グループホームの身体拘束廃止未実施減算は10%。減算になる4つの条件、始まる月と終わる月、運営指導で指摘された例を原文で整理しました

グループホームの身体拘束廃止未実施減算は10%。減算になる4つの条件、始まる月と終わる月、運営指導で指摘された例を原文で整理しました 福祉事業の開業と運営

障害者グループホーム(共同生活援助)の身体拘束廃止未実施減算は、所定単位数の10%です。放課後等デイサービスや生活介護などの訪問・通所系(1%)の10倍にあたります。減算の条件は、身体拘束をしたときの記録、委員会の定期的な開催、指針の整備、研修の定期的な実施の4つで、どれか1つでも欠けると当てはまります。島根県の案内が挙げる条件のうち、委員会・指針・研修の3つは、身体拘束をしたかどうかに関係のない条件なので、一度も身体拘束をしていない事業所でも、欠けていれば当てはまります。

この記事では、国の虐待防止の手引き、基準の条文、共同生活援助ガイドライン、島根県の障がい福祉課の案内、高知市の集団指導資料の原文から、減算の大きさ、条件、始まる月と終わる月、運営指導で実際に指摘された例を整理します。

グループホームの減算は、所定単位数の10%

令和6年度の報酬改定で、施設・居住系は所定単位数の10%、訪問・通所系は1%になりました。手引きには、「施設・居住系サービスについて、身体拘束廃止未実施減算の減算額を5単位から所定単位数の10%に引き上げ」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.40)と書かれています。施設・居住系に入るサービスとして、手引きは次を挙げています。「施設・居住系:障害者支援施設(施設入所支援のほか、障害者支援施設が行う各サービスを含む)、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助、宿泊型自立訓練」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.41)

施設・居住系 訪問・通所系
減算の大きさ 所定単位数の10% 所定単位数の1%
主なサービス 共同生活援助(グループホーム)、障害者支援施設、療養介護、障害児入所施設、宿泊型自立訓練 居宅介護、生活介護、就労継続支援、児童発達支援、放課後等デイサービスなど
令和6年度より前 5単位 5単位

出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)、島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」

どのくらいの金額になるかは、事業所の報酬で変わります。仮に、減算の対象になる報酬が月200万円の事業所なら、10%は月20万円です。後で説明するとおり減算は数か月続くことがあるため、3か月なら60万円になります(仮の数字による計算です。何が所定単位数に入るかは、指定権者の案内で確認してください)。

記録・委員会・指針・研修のどれか1つでも欠けると減算になる

島根県の案内は、4つの運営基準のどれか1つでも満たさなければ減算になるとしています。「(1)~(4)の運営基準を満たさない場合に減算が適用されます(いずれか1つでも満たさない場合は減算になります)。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」) 4つを、根拠の条文とガイドラインの回数とあわせて並べました。

条件 条文(第35条の2。グループホームには準用) 回数などの目安
1 身体拘束をしたときの記録 態様と時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由などを記録する(第2項) 行ったときは必ず
2 委員会の定期的な開催と周知 対策を検討する委員会を定期的に開き、結果を従業者に周知徹底する(第3項第1号) 少なくとも年1回
3 指針の整備 身体拘束等の適正化のための指針を整備する(第3項第2号) 整備が必須
4 研修の定期的な実施 従業者に研修を定期的に行う(第3項第3号) 年1回以上。新規採用時には必ず

出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)、厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月)、島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」。表は、条文と共同生活援助ガイドライン(本文と別添1の表)、島根県の案内を当方が要約したものです。

条文の原文は次のとおりです。「身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第35条の2第3項第1号))「従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第35条の2第3項第3号)) 第35条の2は居宅介護の条文で、グループホームには第213条(日中サービス支援型は第213条の11、外部サービス利用型は第213条の22)で準用されます。

回数はガイドラインが示しています。「②身体拘束適正化検討委員会の定期開催(少なくとも年に1回)、③身体拘束等の適正化のための指針の整備、④研修の実施(年に1回以上)」(出典:厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月) p.42) 研修は、別添1の表で「新規採用時に必ず実施」とされています。

「年1回」の数え方にも注意が必要です。島根県は、「「1年に1回以上」とは、年度ではなく、直近1年で考えます。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」)としています。前の年度の4月に開いて、次の年度の3月に開いた場合、年度ではそれぞれ1回でも、間が1年を大きく超えます。委員会は、「身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会は、虐待防止委員会と一体的に設置・運営することも可能です。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」)とされ、法人単位での設置もできるとされています。

減算は、確認された月の翌月から、改善が認められた月まで(島根県の案内)

島根県の案内では、運営指導などで事実が確認された月の翌月から始まり、改善報告で改善が認められた月に終わります。「運営指導等により運営基準を満たしていない事実が確認された月の翌月が減算の適用開始月となります。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」)「運営基準を満たしていない事実が生じた場合、当課あてに速やかに改善計画を提出し、事実が生じた月から3月後に同計画に基づく改善報告を提出していただきます。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」)「当該改善報告により改善が認められた月が減算の終了月になります。」(出典:島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」)

この流れを月に当てはめると、次のようになります(島根県の案内に当てはめた例です)。

月(例) 起きること 減算
6月 運営指導で、委員会を1年以上開いていないことが確認される。すぐに改善計画を出す なし
7月 減算が始まる(確認された月の翌月)。委員会を開き、研修を行う あり
8月 改善を続ける あり
9月 事実が生じた月から3月後に、改善報告を出す。改善が認められれば、この月で終わる あり(終了月)

この例では、減算は7月から9月までの3か月になります。改善計画・改善報告の様式や手順は指定権者(都道府県・市)ごとに示されているため、所在地の案内を確認してください。

