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障害福祉サービスの事業所の中に赤字の事業所がどれだけあるかは、厚生労働省の経営概況調査の収支差率の分布データから読み取れます。収支差率がマイナスの事業所の割合を7サービスで比較しました。
数字は厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)の分布データから当方が集計したものです。
令和6年度決算の赤字割合、サービスごとの違いは大きい
| サービス | 赤字の割合 | 調査事業所数 | 収支差率の中央値 |
|---|---|---|---|
| 短期入所 | 41.8% | 337 | 2.8% |
| 就労移行支援 | 39.9% | 296 | 4.5% |
| 放課後等デイサービス | 36.2% | 304 | 2.7% |
| 共同生活援助(日中型) | 34.7% | 236 | 5.9% |
| 共同生活援助(包括型) | 32.6% | 341 | 5.3% |
| 児童発達支援 | 28.1% | 320 | 9.7% |
| 生活介護 | 25.3% | 368 | 7.9% |
赤字割合が最も高いのは短期入所(41.8%)で、約4割が赤字です。就労移行支援(39.9%)も同水準で、この2サービスは他より突出して赤字の事業所が多い状況です。
一方、生活介護(25.3%)と児童発達支援(28.1%)は赤字割合が相対的に低く、中央値も高い水準にあります。
赤字割合と収支差率の中央値の関係
表を見ると、赤字割合が低いサービスは中央値が高い傾向があります。ただし、この対応は完全ではありません。
放課後等デイサービスは赤字割合36.2%と高めですが、表の平均では9.1%です。これは一部の高収益事業所が平均を引き上げているためです。実態の中央値は2.7%にとどまり、赤字割合の高さと整合しています。
短期入所は赤字割合41.8%で中央値は2.8%と、どちらも低い水準です。令和5年度の中央値6.8%から2.8%へ大きく低下しており、令和6年度の報酬改定の影響が出ている可能性があります。
赤字でも即・事業継続ができないわけではない
赤字の事業所が3〜4割ある、というのは一見多く見えますが、「3〜4割の事業所が経営危機にある」ことを意味しません。
1年の決算が赤字でも、手元資金(現金・預金)が十分にあれば、一定期間は運営を続けられます。問題が大きくなるのは、赤字が複数年続いて手元資金が減り、報酬の入金(請求から約2か月後)の前に支払いが足りなくなるときです。
また、開業間もない事業所では、利用者が定員まで増えていない期間に赤字が続くことがあります。この時期の赤字は、事業の問題ではなく立ち上がりの過渡期として想定内のケースも多いです。
サービスごとに赤字になりやすい構造の違いがある
赤字割合の差は、各サービスの運営構造の違いを反映しています。
- 就労移行支援:利用者が就職すると退所するため、稼働率が定期的に低下する。WAMの稼働率参考値は69.2%と他のサービスより低い。就労実績の区分で基本報酬が決まるため、実績が積まれるまでの期間は報酬が低い区分になることがある
- 短期入所:夜間の人員配置が必要で固定費が高い。令和6年度の報酬改定で収益状況が悪化した可能性がある
- 生活介護:重度障害者支援加算・医療連携体制加算など加算の種類が多く、加算を積み重ねることで収入を安定させやすい
- 児童発達支援:放課後等デイサービスに比べて稼働率の変動が少なく(平日・長期休暇の区別がない)、収支が安定しやすい傾向がある
令和5年度から令和6年度で、収支差率はどう変化したか
赤字割合と合わせて、令和5年度(R5)から令和6年度(R6)への収支差率の変化を整理します。
| サービス | 中央値R5 | 中央値R6 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 放課後等デイサービス | 0.4% | 2.7% | +2.3pt 改善 |
| 児童発達支援 | 4.6% | 9.7% | +5.1pt 大幅改善 |
| 共同生活援助(包括型) | 5.6% | 5.3% | ▲0.3pt ほぼ横ばい |
| 共同生活援助(日中型) | 7.3% | 5.9% | ▲1.4pt 悪化 |
| 生活介護 | 7.7% | 7.9% | +0.2pt ほぼ横ばい |
| 就労移行支援 | 6.0% | 4.5% | ▲1.5pt 悪化 |
| 短期入所 | 6.8% | 2.8% | ▲4.0pt 大幅悪化 |
令和6年4月の報酬改定の影響もあり、サービスごとに異なる方向の変化が出ています。放課後等デイサービス・児童発達支援は収支差率が改善した一方、短期入所・就労移行支援は大幅に悪化しています。
児童発達支援の中央値が4.6%→9.7%と大幅に改善した背景は、令和6年度の報酬改定で基本報酬が見直された影響と考えられます。一方、短期入所の中央値が6.8%→2.8%と急落した理由は、調査データからは特定できません。
赤字割合が高い事業所が取れる手段
赤字の割合が高いサービス(短期入所・就労移行支援・放課後等デイサービス)に共通するのは、稼働率の変動が大きいという点です。稼働率が下がると収入が減る一方、人件費などの固定費はすぐには下げられません。
赤字が続いている事業所が取れる手段は大きく3つです。
- 稼働率の改善:相談支援事業所・特別支援学校・医療機関との連携を強化し、新規利用者の流入を増やす
- 加算の取得:未取得の加算があれば要件を満たして取得する。人件費率の高いサービスでは職員の資格取得を支援することで加算要件を達成しやすくなる
- 人件費の最適化:利用者数に対して職員配置が過剰になっていないか、シフト設計を見直す
どの手段が有効かは、人件費率と稼働率のどちらが問題かによって変わります。まず6指標で現状を把握してから対策を検討することが重要です。
集計の方法と注意点
赤字割合は、調査に掲載されている収支差率の分布グラフから、収支差率が0%未満の階級に属する事業所数を合計し、回答事業所数で割って計算しました。分布は5%刻みの階級で示されているため、概算値としてご参照ください。
調査の対象は各年度に回答した事業所であり、全国のすべての事業所を網羅したものではありません。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算)。分布データから当方が集計・整理したもので、厚生労働省が作成したものではありません。

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