問題をすぐに解いてみたい方は、こちらのアプリをご利用ください。
▶ 二級ボイラー技士 過去問アプリ(無料)
蒸気トラップは蒸気配管・蒸気機器に溜まるドレン(凝縮水)を自動的に排出し、蒸気は通さない自動弁です。蒸気の熱エネルギーを有効に使うためにドレンを素早く除去する必要があり、同時に蒸気そのものが排出されると熱損失が発生します。蒸気トラップはこの相反する要求を満たす重要な装置です。二級ボイラー技士試験では各方式の作動原理と特徴の違いが出題されます。
蒸気トラップの役割
蒸気配管の中を流れる蒸気は、配管壁やフランジからの放熱により一部が凝縮してドレン(水)になります。このドレンを放置すると次の問題が起きます。
- ドレンが蒸気流に乗って移動し、スチームハンマー(水撃)を引き起こす
- 蒸気機器(熱交換器・加熱コイル等)の入口にドレンが溜まり、熱交換性能が低下する
- 配管の腐食が促進される
蒸気トラップはドレンを自動排出することで、蒸気系統を蒸気だけが流れる状態に保ちます。
蒸気トラップの3分類
| 分類 | 代表的な方式 | 作動原理 |
|---|---|---|
| 機械式 | フロート式、バケット式(倒れバケット式) | 蒸気とドレンの密度差(浮力)を利用 |
| 温度差式(サーモスタティック式) | バイメタル式、ベローズ式(液封式) | 蒸気とドレンの温度差を利用 |
| 熱力学式(サーモダイナミック式) | ディスク式 | 蒸気とドレンの流速差・動圧差を利用 |
機械式蒸気トラップ
機械式は蒸気とドレンの密度差(ドレンは重い、蒸気は軽い)を利用して弁を開閉します。
フロート式蒸気トラップ
- 作動原理:ドレンが溜まるとフロート(浮子)が浮き上がり、連結した弁が開いてドレンを排出。ドレンが減るとフロートが下がって弁が閉まる
- 特徴:ドレンが入ってくる量に応じて連続的に排出する(連続排出型)。微量のドレンも素早く排出でき、ドレンの滞留が少ない
- 空気抜き機能:多くのフロート式トラップはバイメタル式の自動空気抜き弁を内蔵している。起動時の空気もスムーズに排出できる
- 設置方向:水平または指定の向きに設置する必要がある(フロートが正常に作動するため)
- 弱点:ウォーターハンマー(水撃)が発生しやすい環境ではフロートが損傷しやすい
バケット式蒸気トラップ(倒れバケット式)
- 作動原理:バケット(小型の容器)がドレンで満たされると倒れて弁が開き、ドレンを排出。蒸気がバケット内に入るとバケットが浮き上がり弁が閉まる
- 特徴:間欠排出型。蒸気の吹き出しが少ない(蒸気がバケットを浮かせて弁を閉める)ため、スチームロスが少ない
- 弱点:起動時の空気抜きに時間がかかる。ウォーターハンマーに弱い
温度差式(サーモスタティック式)蒸気トラップ
温度差式は蒸気温度と飽和温度以下のドレン温度の差を利用して弁を開閉します。
バイメタル式蒸気トラップ
- 作動原理:熱膨張係数の異なる2枚の金属板を貼り合わせたバイメタルが温度変化で反り返ることで弁を開閉する。低温(ドレン)では弁が開き、高温(蒸気)では弁が閉まる
- 特徴:ドレンを飽和温度よりも低い温度で排出する(過冷却排出)。サブクール(過冷却)があるため蒸気の吹き抜けが少ない
- 耐ウォーターハンマー性:可動部品が少なく堅牢なため、ウォーターハンマーに強い
- 設置自由度:取付方向を選ばない
ベローズ式蒸気トラップ(液封式)
- 作動原理:ベローズ(蛇腹状の薄い金属容器)の中に揮発性液体が封入されている。温度が上がるとベローズ内の液体が蒸発してベローズが膨張し、弁を閉じる。温度が下がるとベローズが収縮して弁を開きドレンを排出する
- 特徴:飽和温度よりも低い温度でドレンを排出する過冷却排出型。空気も同様に排出できる
- 弱点:ベローズが疲労で破損すると蒸気が常時吹き抜ける(開固着)になる
熱力学式蒸気トラップ(ディスク式)
- 作動原理:ディスク(円盤状の弁体)の上下で発生する流速差(ベルヌーイの定理)を利用する。ドレンが流れるときは流速が低く弁下の圧力が高まりディスクが押し上げられて排出。蒸気が流れるときは高速流でディスク上面の圧力が下がり、ディスクが吸い付けられて弁が閉まる
- 特徴:構造が極めてシンプル(可動部品はディスクのみ)でコンパクト。高圧蒸気でも使用可能。間欠排出型(カチッカチッという音がする)
- 弱点:背圧(排出側の圧力)が入口圧力の50%を超えると正常に作動しない。凍結しやすい環境には不向き
各方式の比較まとめ
| 比較項目 | フロート式 | バケット式 | バイメタル式 | ディスク式 |
|---|---|---|---|---|
| 排出方式 | 連続 | 間欠 | 間欠(過冷却) | 間欠 |
| 蒸気ロス | 少ない | 少ない | ほぼなし | 少ない |
| 空気排出 | 容易(内蔵弁) | 不得意 | 容易 | 可能 |
| ウォーターハンマー耐性 | 弱い | 弱い | 強い | 強い |
| 構造 | やや複雑 | 比較的単純 | シンプル | 最もシンプル |
| 高圧への対応 | 中圧まで | 中圧まで | 中圧まで | 高圧まで可 |
設置場所と選定のポイント
- 蒸気トラップは蒸気配管の最低部・蒸気機器の出口(ドレン出口)に設置する
- 設置数が多い配管網では、メンテナンス性(分解清掃・交換しやすさ)も選定基準になる
- 過冷却排出が必要な場面(蒸気ロスを極限まで減らしたい)にはバイメタル式またはベローズ式を選ぶ
- 起動時の空気排出を重視するならフロート式(空気弁内蔵)が適する
試験で間違えやすいポイント
- 「フロート式は間欠排出型」は誤り。フロート式は連続排出型
- 「バイメタル式はウォーターハンマーに弱い」は誤り。可動部が少なく強い
- 「ディスク式は連続排出型」は誤り。間欠排出型(カチカチ音)
- 「蒸気トラップは蒸気と空気を通し、ドレンだけを止める」は誤り。逆(ドレンを通し、蒸気を止める)
この記事のまとめ
- 蒸気トラップ=ドレンを自動排出し蒸気は通さない自動弁。蒸気品質維持とスチームハンマー防止に必須
- 機械式(フロート・バケット):密度差利用。フロート式は連続排出型
- 温度差式(バイメタル・ベローズ):温度差利用。過冷却排出。ウォーターハンマーに強い
- 熱力学式(ディスク):流速差利用。構造最シンプル・高圧対応・間欠排出型
出典:ボイラー及び圧力容器安全規則(e-Gov法令検索)・ボイラー構造規格(昭和47年労働省告示第33号)・安全衛生技術試験協会 公表試験問題
作成:fufumumu_design|更新:2026年11月
問題をすぐに解いてみたい方は、こちらのアプリをご利用ください。
▶ 二級ボイラー技士 過去問アプリ(無料)

コメント