居宅介護支援の初回加算【300単位】算定要件と算定漏れを防ぐ管理方法

介護

居宅介護支援の初回加算は、新規の利用者に対して初めてケアプランを作成した月に算定できる1回限りの加算です。単位数は300単位(1単位10円換算で3,000円)で、算定には条件があります。算定できるケース・できないケースと実務上の注意点を整理します。

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初回加算の基本要件

初回加算の算定要件は次の通りです(平成12年厚生省告示第20号・令和6年度改定後)。

  • 当該事業所において、初めて居宅サービス計画を作成した利用者であること
  • 当該月に居宅サービス計画を作成(または変更)していること
  • 基本報酬(居宅介護支援費)を算定している月であること

「初めて」の解釈については、同一事業所に以前も登録していた利用者が、一定期間サービスを利用していない状態から再登録した場合も「初回」として算定できる場合があります。ただし、この判断は市区町村・都道府県によって取扱いが異なる場合があるため、確認が必要です。

初回加算が算定できないケース

次のケースでは初回加算を算定できないことがあります。

  • 同一事業所からの担当変更:同じ事業所内でケアマネジャーが変わった場合(利用者は同一事業所にそのまま登録しているため「初回」とは見なされない)
  • 他事業所から転入した利用者:他の居宅介護支援事業所から転入してきた場合、当該事業所での初回加算は算定可能ですが、転入元事業所での算定有無は関係しません
  • 施設入所後に在宅に戻った場合:以前同じ事業所で担当していた利用者が施設入所後に退所して再び担当になった場合の取扱いは、自治体によって確認が必要です

初回加算の算定手続き

初回加算は毎月の介護報酬請求の際に、居宅介護支援費に加算する形で算定します。特別な届出は不要です。ただし、算定の根拠として次の内容を記録・管理しておくことが重要です。

  • 利用者の担当開始日(居宅サービス計画の初回作成日)
  • 同一事業所での担当が「初めて」であることを確認した記録
  • 居宅サービス計画書(第1表〜第7表)の作成・交付の記録

実地指導では、算定した月と実際の担当開始日の整合性が確認されます。担当開始日の管理は電子台帳・ファイル等で正確に行うことが重要です。

他の加算との同月算定の可否

初回加算は、基本報酬(居宅介護支援費)に加えて他の加算と同月に算定できます。特に次の加算との組み合わせが多いです。

初回加算と同月に算定しやすい加算の組み合わせ
加算名 同月算定の考え方
退院・退所加算 入院・施設入所から退院・退所して在宅に戻った際に初めてその事業所で担当する場合、退院退所加算と初回加算を同月に算定できる可能性がある
特定事業所加算 特定事業所加算は全利用者に毎月算定するため、新規利用者にも算定。初回加算との重複算定は可能
入院時情報連携加算 同月内に入院が発生した場合は同月算定が可能だが、初回加算の月に入院するケースは実務上少ない

初回加算の収入への影響

月に新規利用者を3〜5人受け入れる体制が整った場合の初回加算の収入への影響は次の通りです(1単位10円換算)。

  • 月3件:300単位×3=900単位=9,000円(年間:約108,000円)
  • 月5件:300単位×5=1,500単位=15,000円(年間:約180,000円)

年間で10〜18万円の収入増加は、人件費率が高い居宅介護支援の事業所にとって無視できない金額です。特に開業後の立ち上げ期は新規利用者が毎月数件増えるため、初回加算の算定頻度が高い時期でもあります。算定漏れがないよう請求チェックの仕組みを整えることが重要です。

初回加算の算定漏れを防ぐ管理方法

初回加算の算定漏れは、利用者の担当開始日を把握できていない場合に発生しやすいです。次の管理方法が有効です。

  • 利用者台帳(担当開始日を必ず記載):担当開始月を一覧で管理し、初回加算を算定した月を記録する
  • 請求前チェックリスト:当月の新規利用者について初回加算を算定しているかを確認するチェック項目を請求業務のフローに組み込む
  • 国保連への請求データとの照合:請求データに初回加算が含まれているかを毎月確認する

国保連の請求ソフト(ケアマネジャーが使う請求システム)では、初回加算のコードを選択することで算定できます。新規担当開始時に請求ソフトに初回加算のフラグを立てる手順を標準化することが、算定漏れを防ぐ最も確実な方法です。

初回加算の返還リスクと実地指導での確認事項

初回加算を不適切に算定した場合、実地指導・監査で返還を求められるリスクがあります。特に注意が必要なのは次のケースです。

  • 同一事業所で以前に担当していた利用者に算定した場合(同一事業所での「初回」の解釈誤り)
  • 担当が交代した月に前任と後任の両方が算定した場合(同一事業所内での二重算定)
  • 担当開始日と居宅サービス計画の作成日が一致していない場合

実地指導では、利用者台帳・居宅サービス計画書の作成日・初回加算の算定月の整合性が確認されます。記録を正確に保管しておくことが返還リスクの回避につながります。

要支援者に対する初回加算の取扱い

要支援者のケアプランを作成するのは地域包括支援センターまたは地域包括から委託を受けた居宅介護支援事業所です。要支援者の初回加算は「介護予防支援費」の初回加算として算定されます。単位数は300単位で、要介護者の初回加算と同様です(確認は都道府県・市区町村の告示でご確認ください)。

要支援者の担当が居宅介護支援事業所に委託された場合も、その事業所での初めての担当であれば初回加算の算定が可能です。委託元の地域包括支援センターとの委託契約に基づく算定方法について、開業前に確認しておくことが重要です。

