以下のとおりです。
- 含水率が2%以下であること
- 固結・変色・異臭がないこと
- 薬剤の種類(ABC・BC等)が消火器本体の表示と一致していること
- 規格省令の品質基準を満たしていること
含水率2%という数値は試験にも頻出です。2%を超えた薬剤は再利用できず、廃棄して新しい薬剤に交換します。
含水率の測定と現場での判断
現場での含水率測定には水分測定器を使います。測定機器がない場合は目視・触感での簡易確認(指で押しても崩れない・カビ臭がある等)が補助的に使われますが、正確な判断には測定器が必要です。疑わしい場合は廃棄が原則です。
放射量の基準は充填量の90%以上
消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第9条は、放射量を充填量の90%以上と規定しています。機能点検の放射試験では、この基準を満たしているかを確認します。薬剤が固結していると放射が途中で止まり、90%を下回ることがあります。この場合は薬剤を交換します。
粉末薬剤の保管条件
詰め替え用の薬剤を保管する場合、以下の条件を守ることで劣化を防げます。
- 密封容器:開封後は空気に触れさせない。湿気の侵入を防ぐため蓋を確実に閉める
- 温度管理:高温(目安として40℃以上)の環境では吸湿が加速しやすいため、冷暗所に保管する
- 直射日光を避ける:日光による温度上昇が薬剤の変質を促進することがある
- 他の薬剤との混合禁止:ABC粉末とBC粉末は外見が似ているが成分が異なる。混合すると品質基準を満たさなくなる
ABC粉末とBC粉末の劣化特性の違い
| 薬剤の種類 | 主成分 | 色 | 適応火災 | 劣化の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種粉末(ABC) | りん酸塩類等 | 淡紅色 | A・B・C火災 | 吸湿で固結しやすい。他の薬剤との混合で性能が変わる |
| 第二種粉末(BC) | 炭酸水素ナトリウム | 白色 | B・C火災 | ABC粉末より固結しにくいが、水分には同様に弱い |
| 第三種粉末(BC) | 炭酸水素カリウム | 紫色 | B・C火災 | 第二種と同様。色で種類を区別する |
薬剤の種類は色と成分で識別します。詰め替え時に誤った種類の薬剤を充填すると、消火性能の低下や規格違反につながります。
劣化した薬剤の対処:詰め替えか交換か
薬剤が劣化していると判断した場合の対処は次のとおりです。
- 含水率2%以下・固結なし:放射試験後に同じ薬剤を再充填できる
- 含水率2%超・または固結あり:薬剤を廃棄し、新しい薬剤を充填する(詰め替え)
- 消火器本体が劣化している場合:薬剤だけでなく消火器ごと交換する(廃棄判定の8条件に該当する場合)
薬剤の詰め替えは乙6の整備業務に含まれます(消防法第17条の5・施行令第36条の2)。整備ができるのは消防設備士(乙6以上)のみで、点検資格者は整備を行えません。
試験での出題パターン
乙6の試験では、薬剤の劣化・保管に関して以下のパターンで出題されることがあります。
- 「粉末薬剤の再充填が認められる含水率の上限は何%か」→ 2%
- 「放射量は充填量の何%以上でなければならないか」→ 90%以上(規格省令 第9条)
- 「薬剤の固結が確認された場合、どう処理するか」→ 廃棄して新しい薬剤と交換する
- 「ABC粉末とBC粉末を混合して使用してよいか」→ 不可(品質基準を満たさなくなる)
数値(2%・90%)は根拠の規格省令とセットで覚えると、選択肢を絞り込みやすくなります。
まとめ
粉末消火薬剤の劣化は、吸湿による固結が主な原因です。再充填できるかどうかの判断基準は含水率2%以下で、放射量は充填量の90%以上が規格です(消火器の技術上の規格を定める省令 第9条)。保管時は密封・冷暗所・種類の混合禁止が基本です。乙6の試験では含水率2%と90%放射の数値を問う問題が出るため、根拠となる規格省令とあわせて整理しておきましょう。


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