居宅介護支援事業所は、サービス開始前に利用者と契約を結び、重要事項説明書を交付して説明する義務があります。契約書と重要事項説明書に記載すべき内容・交付のタイミング・変更時の手続きについて整理します。
開業後の収支を試算したい方は、こちらをどうぞ。
▶ 居宅介護支援事業所 収支シミュレーター
重要事項説明書の交付と説明は、サービス開始前が必須
居宅介護支援の指定基準(平成11年厚生省令第38号)では、サービスの提供を開始する前に、利用者・家族に対して重要事項説明書を交付し、内容を説明した上で利用者の同意を得ることが義務付けられています。
「サービス開始前」とは、最初のケアプランを作成する前の段階を指します。契約を結ぶ前に重要事項を説明せずにサービスを開始することは指定基準違反となります。
重要事項説明書に記載すべき内容
重要事項説明書には次の事項を記載することが求められています(平成11年厚生省令第38号・告示参照)。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 事業者・事業所の概要 | 法人名・事業所名・所在地・電話番号・指定番号・管理者名 |
| サービスの内容 | 提供する居宅介護支援サービスの概要(アセスメント・ケアプラン作成・サービス担当者会議・モニタリング等) |
| 利用者負担 | 居宅介護支援は介護保険の全額給付のため、利用者の自己負担は原則ゼロ。ただし、通常の事業の実施地域外の場合の交通費等について記載 |
| サービス提供の体制 | 担当するケアマネジャーの氏名・保有資格・担当件数 |
| 緊急時の対応 | 緊急時の連絡先・対応方法 |
| 苦情対応・相談窓口 | 事業所内の苦情受付窓口・市区町村・国保連の連絡先 |
| 虐待防止 | 虐待防止のための取り組み(令和6年度から義務化) |
| 身体拘束禁止 | 身体拘束廃止の取り組み(居宅介護支援では実施機会は少ないが記載は必要) |
| 記録の開示 | 利用者がケアプランや記録の開示を求めることができる旨 |
| 契約の終了条件 | 契約の解約・終了ができる条件 |
令和6年度以降、ハラスメント防止に関する事業所の方針を重要事項説明書に記載することも義務化されています(令和6年改定)。
契約書に記載すべき内容
契約書(居宅介護支援利用契約書)には、重要事項説明書の内容に加えて、次の事項を含めることが一般的です。
- 契約期間:有効期間(要介護認定期間に合わせる場合が多い)・更新条件
- 解約・解除の手続き:利用者・事業所それぞれが契約を終了できる条件と手続き
- 個人情報の利用範囲:ケアプランの作成・サービス事業所との情報共有等の目的・範囲
- 守秘義務:事業所・ケアマネジャーの守秘義務
- 損害賠償:故意・過失による損害が発生した場合の責任範囲
契約書・重要事項説明書は各自治体が示す標準様式を使用するか、独自に作成して自治体の確認を受けることが一般的です。指定申請時に様式の提出を求める自治体もあります。
個人情報に関する同意書
居宅介護支援では、利用者の個人情報(健康状態・介護サービスの利用状況等)を関係するサービス事業所・医療機関と共有します。個人情報保護法・介護保険事業者の個人情報ガイドラインに基づき、次の同意書を別途取得することが一般的です。
- 個人情報使用同意書(サービス事業所への情報提供):ケアプランに基づくサービス事業所への情報提供について同意を得る
- 個人情報使用同意書(医療機関・入院先への情報提供):入院時情報連携加算の算定時・主治医への情報提供のための同意
- 個人情報使用同意書(第三者機関・実習生等への情報提供):必要に応じて
同意書は年1回以上の更新を行い、利用者が同意内容を確認できる状態を維持することが重要です。
重要事項説明書・契約書の変更が必要なタイミング
次の場合は重要事項説明書・契約書の変更が必要です。
- 担当ケアマネジャーの変更:担当者が変わる場合は変更の説明と同意が必要
- 事業所の運営規程の変更:運営規程に変更があった場合、重要事項説明書への反映が必要
- 法令改正に伴う変更:令和6年改定のようにハラスメント防止の記載義務が追加された場合
- 苦情窓口・連絡先の変更:管理者・苦情担当者が変わった場合
重要事項説明書の変更時は、変更箇所を利用者・家族に説明し、同意を得ます。変更後の署名済みの書面を保管しておくことが重要です。
契約書・重要事項説明書の保管と管理
締結した契約書・重要事項説明書は次のルールで管理します。
- 利用者ごとに契約書・重要事項説明書の原本(利用者署名済み)を保管する
- 利用者への交付控え(写し)も事業所分として保管する
- 保管期間:完結の日から2年間(事業所によっては5年以上保管することを勧めています)
実地指導では、契約書・重要事項説明書の内容が現行の運営規程と一致しているか、利用者の署名があるか等が確認されます。法改正があった際に古い様式のまま使い続けることは指摘の対象になります。定期的に内容を見直す習慣を作ることが重要です。
居宅介護支援の利用者負担は原則ゼロ
居宅介護支援(ケアプラン作成)は、利用者の自己負担がない唯一の介護保険サービスです。介護保険の給付が費用の全額(100%)をカバーするため、利用者からの費用請求は原則不要です。
ただし、次の費用については実費請求が認められる場合があります。
- 通常の事業の実施地域外への交通費(重要事項説明書への記載が必要)
- 利用者の求めに応じたサービス以外の費用(文書の取寄せ等)
「ケアプラン代を取る」という誤解を持つ利用者・家族がいる場合、重要事項説明書の説明時に「利用者の自己負担はありません」と明確に説明することで、信頼関係の構築につながります。
実地指導での契約書・重要事項説明書の確認内容
実地指導では、契約書・重要事項説明書に関して次の事項が確認されます。開業前に様式を整えておくことが重要です。