運営指導では、引き継いだ身体拘束や、一体で開いた委員会の中身が指摘されている

高知市の集団指導資料は、身体拘束について、運営指導で確認された不適切な事例を挙げています。やむを得ない身体拘束の記録について、次の例があります。

グループホームでは、入居前に別の施設や家庭で続けていた方法を、そのまま引き継いでしまうことが起こりえます。入居のときに、身体拘束に当たる方法がないかを確かめ、あれば事業所として三要件を確認して記録することが必要です。

委員会・研修・指針についても、次の例が挙げられています。

委員会を虐待防止委員会と一緒に開くことはできますが、高知市の資料では、両方の内容が検討されていないことが不適切な事例とされています。議事録には、身体拘束について検討したことが分かるように書きます。研修も同じです。

契約時の同意書があっても、手続きは省けない

高知市の資料は、あらかじめ契約時に同意書をもらっていた事業所について、こう注意しています。「当該同意書があるからといって安易に身体的拘束等を実施するのではなく、組織として緊急やむを得ない理由を確認する等の必要な手続きは必ず行ってください。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.13)

やむを得ず行うときは、3つの要件をすべて満たし、組織として判断します。「やむ得ず身体拘束を行う場合には、以下の3要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束を行う判断は組織的にかつ慎重に行います。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.39) 高知市の資料は、手続きを次の5つに分けて説明しています。

手続き(高知市の資料の見出し) すること
1 組織による決定 切迫性・非代替性・一時性の3要件すべてを満たすことを、組織として確認し、その手続きを行ったことを記録する
2 個別支援計画への記載 身体拘束の解消に向けた方針や、解消の時期の目標を書く
3 本人・家族への十分な説明 説明して了解を得て、その記録も残す
4 身体拘束をした際の記録 態様と時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由などを記録する
5 身体拘束の解消 委員会で事例を分析し、廃止へ向けた方策を検討する

出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け)(p.12)。表は原文の要約です。

記録がないことは、それだけで基準違反になります。ガイドラインは、「なお、必要な記録がされていない場合は、指定基準違反となることを認識しておく必要がある。」(出典:厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月) p.43)としています。高知市の資料は、話し合いの結果、身体拘束に当たらないとなった場合も、「その話し合いの内容を記録に残しておいてください。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.12)と求めています。

座位保持のベルトは目的で判断し、専門職の意見で使い方を決める

目的によって判断します。体の変形を防ぎ、姿勢を安定させるためのものは、一律に身体拘束とはされません。ガイドラインは、「身体の変形や拘縮を防止し、体幹を安定させることで活動性を高める目的で使用されるベルトやテーブルについては、一律に身体拘束と判断することは適当ではないため、目的に応じて適切に判断することが求められる」(出典:厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月) p.42)としています。

一方で、高知市の資料は、確かめ方が足りなかった例を挙げています。「身体の状態に合わせた座位保持装置や車椅子等について、家族等からオーダーメイドで作成したと聞いただけで、医師や理学療法士等に利用者の身体の状況等について確認をしていない。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.13) 同じ資料は、「座位保持装置等の使用に関しては、医師や理学療法士等の専門職の意見を踏まえ、座位保持装置等を使用する場面や目的・理由を明確にしておきましょう。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.13)としています。反対に、ベルトやテーブルを使ったまま長い時間そのままにすることは、身体拘束に当たる場合があります。「ベルトやテーブルをしたまま障害者をいすの上で漫然と長時間放置するような行為については身体拘束に該当する場合もあります。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.13)

1年のうちに、委員会・指針・研修・記録・担当者をそろえる

条文とガイドラインの回数から、少なくとも1年の間にそろえるものを並べました。

そろえるもの 目安 残す記録
身体拘束適正化検討委員会(虐待防止委員会と一体でも可) 少なくとも年1回(直近1年で数える) 身体拘束の検討が入った議事録と、職員への周知の記録
身体拘束等の適正化のための指針 整備し、委員会で見直す 指針(必要な項目がそろっているか確認)
研修 年1回以上。新しく入った職員には必ず 受講者・日付・内容の記録(虐待防止と一緒なら、両方の内容が入っていることが分かるように)
身体拘束をしたときの記録 行ったときは必ず 態様と時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由、組織で確認したこと、本人・家族への説明
身体拘束等の適正化対策の担当者 専任の担当者を決めておく(高知市の資料が措置として挙げている) 担当者の名前(指針や委員会の記録に)

出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)、厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月)、島根県 障がい福祉課「身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて」、高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け)。表は、条文・ガイドライン・島根県の案内・高知市の資料を当方がまとめたものです。

当方で作った「法定研修・訓練キット(障害者グループホーム版)」には、「身体拘束の適正化」の研修資料と確認テスト(10問・3要件、記録、10%の減算、座位保持の判断など)、受講の記録、身体拘束適正化委員会の議題案、条文の項目に沿った「身体拘束等の記録」の用紙があります。年間計画では、研修と委員会の予定を12か月の表にできます。身体拘束の研修・委員会は有料版の機能で、虐待防止のテーマは記録や印刷まで無料で使えます。法定研修・訓練キット(障害者グループホーム版)を開く

委員会の記録は、年1回の地域連携推進会議での報告の材料にもなります。

この記事の出典

作成:fufumumu_design(障害者グループホーム向けの開業収支シミュレーターと、法定研修・訓練キットの作成者)。2026年9月27日に、各出典の原文を確認して作成しました。引用は原文のまま(改行を除く)です。減算の開始・終了の手順と改善計画の様式は島根県の案内で、所在地の指定権者(都道府県・市)の案内を必ず確認してください。金額の例は仮の数字による計算です。引用した国・自治体の資料は当方が引用・整理したもので、各機関が作成したものではありません。当方は、行政書士・弁護士などの専門家ではありません。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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