障害福祉サービスの収支差率R5→R6の変化、改善したサービスと悪化したサービス

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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)と前年度(令和5年度)のデータを比較すると、令和6年4月の報酬改定後に収支差率が改善したサービスと悪化したサービスがはっきりと分かれています。

7サービスの収支差率R5→R6変化一覧

サービス R5平均 R6平均 変化 R5中央値 R6中央値 変化
放デイ 7.9% 9.1% +1.2pt 0.4% 2.7% +2.3pt
GH包括型 5.0% 6.9% +1.9pt 5.6% 5.3% -0.3pt
児発 8.1% 7.8% -0.3pt 4.6% 9.7% +5.1pt
生活介護 7.1% 6.3% -0.8pt 7.7% 7.9% +0.2pt
GH日中型 6.8% 5.1% -1.7pt 7.3% 5.9% -1.4pt
就労移行支援 8.2% 6.0% -2.2pt 6.0% 4.5% -1.5pt
短期入所 5.4% 2.3% -3.1pt 6.8% 2.8% -4.0pt

放デイ・GH包括型は平均・中央値ともに改善傾向、就労移行支援・短期入所・GH日中型は悪化傾向がはっきり出ています。

改善したサービスの背景

放デイ(平均+1.2pt・中央値+2.3pt):令和6年4月改定で専門的支援実施加算が整理・拡充されました。特に中央値が0.4%から2.7%へ大幅改善しており、多くの事業所が改定の恩恵を受けたことを示しています。

GH包括型(平均+1.9pt):令和6年改定でGHの夜間支援等体制加算や重度障害者支援加算が見直されました。社会法人・NPO中心の事業所が加算収入を増やした可能性があります。

児発(中央値+5.1pt):中央値の大幅改善(4.6%→9.7%)は、令和6年改定での児童発達支援の加算体系の見直しにより、多くの事業所の収支が改善したことを示しています。一方で平均値(8.1%→7.8%)はわずかに低下しており、収支の「均質化」が進んでいる可能性があります。

悪化したサービスの背景

短期入所(平均-3.1pt・中央値-4.0pt):令和6年度は最大の悪化幅です。令和6年改定での短期入所の報酬体系の変化(区分に応じた報酬の見直し)が影響した可能性があります。中央値6.8%→2.8%という4ポイントの低下は、多くの事業所で収支が悪化したことを示しています。

就労移行支援(平均-2.2pt・中央値-1.5pt):令和6年改定で就労移行支援の加算体系が見直され、一部の加算が変更になりました。また、就職実績(定着率)に応じた加算の要件が厳しくなった可能性も収支差率の低下に影響しています。

GH日中型(平均-1.7pt・中央値-1.4pt):日中型は令和6年改定で日中支援の体制要件が厳しくなった可能性があります。人件費の増加(日中支援員の追加配置)が収支を圧迫している可能性も考えられます。

平均値と中央値の変化から見えること

収支差率の変化を見る際、平均値と中央値の両方を確認することが重要です。平均値は高収益事業所・赤字事業所の影響を受けやすく、中央値は「多くの事業所が属する水準」を示します。

放デイ:中央値2.3pt改善が示す全体的な底上げ
平均1.2pt・中央値2.3ptの改善は、一部の高収益事業所だけでなく、多くの事業所で収支が改善したことを示します。令和6年改定での専門的支援実施加算の拡充が幅広い事業所に届いた可能性があります。

児発:中央値5.1pt改善・平均は小幅低下
中央値が4.6%→9.7%と大幅改善する一方、平均値は8.1%→7.8%とわずかに低下しています。これは「中間層の事業所の収支は改善したが、高収益事業所の収支差率は下がった」という分布の変化を示します。

短期入所:平均・中央値ともに大幅悪化
中央値4.0ptの低下は「短期入所の多くの事業所で収支が悪化した」ことを意味します。一部の事業所だけでなく業界全体の問題として、令和6年改定の影響を受けていると考えられます。

収支差率の変化と自事業所の経営診断

自事業所の収支差率が、全国平均の変化トレンドと比べてどう動いているかを確認することが重要です。

  • 全国平均が改善したのに自事業所が悪化した場合 → 自事業所固有の課題(稼働率低下・加算取得できなかった等)を特定する
  • 全国平均が悪化したのに自事業所も悪化した場合 → 改定による業界全体の影響と、自事業所の個別要因を切り分けて確認する
  • 全国平均が悪化したのに自事業所が改善した場合 → 改善策が効果を出しているサインとして、その取り組みを継続する

令和6年度の収支差率を前年度と比較することで、報酬改定の影響を受けながら自事業所の経営がどう動いたかを客観的に把握できます。

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令和8年改定に向けて今から準備すること

令和6年4月改定(3年ごと)の次は令和9年4月改定が予定されています(通常サイクル)。令和6年改定では就労移行支援・短期入所が大きく影響を受けました。次回改定でどのサービスに影響が出るかを予測するのは難しいですが、R5→R6の変化データは「改定の波がサービスによって異なる」という重要な教訓を示しています。

現時点でできる準備は次のとおりです。

  • R6年度の収支差率を確定させる:自事業所のR6年度の実績収支差率を計算し、全国平均(R6)と比較する。この比較から「自事業所が改定の波にどう乗ったか」を客観的に把握できます
  • 加算の要件変更に敏感になる:令和6年改定後の加算の算定状況を確認し、取れていない加算の理由(人員要件・実績要件等)を把握する。次回改定での要件変更に備え、現時点で取れる加算は確実に取っておきます
  • 稼働率を中長期で安定させる:報酬単価が変動しても稼働率が高い事業所は収支の下落リスクが小さくなります。定員充足率90%以上を維持できる体制を作ることが、改定リスクへのヘッジになります

収支差率の変化は後から確認できる数字です。自事業所のR6の数字を全国平均と比較し、改善できるポイントを早期に特定することが経営の安定に直結します。

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)、同「令和6年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和5年度決算)。報酬改定の具体的な内容・影響については厚生労働省の通知・告示をご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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