- 全利用者分の署名済み契約書・重要事項説明書が保管されているか:利用者全員分の書類が揃っているかが確認されます。新規利用者が増えた際に書類の整備が漏れることがあるため、担当開始時のチェックリストに組み込むことが重要です。
- 法改正後の様式に更新されているか:令和6年度改定でハラスメント防止に関する記載が義務化されましたが、古い様式のまま使用している事業所が指摘を受けるケースがあります。定期的に自治体の標準様式を確認し、最新版に更新することが必要です。
- 担当ケアマネジャーの変更が正しく反映されているか:担当ケアマネジャーが変わった際に、重要事項説明書の担当者欄が更新されていない場合は指摘の対象になります。担当変更時に利用者への説明と書類更新を行う手順を定めておくことが重要です。
- 個人情報に関する同意書が取得されているか:サービス事業所への情報提供に関する同意書が全利用者分取得されているかが確認されます。同意書の取得漏れは、個人情報保護の観点から問題になります。
令和6年度改定で追加された契約書・重要事項説明書の記載事項
令和6年度の介護報酬改定では、居宅介護支援の契約書・重要事項説明書に関連する義務が追加・強化されました。主な変更点は次の通りです。
| 項目 | 内容 | 適用時期 |
|---|---|---|
| ハラスメント防止 | 利用者・家族によるハラスメント(身体的暴力・精神的暴力・セクシャルハラスメント)への対応方針を重要事項説明書に記載することが義務化 | 令和6年4月〜(経過措置あり) |
| 虐待防止の取り組み | 事業所における虐待防止のための委員会・研修・指針について重要事項説明書への記載が義務化 | 令和6年4月〜 |
| 身体拘束廃止への取り組み | 居宅介護支援は身体拘束を実施する場面は基本的にないが、身体拘束廃止に関する事業所の方針の記載が求められる場合がある | 令和6年4月〜 |
開業前に準備すべき書類の一覧
居宅介護支援事業所の指定申請・開業前に準備すべき契約関係書類の一覧を示します。
- 重要事項説明書(最新版・自治体の標準様式に準拠)
- 居宅介護支援利用契約書
- 個人情報使用同意書(サービス事業所への情報提供用)
- 個人情報使用同意書(医療機関への情報提供用)
- 苦情受付・対応マニュアル(重要事項説明書に組み込む場合も)
- 緊急時対応マニュアル(重要事項説明書の別紙として添付する場合も)
指定申請時に自治体から様式の提出を求められる場合があります。指定申請の事前相談の段階で、提出が必要な書類・様式について確認しておくことをお勧めします。
認知症や意思決定能力が低下した利用者への対応
重要事項説明書の説明と同意取得にあたって、利用者の認知機能が低下していたり、意思決定能力が不十分な場合があります。このような場合の対応は次の通りです。
家族・後見人への説明と同意:利用者本人の意思決定が困難な場合、家族(成年後見人・保佐人・補助人等の法定代理人)に対して重要事項の説明を行い、同意書への署名を得ることが一般的です。ただし、本人が部分的にでも理解できる場合は、本人にも説明することが重要です。
成年後見制度の活用:身寄りがなく家族もいない利用者、または家族との関係が困難な利用者については、成年後見制度の活用が必要になる場合があります。成年後見人が選任されている場合は、後見人の同意を得た上で契約を締結します。
説明・同意の記録を残す:誰に対して説明を行い、誰が同意したかを記録に残しておくことが重要です。「利用者本人も同席の上で家族(続柄:〇〇)に説明し、同意を得た」のように記録することで、後から確認が必要な場面でも対応できます。
ハラスメント防止に関する重要事項説明書の記載例
令和6年度改定でハラスメント防止の記載が義務化されましたが、具体的にどのように記載するかについては各事業所が定める運営規程・マニュアルに基づきます。一般的な記載例としては次のようなものがあります。
「当事業所は、利用者・家族等による職員へのハラスメント(身体的暴力・精神的暴力・セクシャルハラスメント等)に対して毅然とした対応を行います。ハラスメントが認められた場合は、サービスの提供を中断または終了することがあります」
この記載を重要事項説明書に入れておくことで、利用者・家族に対してハラスメント防止の方針を事前に説明する機会となります。自治体によっては標準様式に記載例が含まれている場合があります。指定申請時・更新時に確認しておくことをお勧めします。
電子化・デジタル化された契約書・同意書の取扱い
令和6年度以降、介護分野でも電子署名や電子的な同意書の活用が広がっています。居宅介護支援の契約書・重要事項説明書をタブレット・スマートフォンで電子署名する対応を導入する事業所も増えてきました。電子化を進める際には次の点に注意が必要です。
- 自治体の承認確認:電子署名・電子的な同意書の取扱いについて、指定権者(市区町村・都道府県)が認めているかを事前に確認する。一部の自治体では書面(紙)での保管を求めている場合があります。
- 利用者の同意:電子化を導入する際は、利用者・家族が電子署名・電子書類に同意していることが前提です。利用者の端末操作への不安・スマートフォン非保有等の状況に応じて、書面対応と電子化対応を使い分ける柔軟性が必要です。
- バックアップと保管期間:電子化した書類の保管期間は紙の場合と同様です(完結の日から2年間以上)。クラウド保存の場合はデータのバックアップ・セキュリティ管理についても確認が必要です。
参考・出典
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(医療・介護関係事業者編)(個人情報保護委員会・厚生労働省)
この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。様式・記載内容は自治体の標準様式でご確認ください。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント