乙種危険物取扱者の資格は第1類から第6類に分かれています(消防法第13条の5)。各類で取り扱える危険物の性質が異なり、実務上の需要も違います。乙4(第4類)はガソリン・灯油など引火性液体を扱う資格で、受験者数が最も多い類です。乙4を軸に他の類を追加取得することで、幅広い施設の危険物取り扱いに対応できます。
乙種各類で取り扱える危険物の種類
| 類 | 危険物の種類 | 代表的な品目 |
|---|---|---|
| 第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸カリウム・過マンガン酸カリウム・硝酸カリウム |
| 第2類 | 可燃性固体 | 硫黄・赤りん・マグネシウム・固形アルコール |
| 第3類 | 自然発火性物質・禁水性物質 | カリウム・ナトリウム・黄りん・アルキルアルミニウム |
| 第4類 | 引火性液体 | ガソリン・灯油・軽油・重油・アルコール類・アセトン |
| 第5類 | 自己反応性物質 | ニトロセルロース・過酸化ベンゾイル・アジ化ナトリウム |
| 第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸・過酸化水素・硝酸・発煙硫酸 |
乙4の受験者数が多い理由
第4類(引火性液体)の危険物は産業上で最も広く使われる類です。次のような施設に乙4の有資格者が必要です。
- ガソリンスタンド(給油取扱所):ガソリン・軽油・灯油を取り扱う
- 自動車整備工場:ガソリン・灯油・潤滑油を取り扱う
- 化学工場・製造所:アセトン・アルコール類等を取り扱う
- タンクローリー等の移動タンク貯蔵所:ガソリン・灯油等を移送する場合、乙4以上の有資格者が乗車義務
- 倉庫・危険物倉庫:引火性液体を貯蔵する施設
就職・転職市場での需要が高く、取得者数が最も多い類です。消防試験研究センターの統計では乙4は毎年20万人超が受験しています。
乙種の試験免除の制度
乙種危険物取扱者の免状を1つ以上取得していると、次の類を新たに受験する場合に科目免除が受けられます(危険物取扱者試験規則第13条)。
科目免除の対象は「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学および基礎的な化学」の2科目です。残りは「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」(性質・消火)のみの受験となります。
性質・消火の問題数は10問で、合格ラインは6割(6問以上)です。法令・物理化学を免除できるため、2つ目以降の類は受験準備の負荷が大きく下がります。
甲種受験資格を得るための乙種の組み合わせ
乙種4種類以上を取得することで甲種受験資格を得られますが、取得する類の組み合わせに条件があります(危険物取扱者試験規則第5条)。
次のいずれかを含む4種類以上を取得する必要があります。
- 組み合わせA:第1類、第2類または第3類、第4類、第5類または第6類を含む(第1・2・3・4類または第1・2・4・5類など)
- 組み合わせB:第1類、第5類、第6類を含む組み合わせにさらに1類以上
乙4を含む組み合わせで甲種受験資格を得る場合の例をいくつか示します。
- 乙1・乙2・乙3・乙4(第1類+第2類+第3類+第4類)
- 乙1・乙4・乙5・乙6(第1類+第4類+第5類+第6類)
- 乙2・乙4・乙5・乙6(第1類がない→不可)
第1類を含まない組み合わせは基本的に甲種受験資格になりません。乙4を軸に甲種を目指す場合は乙1(第1類)をセットで取得するのが効率的です。
乙種各類の試験の難易度と合格率
乙種各類の合格率はおおむね50〜70%台で推移しています(消防試験研究センター公表値)。類によって難易度の差はありますが、乙4は学習テキストや問題集が充実しているため学習環境が整っています。
一般的に受験者から難しいとされる類は第5類(自己反応性物質)と第6類(酸化性液体)です。第5類は品目が多く、第6類は化学の知識が必要です。
第2類(可燃性固体)と第4類(引火性液体)は日常に近い物質を扱うため、イメージがつかみやすいとされています。
乙4の試験科目と合格基準
乙4の試験は3科目です。
| 科目 | 問題数 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問以上(60%) |
| 基礎的な物理学および基礎的な化学 | 10問 | 6問以上(60%) |
| 危険物の性質・火災予防・消火の方法 | 10問 | 6問以上(60%) |
全3科目でそれぞれ60%以上を取る必要があります。1科目でも60%未満になると不合格です。すべての科目で基準を上回ることが要件です。
試験でよく出る誤りのパターン
| 誤りの選択肢(例) | 正しい知識 |
|---|---|
| 「乙種の免状を1つ取得しても試験科目免除はない」 | 乙種を1つ取得済みの場合、次の類の受験で法令・物理化学が免除になります |
| 「第3類は可燃性固体の危険物の類である」 | 第3類は自然発火性物質・禁水性物質です。可燃性固体は第2類です |
| 「乙4の試験は全科目合計60%以上取れば合格」 | 乙4は各科目で個別に60%以上取る必要があります。合計ではなく科目ごとの基準です |
