就労定着支援の支援頻度。月1回以上の義務・記録・実地指導での確認点。

就労定着支援の支援頻度。月1回以上の義務・記録・実地指導での確認点。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援では、利用者1人につき月1回以上の支援を行うことが省令で義務付けられています。この頻度を下回ると省令違反となり、実地指導での指摘対象になります。訪問・面談・電話・メール等の方法の違い、記録の付け方、利用者数が増えたときの対応を整理します。

月1回以上の支援は省令で定められた義務

就労定着支援の運営基準を定める省令(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準・厚生労働省令第171号)には、就労定着支援について「定期的に」利用者に連絡・支援を行うことが規定されており、解釈通知ではその頻度として月1回以上の連絡・支援が求められています。

「月1回以上」は最低基準であり、利用者の状況(就労直後・職場環境の変化・体調の変動など)によっては、より頻繁な支援が必要になることがあります。特に利用開始直後や就労状況に変化があった時期は、月1回を超える支援を行うことが利用者の定着を支える上で重要です。

支援の方法:訪問・面談・電話・オンラインの組み合わせ

月1回以上の支援の「方法」については、省令・解釈通知で特定の手段を限定していません。以下のような方法を組み合わせながら、利用者の状況に応じた支援を行います。

就労定着支援の支援方法と特徴
方法 特徴・適した場面
職場訪問(就労先への訪問) 職場環境を直接把握できる。担当者・上司への連絡調整も行いやすい。定期的な訪問で信頼関係が構築できる
事業所での面談(来所) 利用者がプライバシーを確保した状態で話しやすい。相談内容が多岐にわたる場合に有効
電話・メール・オンライン面談 遠方の利用者・移動が難しいケースに対応できる。ただし職場環境の把握は対面に劣る
家庭訪問 生活課題(睡眠・体調管理等)の把握が必要な場合に有効

解釈通知では、対面での支援(職場訪問・来所面談)が基本とされており、電話やオンラインのみで済ませることが常態化しないよう留意が必要です。ただし、利用者の状況・意向によっては電話・メールでの支援も認められています。

職場訪問の意義:就労環境を目で見て把握する

職場訪問は、電話やメールでは把握しにくい職場の実態を直接確認できる点で重要です。

  • 就労先担当者との関係構築:人事担当者・直属の上司・産業医等との顔の見える関係が、問題発生時の早期連絡・調整につながります
  • 職場環境の目視確認:作業内容・職場の雰囲気・コミュニケーション状況を実際に見ることで、利用者の報告だけでは見えにくい課題を把握できます
  • 障害への配慮状況の確認:合理的配慮の提供状況(休憩場所・業務内容の調整等)が実際に行われているかを確認できます

職場訪問の頻度は法令で規定されていませんが、定期的(例:3か月に1回以上)の訪問を行うことで、職場側との信頼関係を維持しながら継続的な支援が行いやすくなります。

連絡が取れなかった場合の対応と就労定着率への影響

利用者に月1回以上連絡を試みたにもかかわらず、連絡が取れない状態が続いた場合の実務上の対応は以下のとおりです。

  • 複数の手段で連絡を試みる:電話・メール・自宅への郵便・緊急連絡先への連絡など、複数の手段を使って連絡を試みた記録を残します
  • 就労先への確認:本人の同意が得られる範囲で就労先の担当者に就労状況を確認します
  • 連絡記録を必ず残す:「〇月〇日に電話したが不在だった」「メールを送った」等の試みを記録に残しておくことが、後の就労定着率の計算・実地指導の際に重要になります

解釈通知では、就労定着率の計算において「連絡が取れなかった者は就労継続できていないものとして扱う」と規定されています。連絡が取れない状態を放置すると、就労定着率が下がり、報酬区分の低下につながります。

月1回以上の支援記録:何を、どう残すか

支援の実施記録は省令で保管が義務付けられており、実地指導でも確認されます。最低限、以下の内容を記録します。

支援記録に記載すべき内容
記載項目 記載例
支援日時 2026年11月5日(水)14:00〜14:30
支援方法 職場訪問・事務所での面談・電話など
支援者名 就労定着支援員の氏名
利用者の状況 就労状況・体調・職場での困りごと等
実施した支援内容 相談への対応・企業担当者への連絡・関係機関との調整等
次回の支援予定 次回の連絡予定日・訪問予定など

記録は手書き・電子データいずれも可能です。記録の様式は省令で特定の形式が指定されているわけではありませんが、内容が漏れなく確認できる形であることが求められます。記録はサービス提供日から一定期間(原則5年間)保管する義務があります。

利用者数が増えると月の支援件数も増える

月1回以上の支援義務は利用者1人ひとりに適用されます。契約者数が増えるほど、毎月の支援対応件数・記録作成件数も増加します。

契約者数別・月間の最低支援件数の目安
契約者数 月間最低支援件数(月1回の場合)
10名 10件以上
20名 20件以上
30名 30件以上

30名の利用者に月1回支援を行う場合、月30件以上の連絡・記録が発生します。うち職場訪問を月1回行うとすれば、移動時間を含めた業務量はかなり大きくなります。利用者数の増加に伴い、就労定着支援員の増員・業務の効率化が必要になる場合があります。

実地指導で確認される支援頻度・記録の点検

都道府県・政令市等が実施する実地指導(運営指導)では、以下の点が確認されます。

  • 支援記録の保管状況:月1回以上の支援記録が、全利用者分・全期間にわたって保管されているか
  • 記録の内容:支援日時・方法・支援内容・担当者名が記載されているか
  • 連絡が取れなかった場合の対応記録:連絡を試みた記録が残っているか
  • 支援計画との整合:就労定着支援計画に沿った支援が実施されているか

月1回以上の支援記録が抜けていると、省令違反として指摘される可能性があります。記録は遅くとも月末までに整理し、翌月に持ち越さないことが実務上の基本です。

支援頻度の管理:月次の支援台帳を活用する

利用者数が増えると、月次で「誰に、いつ、支援したか」を管理しにくくなります。利用者ごとに月次の支援履歴を一覧で確認できる台帳(スプレッドシート等)を作成し、月末に全利用者の支援が完了しているかを確認する仕組みを作ることが重要です。

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参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
  • 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号による改定版)

この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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