移動式クレーン 過巻防止装置の設置義務と作動原理

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過巻き(過巻)とは、ワイヤロープを巻き上げすぎてフックがシーブ(滑車)に衝突する事故です。重大な破損・墜落につながるため、クレーン等安全規則では巻過防止装置の設置を義務づけています。仕組みと条文を整理します。

過巻き事故とは

巻き上げ操作を止め忘れたり、自動停止が効かなかったりすると、フックブロックがドラム付近のシーブ(滑車)に衝突します。この状態を「過巻き(過巻)」と呼び、次の被害が生じます。

  • ワイヤロープの切断
  • フックブロックの落下・吊り荷の墜落
  • ジブや主要構造部分の変形・破損
  • 重大な労働災害(死亡事故)

設置義務の根拠条文:クレーン則第24条

クレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)第24条はこう定めています。

「事業者は、移動式クレーンには、巻過防止装置を備えなければならない。」

「巻過防止装置」が正式名称です(「過巻防止装置」は通称)。試験では「巻過防止装置」と記載されることが多いため、両方の表記に慣れておきましょう。

作動原理

フックが上限位置に達すると、装置がワイヤの動きを検知して巻き上げ動作を自動停止させます。主な方式は以下の2種類です。

種類 仕組み
重錘形(ウエイト式) フックブロックが上昇すると重錘(おもり)が持ち上げられ、リミットスイッチが切れて停止
スクリュー形(回転式) ドラムの回転数をスクリューで計測し、一定回転数(巻き上げ量)に達すると停止

どちらの方式も「電気回路を遮断してモーターを止める」点は共通です。機械的なブレーキとは別に作動します。

故障時・誤作動時の対応

  • 巻過防止装置が作動しなくなった場合、その移動式クレーンは使用禁止にして修理する
  • 誤作動(正常位置で止まってしまう)の場合も、安全が確認されるまで使用しない
  • 応急措置として手動操作に切り替えることがあるが、その際は十分な監視体制が必要

試験頻出ポイント

問い 正解
設置義務の根拠条文 クレーン等安全規則第24条
正式名称 巻過防止装置
装置の目的 過巻きを防ぎ、フックとシーブの衝突を防止
装置の種類 重錘形(ウエイト式)・スクリュー形
作動の仕組み リミットスイッチが切れて自動停止
故障した場合 使用禁止・修理する

出典:クレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)第24条 / 安全衛生技術試験協会 公表試験問題

巻過防止装置の法令上の位置づけ

クレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)では、「安全装置」の一つとして巻過防止装置の設置を義務づけています(第24条)。同条には「ただし、直働式のもの及び特別の事情がある場合で所轄都道府県労働局長の許可を受けたものについては、この限りでない」という例外が定められています。

直働式とは、ドラムとシーブが直接連結されており構造的に過巻きが起こりにくい方式をいいます。一般的な移動式クレーンはドラム巻き取り方式のため、例外に該当せず巻過防止装置の設置が義務です。

重錘形(ウエイト式)の詳細

重錘形は最も広く使われる巻過防止装置です。構造は次のとおりです。

  • フックブロックのワイヤに、「重錘(おもり)」が吊り下げられている
  • フックが上昇するとフックブロックが重錘に接触し、重錘が持ち上がる
  • 重錘に取り付けられたレバーがリミットスイッチを押し、電気回路を遮断
  • 巻き上げモーターが停止し、フックの上昇が止まる

試験では「重錘が持ち上げられることでリミットスイッチが作動する」という説明が正解です。「フックがシーブに接触することで停止する」は誤りです(接触前に止まるのが装置の役割)。

スクリュー形の詳細

スクリュー形(回転式)は、ドラムの回転数をスクリュー(雄ねじ)の直線運動に変換し、一定量の巻き上げでリミットスイッチを作動させる方式です。

  • ドラムが回転するとスクリューが回り、ナット部が軸方向に移動
  • ナットがリミットスイッチの接点に触れると、電気回路が遮断されて停止
  • フックの位置ではなく「巻き上げ量(回転数)」を基準にしているため、フックの重さによる影響を受けない

点検と保守の義務

巻過防止装置は月次自主検査の対象です(クレーン則第76条)。毎月1回、次の事項を確認します。

  • 空荷の状態でフックを巻き上げ、自動停止することを実際に試験(作動確認)
  • リミットスイッチの接点の摩耗・腐食がないか目視確認
  • 重錘形の場合、重錘のガイドワイヤ・取り付け部に異常がないか確認

装置が正常に作動しない場合、その移動式クレーンは直ちに使用を停止し、修理が完了するまで作業に使用してはなりません。

過負荷防止装置との違いと両装置の役割

巻過防止装置と混同しやすい装置として「過負荷防止装置」があります。両者の役割は異なります。

  • 巻過防止装置:フックの上昇量を制限し、物理的な衝突を防ぐ。荷重には関係しない
  • 過負荷防止装置:定格荷重を超えた荷重が加わると警報・自動停止させる。ロードセルで荷重を計測

試験では「巻過防止装置は荷重を検知するか」という問いが出ることがあります。正解は「検知しない(荷重ではなく位置・回転量を検知する)」です。荷重を検知するのは過負荷防止装置(クレーン則第25条で設置義務)です。二つの装置の目的・仕組みを区別して理解しておきましょう。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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