居宅介護支援事業所の採用・定着は、事業継続の根幹です。ケアマネジャーの採用方法・給与相場・離職防止のポイントを解説します。
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この記事で分かること
- ケアマネジャーの給与相場と処遇改善加算の活用法
- 採用チャネルごとのコストと特徴の比較
- 採用面接・オンボーディングの実務ポイント
- 離職防止・労務管理・採用難地域での対応策
居宅介護支援事業所のケアマネジャー採用の現状
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、他の介護職と比べて採用が難しい職種の一つです。背景には以下の要因があります。
- ケアマネ有資格者の数が限られている:ケアマネ試験の合格者数は年間1万〜1.5万人程度(近年の水準)で、実際に業務に就く人数はさらに少ない。
- 他の介護サービス事業所との競合:施設・通所・訪問介護など、ケアマネが活躍できる職場は多様であり、居宅介護支援事業所は選択肢の一つに過ぎない。
- 給与水準への課題認識:ケアマネジャーの給与は従来、他の介護専門職と比べて相対的に低いとされていた(令和6年度から処遇改善加算が適用されるようになったが、改善途上)。
ケアマネジャーの給与相場と処遇改善加算の活用
ケアマネジャーの給与水準は、地域・経験・事業所の規模によって異なります。厚生労働省の調査(介護労働実態調査)の概況を参考に整理します。
| 雇用形態・経験 | 月収の目安(税込み) |
|---|---|
| 常勤・経験3年未満 | 25万〜30万円程度 |
| 常勤・経験5年以上 | 30万〜35万円程度 |
| 主任ケアマネジャー | 35万〜40万円程度 |
令和6年度から居宅介護支援に処遇改善加算(2.1%)が適用されるようになりました。算定した加算財源は職員の賃金改善に充てることが要件です。加算を算定して賃上げ財源を確保し、採用時の給与設定・昇給設計に活かすことが重要です。
採用チャネルと採用コストの比較
ケアマネジャーを採用するための主なチャネルと採用コストの目安を比較します。
| チャネル | 採用コストの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 求人媒体(Indeed・福祉求人サイト等) | 掲載費:無料〜数万円/月(サイトによる) | 幅広く募集できるが応募数が少ない職種 |
| 人材紹介(ハローワーク) | 無料 | 費用はかからないが時間がかかる場合がある |
| 民間人材紹介会社 | 採用決定時に年収の20〜30%程度 | 成果報酬型で費用が高い。採用確度は高め |
| 口コミ・紹介 | 紹介報奨金(任意) | 信頼できる人脈からの紹介。最もコストが低い |
| 都道府県のケアマネ協会・研修 | 掲示・紹介料なし | 業界内人脈を活用した採用 |
人員基準と常勤換算の計算方法
居宅介護支援事業所の指定要件では、常勤・非常勤を合わせて常勤換算で1名以上のケアマネジャーを配置することが必要です。常勤換算の計算方法を確認します。
- 常勤の定義:事業所が定める所定労働時間(通常週40時間程度)をすべて勤務する職員
- 常勤換算の計算:(常勤職員の人数)+(非常勤職員の週所定労働時間合計÷事業所の常勤職員の週所定労働時間)で計算
- 管理者の常勤要件:管理者は常勤であることが必要。ただし、管理者が同一法人の他の事業所の管理者を兼務する場合は一定要件のもとで非常勤でも可能な場合がある
求人票の書き方のポイント
ケアマネジャーの採用では、求人票の内容が応募数に直結します。求人票を書く際のポイントを整理します。
- 担当件数の上限を明記する:「1人あたり最大〇件」を明記することで、過剰な件数を心配している候補者の不安を解消できる
- 資格更新・研修費用の負担方針を示す:事業所が費用を負担する旨を明記することが採用の差別化ポイントになる
- ICT環境・テレワーク対応を明記する:ケアプランデータ連携システム対応・タブレット支給等の情報が、ICTに前向きな候補者へのアピールになる
