クレーン・デリック運転士 力学計算問題の解き方【モーメント・張力・安全係数】

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クレーン・デリック運転士の学科試験「力学に関する知識」は10問20点で、合格には8点(4問正解)以上が必要です。モーメント計算・ワイヤロープの張力・安全係数などが頻出で、公式を正確に使えることが得点の鍵です。この記事では計算問題の解き方と頻出パターンを具体的に解説します。

出典:安全衛生技術試験協会 クレーン・デリック運転士(限定なし)受験案内・クレーン等安全規則

力学科目の構成と出題パターン

力学に関する知識では、次のテーマが繰り返し出題されます。

  • モーメント(力のモーメント・つり合い条件)
  • ワイヤロープの張力(吊り角度と張力の関係)
  • 安全係数(ワイヤロープ・フック・シャックルの規定値)
  • 荷のつり合い(重心・重量計算)
  • 摩擦力・速度・加速度の基礎

計算問題は数値を代入して求める形式が多く、公式と手順を覚えれば確実に得点できます。

モーメントの基本計算

モーメントとは「力の大きさ × 支点からの距離」で表される回転力です。

公式:モーメント M = F × L

  • F:力の大きさ(kN または N)
  • L:支点からの距離(m)
  • M:モーメント(kN・m または N・m)

つり合い条件の考え方

天びん(シーソー)のように、支点の左右のモーメントが等しいときにつり合います。

例:支点から左2mの位置に50kgの荷。支点から右3mの位置に何kgの荷を置けばつり合うか。

左のモーメント:50 × 2 = 100 kgf・m
右のモーメント:x × 3 = 100 kgf・m
x = 100 ÷ 3 ≈ 33.3 kgf

クレーン試験では、ジブクレーンのアウトリガや荷とブームの関係でこの考え方が使われます。

ワイヤロープの張力と吊り角度

2本のワイヤロープで荷を吊り上げる場合、吊り角度によって各ロープの張力が変わります。

吊り角度と張力の関係

吊り角度(2本のロープが成す角) 各ロープの張力 荷重との比率
0°(2本が平行) 荷重の1/2 0.5倍
60° 荷重の1/2 × 2/√3 ≈ 0.577倍 約0.577倍
90° 荷重の1/√2 ≈ 0.707倍 約0.707倍
120° 荷重と同じ 1.0倍
180°(2本が水平) 無限大(理論値) 使用不可

張力の計算式

吊り角度をθとするとき、各ロープにかかる張力Tは:

T = W / (2 × cos(θ/2))

  • W:荷の重量(kgf)
  • θ:2本のワイヤロープが成す角度

吊り角度が大きくなるほど張力は増加します。クレーン等安全規則では、玉掛け用ワイヤロープの吊り角度は90°以内を推奨しています。

安全係数の規定値

安全係数は「切断荷重 ÷ 最大使用荷重」で求める数値です。試験では各部材の規定値を正確に覚える必要があります。

部材 安全係数の規定値 出典
ワイヤロープ(クレーン本体用) 6以上 クレーン等安全規則の規定に基づく
ワイヤロープ(玉掛け用) 6以上 クレーン等安全規則の規定に基づく
フック・シャックル等の金具 5以上 クレーン等安全規則の規定に基づく
チェーン(リンクチェーン) 4以上(伸び10%未満のもの) クレーン等安全規則の規定に基づく

安全係数の計算例

例:切断荷重60kNのワイヤロープの最大使用荷重は?(安全係数6の場合)

最大使用荷重 = 切断荷重 ÷ 安全係数 = 60 ÷ 6 = 10 kN

定格荷重とつり上げ荷重の違い

試験で混同しやすい用語を整理します。

用語 定義
つり上げ荷重 クレーンが構造上つり上げられる最大の荷重(フック等の吊り具の重量を含む)
定格荷重 クレーンが各状態において吊り上げることができる最大の荷重(フック等の重量を除いた荷の重量)
定格速度 定格荷重に相当する荷重の荷をつって移動する場合の最高の速度

出典:クレーン則第1条(用語の定義)

「つり上げ荷重」はフック等の吊り具込みの値で、「定格荷重」は吊り具を差し引いた荷の最大値です。同じクレーンでも数値が異なります。

荷のつり合いと重心

荷を水平に吊るためには、吊点の位置が荷の重心の直上になるようにします。長い棒状の荷を2か所で吊る場合、重心の位置で吊り点の負担が変わります。

重心位置の計算(均一でない荷の場合)

例:全長4mの棒の左端から重量200kg、右端から100kgの部品が付いている。棒自体の重量を100kgとすると重心はどこか。

棒の重心は中央(左端から2m)として計算します。

  • 左端を基準点(0m)とする
  • 左端の部品:200kg × 0m = 0
  • 棒の重心:100kg × 2m = 200
  • 右端の部品:100kg × 4m = 400
  • 合計モーメント:0 + 200 + 400 = 600
  • 全体重量:200 + 100 + 100 = 400kg
  • 重心位置:600 ÷ 400 = 1.5m(左端から1.5m)

摩擦・速度・加速度の基礎

計算問題で頻出の基礎式をまとめます。

摩擦力の公式

摩擦力 F = μ × N

  • μ:摩擦係数(材料によって異なる)
  • N:垂直抗力(物体が面を押す力)