ケアプラン変更時と初回加算の関係

ケアプランを更新・変更した場合、初回加算は算定できません。初回加算は「同一事業所で初めてケアプランを作成した月」に1回限り算定できるものです。次回の認定更新・区分変更時にケアプランを作成する際も、すでに同一事業所での担当履歴がある場合は「初回」とは見なされません。

ただし、長期にわたって担当のない状態(事業所登録の終了後に再度登録した場合)については、自治体の判断によって「初回」として取り扱える場合があります。前述の通り、判断が迷うケースは市区町村の担当窓口に照会することをお勧めします。

月次の請求管理に初回加算を組み込む方法

介護報酬の請求業務を月次で行う際に、初回加算の算定漏れを防ぐための実践的な手順は次の通りです。

  1. 月初に新規担当利用者を確認する:その月に担当を開始した新規利用者の一覧を把握する
  2. 請求ソフトで初回加算を設定する:担当開始時に請求ソフトの当該利用者のデータに初回加算のフラグを立てる
  3. 請求データの確認:月末の請求前に、初回加算が正しく設定されているかを確認する
  4. 利用者台帳と照合する:台帳の「担当開始日」と請求データの「初回加算算定月」が一致しているか確認する

この手順を業務マニュアル化することで、担当者が変わっても算定漏れが生じない仕組みが作れます。

初回加算の返還事例と防止策

初回加算の不適切算定は、実地指導で発覚した場合に返還を求められます。実際に問題になりやすいケースと防止策を整理します。

  • ケース1:同一事業所内でケアマネが交代した際に算定してしまった
    防止策:ケアマネの担当変更は利用者台帳・請求ソフトに記録し、初回加算を算定しないルールを徹底する
  • ケース2:以前に担当したことがある利用者に算定してしまった
    防止策:担当開始時に利用者台帳(過去の担当履歴)を必ず確認する。担当履歴のない利用者にのみ算定する
  • ケース3:ケアプランの作成日前にアセスメントを行わずに算定した
    防止策:初回加算の算定月にアセスメント(居宅訪問)の記録があることを確認する。初回加算はアセスメントと同月であることを確認する

開業初年度の初回加算の算定見込みと収入計画

居宅介護支援事業所の開業後は、担当利用者が徐々に増加します。開業初年度の初回加算の算定見込みと収入への影響を試算します。

開業後の担当利用者数の増加ペースは事業所の立地・地域連携の状況によって異なりますが、一般的な目安として次のような推移が考えられます。

開業初年度の担当利用者数と初回加算の収入試算(参考)
月 新規担当利用者数 初回加算収入目安(1単位10円) 累計担当利用者数
1か月目 5人 15,000円 5人
2か月目 5人 15,000円 10人
3か月目 5人 15,000円 15人
6か月目 3〜5人 9,000〜15,000円 25〜30人
12か月目 2〜3人 6,000〜9,000円 35〜40人

上記は参考値であり、実際の増加ペースは地域の状況・営業活動の積極性により異なります。初年度合計で50〜60件程度の初回加算算定ができれば、年間15〜18万円の初回加算収入が見込めます。

初回加算に関するよくある質問

Q:要介護から要支援に変更になった場合、初回加算は算定できますか?

A:要介護から要支援へ認定が変わった場合、居宅介護支援から介護予防支援(地域包括支援センターまたは委託)に担当が変わります。このため、事業所での担当が終了します。その後、再び要介護に変わって同じ事業所が担当した場合の初回加算の算定可否は、自治体の判断によって異なります。担当窓口に確認することをお勧めします。

Q:利用者が亡くなって、その配偶者を新たに担当することになった場合、初回加算は算定できますか?

A:算定できます。別の利用者を新たに担当することになった場合、その利用者は「当該事業所で初めて担当する」利用者になります。

Q:ショートステイ(短期入所)から在宅に戻る場合、初回加算は算定できますか?

A:ショートステイ中も居宅介護支援事業所との契約は継続しているため、ショートステイから在宅に戻る場合は「初回」とは見なされません。初回加算は算定できません。

初回加算と開業時の収支計画における位置づけ

居宅介護支援事業所の収支を計画する際、加算収入の位置づけを明確にしておくことが重要です。初回加算は「安定的な収入」ではなく「開業期に多く発生する一時的な収入」として計画するのが正確です。

開業後1〜2年は新規利用者の受け入れペースが高いため初回加算の算定頻度が高くなりますが、担当利用者数が安定してきた段階では初回加算の算定件数は減少します(既存利用者の入れ替わり分のみになるため)。収支計画を立てる際は、開業期と安定期で初回加算の見込み額を分けて試算することをお勧めします。

なお、特定事業所加算(Ⅰ〜A)は全担当利用者に毎月算定できるため、担当件数が増えるほど安定的な収入として機能します。開業後の中期的な収入安定化を目指す上では、特定事業所加算の算定区分を意識した体制整備も重要な経営課題です。

初回加算の今後の改定動向

令和8年6月の介護報酬改定では、居宅介護支援の基本報酬・特定事業所加算の単位数が見直されました。初回加算(300単位)については令和8年6月時点で変更はありませんが、今後の改定動向を継続的に確認することが重要です。厚生労働省の審議会(介護給付費分科会)の動向を追うことで、改定の予兆を把握できます。介護給付費分科会の資料・答申はe-Govや厚生労働省のウェブサイトで公開されています。居宅介護支援の事業者として、改定情報を定期的にチェックする習慣を持つことをお勧めします。

参考・出典

  • 指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第20号)
  • 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)

この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。算定要件の詳細は市区町村の担当窓口でご確認ください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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