粉末消火設備は、粉末状の消火薬剤を窒素ガスで加圧放出して消火する設備です。消防設備士 甲種第3類(以下、甲3)の試験では、4種類の粉末消火薬剤の特徴・適応火災・薬剤量計算・各部品の機能が筆記と製図で問われます。粉末消火設備はA・B・C火災すべてに対応できる第3種粉末(ABC粉末)が最も広く使われており、適応火災の違いが試験の頻出ポイントです。
この記事では、甲3の試験で出る粉末消火設備の知識を整理します。
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粉末消火設備の消火の仕組み。抑制消火が主体
粉末消火設備の主な消火原理は「抑制消火(負触媒効果)」です。粉末粒子が燃焼の連鎖反応(ラジカル反応)を妨げることで消火します。副次的に窒息消火(粉末が燃焼面を覆う)や冷却効果もあります。
粉末消火設備の特徴は次のとおりです。
- 水を使わないため、電気設備や油火災(B火災)に使える
- 消火速度が速い(瞬間消火に近い)
- 消火後に粉末が残るため、精密機器のある場所では清掃が必要
- CO2設備やハロゲン化物設備と比べて安価で、汎用性が高い
4種類の粉末消火薬剤の違い。試験で必ず出る分類
粉末消火薬剤は主成分によって第1〜第4種に分類されます。試験では各種の主成分・適応火災・薬剤量の違いが問われます。
| 種別 | 主成分 | 化学式 | 適応火災 | 単位体積あたり薬剤量(全域放出) |
|---|---|---|---|---|
| 第1種(炭酸水素ナトリウム) | 炭酸水素ナトリウム | NaHCO₃ | B火災・C火災 | 0.60kg/m³以上 |
| 第2種(炭酸水素カリウム) | 炭酸水素カリウム | KHCO₃ | B火災・C火災 | 0.36kg/m³以上 |
| 第3種(ABC粉末) | リン酸二水素アンモニウム | NH₄H₂PO₄ | A火災・B火災・C火災 | 0.36kg/m³以上 |
| 第4種 | 炭酸水素カリウムと尿素の反応物 | ― | B火災・C火災 | 0.24kg/m³以上 |
覚えるべき重要点は次の2点です。
- A火災(普通火災・木材・紙等)に対応できるのは第3種(ABC粉末)だけ
- 第4種は量が最も少なく(0.24kg/m³)消火性能が最も高い。ただしA火災には使えない
第1種は量が多く(0.60kg/m³)て古い規格の薬剤です。第4種は消火性能が高く少量で済みますが、コストが高い特徴があります。
粉末消火設備の構成機器
粉末消火設備は次の機器で構成されます。CO2消火設備と異なり、粉末薬剤を加圧して送り出すための「蓄圧式または加圧式」の機構があります。
| 機器名 | 役割 |
|---|---|
| 薬剤貯蔵容器 | 粉末消火薬剤を貯蔵する。蓄圧式(容器内に加圧ガスを封入)または加圧式(使用時に加圧ガスを導入)がある |
| 加圧用ガス容器 | 加圧式の場合、粉末を放出するための窒素ガスを貯蔵する容器 |
| 起動用ガス容器 | 加圧式で容器弁を開放するためのガスを貯蔵する |
| 定圧作動装置 | 薬剤貯蔵容器内が所定の圧力になったときに放出弁を開く装置 |
| 選択弁 | 複数の防護区画に対応する場合に区画を選択する |
| 集合管 | 複数の薬剤貯蔵容器の出口をまとめる |
| 配管・管継手 | 粉末薬剤を輸送する |
| 噴射ヘッド | 粉末薬剤を防護区画に放出する |
| クリーニング装置 | 使用後の配管内の粉末を除去する |
蓄圧式と加圧式の違い
粉末消火設備の薬剤貯蔵容器には蓄圧式と加圧式があります。
| 方式 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 蓄圧式 | 薬剤貯蔵容器にあらかじめ窒素ガスを封入しておく方式 | 構造がシンプル。圧力ゲージで内圧を確認できる。小容量に向く |
| 加圧式 | 使用時に別の加圧用ガス容器から窒素ガスを導入して加圧する方式 | 薬剤の経年劣化(固結)を防ぎやすい。大容量・大規模設備に向く |
蓄圧式は圧力ゲージで内圧の確認ができるため点検が容易です。加圧式は薬剤貯蔵容器を開けずに薬剤の状態を維持できますが、使用時に定圧作動装置が正確に動作することが重要です。
薬剤量計算(全域放出方式)の基本
粉末消火設備の全域放出方式での薬剤量計算は次の式で行います。
消火薬剤量(kg)=防護区画体積(m³)×単位体積あたり薬剤量(kg/m³)+開口部補正量(kg)
開口部補正量は開口部の面積(m²)×単位面積あたりの補正量(kg/m²)で求めます。補正量は問題文で与えられます。
計算例(第3種粉末・単位体積あたり薬剤量0.36kg/m³の場合):
- 防護区画体積:縦12m×横8m×高さ3m=288m³
- 基本薬剤量:288×0.36=103.68kg
- 開口部補正(開口部2m²・補正量2.0kg/m²):2×2.0=4.0kg
- 合計消火薬剤量:103.68+4.0=107.68kg
粉末消火設備の設置対象
粉末消火設備は、特定の用途の防火対象物で消防法施行令によって設置が義務付けられています。駐車場・航空機格納庫・工場の一部など、水を使えない・使いにくい場所で粉末消火設備が選ばれます。
粉末消火設備が選ばれる理由は、CO2設備より安価で、A火災(第3種を使う場合)から油火災(B火災)・電気火災(C火災)まで広く対応できるためです。
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出典:消防法施行令・消防法施行規則・粉末消火薬剤の規格を定める省令(昭和49年自治省令第26号)。
作成日:2026年11月5日

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