速度・加速度の関係

  • 平均速度 v = 距離 ÷ 時間
  • 加速度 a = (最終速度 – 初速度) ÷ 時間
  • 慣性力 F = m × a(質量 × 加速度)

計算問題を解くためのコツ

力学の計算問題で点数を取るための実践的なアドバイスをまとめます。

  1. 単位を揃える:kgf・kN・N・m・cmを混在させない。途中で換算ミスが起きやすいので最初に単位を確認する。
  2. 公式を先に書く:何の公式を使うかを決めてから数値を代入する。
  3. 安全係数は「以上」の意味を確認:「6以上」は6ちょうどでも合格だが、5.9は不合格。選択肢で引っかかるケースがある。
  4. 吊り角度の方向に注意:「2本のロープが成す角度」か「ロープと垂直方向が成す角度」かで計算式が変わる。問題の図をよく読む。
  5. 過去問で数値パターンを把握する:実際の試験では同じ数値パターンが繰り返されることがある。公表問題を繰り返し解いて慣れることが有効。

力学科目の頻出ポイントまとめ

テーマ 覚えるべき数値・公式
モーメント M = F × L(力 × 距離)
ワイヤロープ張力 吊り角度が大きいほど張力増加。90°以内推奨
ワイヤロープ安全係数 6以上(本体・玉掛け用どちらも)
フック安全係数 5以上
チェーン安全係数 4以上(伸び10%未満のもの)
定格荷重・つり上げ荷重 つり上げ荷重は吊り具込み・定格荷重は吊り具を除く

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本記事はクレーン等安全規則(昭和47年労働省令第34号)および安全衛生技術試験協会の受験案内に基づきます。試験問題は公表問題で出題傾向を確認してください。安全衛生技術試験協会の公式サイト(https://www.exam.or.jp/)に公表問題が掲載されています。

モーメントの計算例題

モーメントは「M=F×L(力×距離)」で計算します。試験ではてこのつり合いや回転の問題として出題されます。

例題:支点から2mの位置に500Nの荷物がある。支点から反対側3mの位置に何Nの力を加えれば釣り合うか。

解法:左側のモーメント = 500N × 2m = 1,000N・m。右側も1,000N・mになる必要がある。F × 3m = 1,000N・m → F = 1,000÷3 ≈ 333N。

モーメントの問題は「左右のモーメントが等しい」という原則で解けます。計算が複雑に見えても、公式M=F×Lを両側に当てはめて等置するだけです。

ワイヤロープの張力計算の例題

荷物を2本のワイヤで吊り上げる場合、吊り角度によって各ロープにかかる張力が変わります。

基本原則:

  • 吊り角度0°(2本が並行):各ロープの張力 = 荷重÷2
  • 吊り角度60°(2本の間の角度):各ロープの張力 = 荷重÷2 × 1/cos30° ≒ 荷重×0.577
  • 吊り角度90°:各ロープの張力 = 荷重÷√2 ≒ 荷重×0.707
  • 吊り角度120°:各ロープの張力 = 荷重

例題:1,000kgの荷物を2本のワイヤロープで吊り角度90°で吊り上げた。各ロープの張力は何kgか(重力加速度9.8m/s²は無視)。

解法:吊り角度90°(2本の間の角度が90°)の場合、各ロープの張力 = W/(2cos45°) = 1,000/(2×0.707) ≒ 707kg。

試験では「吊り角度が大きくなるほど張力は増える」という原則を把握していれば、選択肢から正しいものを選べます。

重心の求め方

試験では複数の物体を組み合わせた場合の重心の位置を求める問題が出ます。

解法の原則:重心の位置 = (各物体の重量×それぞれの重心位置の積の合計)÷全重量

例題:均質な鉄板A(重量100kg・端から1m)と鉄板B(重量200kg・端から3m)を端を揃えて置いた場合の合成重心は端から何mか。

解法:(100×1 + 200×3)÷(100+200) = (100+600)÷300 = 700÷300 ≒ 2.33m

力学公式一覧(試験直前確認用)

公式名 式 単位
モーメント M = F × L N・m
摩擦力 F = μ × N N
加速度 a = (v₂ – v₁) / t m/s²
仕事 W = F × s J(ジュール)
仕事率(動力) P = W / t = F × v W(ワット)

力学の計算問題は、公式に数値を代入するだけで解けるものがほとんどです。公式の形を覚えることを優先し、単位の確認も忘れずに行いましょう。

力学科目で間違えやすいポイント

  • 「吊り角度」の定義の違い:「2本のワイヤの間の角度(開き角)」か「各ワイヤが鉛直方向となす角度」かを問題文で確認する。数値が同じでも定義が違うと計算結果が変わります。
  • 重心と安定の区別:「重心が低い=安定しやすい」「支点間が広い=安定しやすい」。重心の高さと支点間の幅の両方が安定に影響することを覚えておく。
  • 動摩擦係数と静止摩擦係数:動き始める前(静止摩擦)の方が動いている状態(動摩擦)より摩擦係数が大きい。荷物を動かし始める力の方が動かし続ける力より大きいという現象に対応します。
この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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