- 実際の業務内容を具体的に書く:「ケアプラン作成・モニタリング・地域ケア会議参加等」の業務内容を具体的に書くことで、応募者とのミスマッチを防ぐ
採用面接で確認すべきポイント
ケアマネジャーの採用面接では、スキル・経験だけでなく、事業所の方針・価値観とのマッチングを確認することが重要です。
- 担当件数と業務負荷への考え方:今後の担当件数の見通しを説明し、候補者が無理なく担当できる件数・ペースの認識を確認する。
- 多職種連携への姿勢:医師・訪問看護師・サービス事業所との連携に積極的かどうかを確認する(ケアマネの業務の中核)。
- 困難事例への対応経験:認知症・家族関係の複雑なケース・サービス拒否の利用者への対応経験を確認する。
- ICT・書類管理への適応力:ケアプラン作成支援ソフト・ケアプランデータ連携システム等の利用経験・習得への意欲を確認する。
ケアマネジャーの離職防止と定着のポイント
せっかく採用したケアマネジャーが早期に離職することを防ぐために、以下の点を意識することが重要です。
- 担当件数の適正管理:最初から多くの担当件数を任せず、業務に慣れるまでは徐々に増やす。担当件数が増えすぎてオーバーワークになっていないか定期的に確認する。
- スーパービジョンの機会確保:困難事例の相談ができる環境(主任ケアマネへの相談・地域包括支援センターのスーパービジョン活用)を整える。
- 評価・フィードバックの仕組み:担当件数・加算算定率・書類の適切さ等を定期的に評価し、フィードバックする。昇給・昇格との連動が望ましい。
- 資格更新・研修費用の負担:更新研修・主任ケアマネ研修の費用を事業所が負担することを明確にしておく。資格維持のコストが自己負担であると離職の一因になる。
ケアマネジャーが不足した場合の緊急対応
ケアマネジャーが急な退職・傷病で不在になった場合、事業所として速やかに対応する必要があります。利用者のケアが途切れないよう、以下の対応を取ることが求められます。
- 残りのケアマネジャーによる一時的な引き継ぎ:残存スタッフが担当件数を一時的に増やす。ただし逓減制(45件超で報酬半減)に注意し、引き継ぎ件数に上限を設ける。
- 地域包括支援センターへの相談:人員不足の状況を地域包括支援センターに相談し、利用者の一時的な移管先候補の情報を入手する。
- 指定権者(市区町村等)への報告:人員基準を下回る状態が続く場合は、指定権者への報告・対応計画の提出が必要になる場合がある。
- 緊急採用の実施:ハローワーク・人材紹介会社等を通じた緊急採用を進める。一時的な業務委託(非常勤ケアマネの確保)も選択肢。
処遇改善加算の算定と人件費管理
令和6年度から居宅介護支援に処遇改善加算(2.1%)が適用されるようになりました。加算財源を人件費に充てるためには、以下の手続きが必要です。
- 処遇改善計画書の提出:毎年度4月前に都道府県等に計画書を提出する(賃金改善の方法・金額・対象職員等を記載)
- 実績報告書の提出:年度終了後に実績報告書を提出する(期限は都道府県によって異なるが、7月末が多い)
- 賃金改善の対象職員:ケアマネジャーだけでなく、事務職員等の全職員への配分も認められている(加算額を超えない範囲で)
非常勤・パート採用の活用
常勤のケアマネジャーが採用できない段階では、非常勤・パート採用を組み合わせて人員体制を確保することも選択肢です。ただし、常勤ケアマネジャーが1人以上いることが居宅介護支援事業所の指定要件(人員基準)の一つであることを確認してください。
ケアマネジャーの労務管理のポイント
居宅介護支援事業所でケアマネジャーを雇用する際の労務管理のポイントを整理します。
- 労働時間の管理:訪問・会議・書類作成の時間が多くなるため、残業時間が増えやすい職種。タイムカード・勤怠管理システムで実労働時間を把握し、長時間労働を防ぐ。
- 移動時間の取り扱い:訪問先への移動時間は労働時間に含まれる。自宅から最初の訪問先への移動(直行)の取り扱いを就業規則で明確にしておく。
- 在宅勤務・フレックスの活用:書類作成・請求業務は自宅やサテライトで行えることが多い。フレックスタイム・在宅勤務制度を整備することで、育児・介護中の優秀なスタッフを採用・定着させやすくなる。