| 「乙1・乙2・乙3・乙4の4類取得で甲種を受験できる」 | 乙1・乙2・乙3・乙4は第1類を含む組み合わせなので甲種受験資格を得られます(正しい) |
| 「乙2・乙3・乙4・乙5の4類取得で甲種を受験できる」 | 第1類(乙1)を含まない組み合わせは甲種受験資格になりません |
試験対策のポイント
乙種各類の問題で出やすいのは次の3点です。
第1に各類が扱う危険物の種類(固体・液体・気体)と代表品目。第1類は酸化性固体、第4類は引火性液体、というように類と性質の対応関係が問われます。
第2に乙種免状を1つ取得した後の試験科目免除の仕組み。法令・物理化学が免除になる点は試験で出ます。
第3に甲種受験資格の組み合わせ条件。任意の4種類ではなく、第1類を含む特定の組み合わせが必要です。
乙種危険物取扱者の類ごとの取得を計画する
乙4を取得した後、追加で他の類を取得していくことで扱える危険物の範囲が広がります。乙種全6類(乙1〜乙6)をすべて取得すると、甲種と同様の範囲の危険物を扱えるようになります(立会い資格の範囲は乙種の制限あり)。
乙4取得後の受験で優遇されるケース:乙種の1種類を取得した人は、同じ乙種の受験時に「試験の一部免除」が受けられます(消防法施行規則第44条)。免除される科目は「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学及び化学」の2科目で、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」のみの受験で合格できます。
試験時間は15問・35分(全科目受験は35問・2時間15分)と短縮されます。乙4取得者が次の類を取る際は大幅に受験コストが下がります。
甲種危険物取扱者の受験資格
甲種は次のいずれかの条件を満たすと受験できます(消防法施行規則第44条・第45条)。
- 大学等で化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 乙種4種類以上を取得している者(4類を含み、次の組み合わせが必要:第1類または第6類・第2類または第4類・第3類・第5類)
- 化学工業品等の製造・取り扱いに関する2年以上の実務経験がある者
「乙4を取得すれば自動的に甲種を受験できる」という誤解があります。乙4だけでは甲種の受験資格を満たしません。乙種4種類以上(所定の組み合わせ)が必要です。
乙種の合格基準
乙種(全類共通)の合格基準は各科目で60%以上の正答率です。ただし1科目でも60%を下回ると不合格になります(消防法施行令第13条・消防法施行規則第44条)。全科目の合計点が60%以上でも、1科目が60%未満なら不合格という「足切り制度」があります。
乙種受験の一部免除制度の活用
乙種の一部免除制度(1種類取得後の他の類の受験で2科目免除)を活用すると、追加の類の合格が格段に容易になります。乙4取得者が次の類を受験する際の実態は次のとおりです。
免除後の試験:「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」15問のみ・35分で受験。合格基準は9問以上(60%以上)です。試験時間が短く、問題数が少ないため短期間の準備でも合格しやすい試験です。
乙4の受験者が多い理由の一つは、乙4を足掛かりにして複数の類を取得し、最終的に甲種受験資格を得るというキャリアパスがあるためです。
危険物取扱者の受験統計
消防庁の発表によると、乙4は年間受験者が最も多い危険物取扱者の試験です(例年30〜40万人が受験)。甲種は年間受験者が約1〜2万人、丙種は約2〜3万人と乙4に比べると少ない規模です。合格率は乙4が約35〜38%程度、甲種が約35%程度と同水準です。
「乙4の合格率は他の乙種に比べて低い」という説があります。実際には乙4の受験者数が多いため平均的な準備不足の受験者が含まれやすい面がありますが、十分に準備すれば決して難しい試験ではありません。
乙種の免状取得後の仕事
乙4を取得することで就職・転職で有利になる職種があります。ガソリンスタンドのスタッフ(セルフスタンドの監視員含む)・危険物を使用する工場の安全管理担当・石油販売業・タンクローリードライバー等が代表的です。危険物取扱者の資格手当を設けている企業もあります。
乙4合格後の資格活用と転職・就職への影響
乙4は国家資格(消防法に基づく資格)であり、一度取得すれば生涯有効です(免状の有効期限なし)。資格証(免状)は紛失した場合に再交付申請ができます。
乙4を活かした就職先として多いのは次の業種です:ガソリンスタンド(給油取扱所の監視員・危険物取扱者として)・石油精製・石油化学工場(製造所の安全管理担当として)・タンクローリーなど輸送業(移動タンク貯蔵所の運転者として)・ホームセンター・薬品販売(販売取扱所の資格者として)。
試験では実務上の知識よりも消防法の条文知識が重視されます。試験合格後に実務に就いた場合は保安講習(3年以内)の受講も確認しましょう。
出典:消防法第13条の5・危険物取扱者試験規則第5条・第13条(乙種の種類・甲種受験資格・試験科目免除)(総務省・消防庁)


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