- 就業規則の整備:10名以上の従業員を雇用する場合、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務付けられている。それ以下の規模でも作成しておくことをお勧めする。
採用後の最初の3か月:オンボーディングの進め方
ケアマネジャーが入職後の最初の3か月に適切にオンボーディングされることが、早期離職防止につながります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 入職1週間 | 事業所のルール・書類の様式・請求ソフトの操作・主要な連携先(地域包括・医療機関等)の確認 |
| 1か月 | 担当件数を5〜10件程度から開始・管理者と週次でフォローアップ面談 |
| 2か月 | 担当件数を20〜30件に増やしつつ困難事例のサポート体制を確認 |
| 3か月 | 担当件数・業務の進め方について振り返りと目標設定を行う |
雇用保険・健康保険への加入と手続き
ケアマネジャーを雇用する際に必要な社会保険の加入手続きを整理します。
- 雇用保険:週20時間以上勤務するパート含む全スタッフに加入義務。ハローワークへの被保険者資格取得届(採用翌月10日まで)が必要。
- 健康保険・厚生年金:常勤の場合は原則加入。法人の場合は代表者1人のみでも加入義務あり。
- 労働保険(労災):1人でもスタッフを雇用すれば加入義務あり。年1回の概算・確定保険料申告(労働保険年度更新)が必要。
採用難の地域での対応策
地方・過疎地域ではケアマネジャーの採用がさらに難しくなっています。採用難の地域でのアプローチを整理します。
- 潜在ケアマネの掘り起こし:資格はあるが業務を離れているケアマネジャーに呼びかける。都道府県のケアマネ協会が潜在ケアマネの就労促進支援を行っている場合がある。
- 訪問介護員・施設職員へのケアマネ受験支援:自事業所または関連法人の訪問介護員・介護福祉士にケアマネ試験の受験を勧め、合格後に採用する。研修費・受験料の補助が定着につながる。
- UIターン採用:都市部から地方に移住したいケアマネジャーをターゲットにした採用も選択肢。移住支援補助金と組み合わせてアピールできる場合がある。
ケアマネジャーのキャリアパスと定着の仕組み
居宅介護支援事業所でケアマネジャーが長期間定着するためには、キャリアアップの見通しを示すことが有効です。
- 主任ケアマネへのキャリアアップ:5年以上の経験を積んだケアマネジャーが主任ケアマネ資格を取得するための研修費を事業所が負担する。取得後は給与・役職に反映する。
- 管理者・事業所責任者への登用:将来的に事業所の管理者・責任者として活躍できるキャリアパスを示す。事業承継や分院展開の計画がある場合はその将来像を伝える。
- 専門性の深化:認知症ケアマネジャー・医療連携専門のケアマネ等の専門性を深めるための研修費補助・外部研修への参加機会を提供する。
まとめ:採用と定着を両輪で進める
居宅介護支援事業所の採用難は、開業当初から直面する最大の経営課題の一つです。給与・処遇改善加算の活用による報酬引き上げに加え、働き方の柔軟さ・主任ケアマネへのキャリアパス・ICT化による業務効率化の組み合わせが定着率を高めます。採用は「人がいなければ何もできない」という事業の根幹を支える取り組みとして、継続的に手を打ち続けることが重要です。開業後に担当件数が増えてきたら、早めに2人目のケアマネ採用計画を立て、1人体制のリスクを減らすことが事業継続の安全弁となります。また、働き方の柔軟さ(フルリモート・時短・副業可)を求人条件に明示することで、潜在ケアマネの応募を引き出しやすくなります。
参考・出典
- 介護労働安定センター「介護労働実態調査」(年次)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」(処遇改善加算関連)
この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。給与相場・採用コストは地域・時期によって異なります。
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