短期入所のハラスメント防止研修は、基準(平成18年厚生労働省令第171号)の勤務体制の確保等に関する規定(第145条で準用する第68条)が根拠です。パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・カスタマーハラスメントの3種類が対象で、カスタマーハラスメントは令和8年10月1日から事業主の義務になります。この記事では、短期入所のハラスメント防止研修の義務の根拠・内容・対応手順をまとめました。
ハラスメント防止の義務の根拠は、基準の勤務体制の確保等の規定
基準は、職場におけるハラスメント防止について次のように義務にしています。(短期入所には第145条で準用します。)
「職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。」
出典:平成18年厚生労働省令第171号(第145条で準用する第68条)
解釈通知(障発第1206001号)は、この規定について、相談の窓口を設けること・方針を職員に周知することを求めています。(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日))
「職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者に周知・啓発すること。」「相談に対応する担当者をあらかじめ定めること等により、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、従業者に周知すること。」
出典:同上
研修の回数は、解釈通知に明示されていません。虐待防止研修と同様、年1回以上の定期的な実施が実務上の目安です。研修記録は5年間の保管が必要です。
パワーハラスメントの定義と3つの要素
厚生労働省の指針(職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等についての指針・令和2年1月改正)は、パワーハラスメントを次のように定義しています。
「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。」
出典:「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等についての指針」
重要なのは「①から③の要素を全て満たすもの」という点です。また、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と指針は明記しています。
指針が示す6つの行為類型は次のとおりです。
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| イ 身体的な攻撃 | 暴行・傷害 |
| ロ 精神的な攻撃 | 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言 |
| ハ 人間関係からの切り離し | 隔離・仲間外し・無視 |
| ニ 過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害 |
| ホ 過小な要求 | 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること |
| ヘ 個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること |
出典:「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等についての指針」
セクシュアルハラスメントは、利用者・家族から受けるものも含まれる
解釈通知は、セクシュアルハラスメントについて次のように明記しています。
「なお、セクシュアルハラスメントについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれることに留意すること。」
出典:障発第1206001号(最終改正 令和7年3月31日)
短期入所では、宿泊中の支援(入浴・排せつ・就寝の介護)で身体的に近い場面があります。利用者または家族からの性的な言動についても、ハラスメントとして対応できる体制が必要です。
カスタマーハラスメントは令和8年10月1日から事業主の義務
カスタマーハラスメント(利用者や家族などからの著しい迷惑行為)への対策は、改正労働施策総合推進法により、令和8年10月1日から事業主の義務になります。
厚生労働省の指針案は、カスタマーハラスメントを次のように定義しています。
「職場におけるカスタマーハラスメントは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。」
出典:厚生労働省「職場におけるカスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等
「顧客等」には、施設・サービスの利用者及びその家族が含まれます。ただし、苦情や要望の全てがカスタマーハラスメントではありません。「客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れ」であり、カスタマーハラスメントには当たりません。
また、障害のある人が「社会的障壁を取り除いてほしい」と意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントに当たりません。
指針が示すカスタマーハラスメントの例として、次のものがあります。
- 長時間にわたる居座りや電話で労働者を拘束すること
- SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報を投稿すること
- 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること
起きたときの対応と相談窓口の設置
指針は、カスタマーハラスメントへの対処として次のことを求めています。
- 管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐこと
- 可能な限り労働者を一人で対応させないこと
送迎などで一人で対応しているときにハラスメントが起きた場合は、その場で言い返したりせず、あらかじめ決めておいた連絡先に連絡することが原則です。
また、相談した職員に対して不利益な扱いをすることは、労働施策総合推進法(パワーハラスメントに関する規定)で禁じられています。相談窓口の担当者と、相談した職員を不利益に扱わない方針を、職員全員に事前に周知しておくことが必要です。
当方の法定研修・訓練キット(短期入所版)では、ハラスメント防止(カスハラを含む)をテーマにした研修資料・確認テストを含んでいます。
この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等についての指針」、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の内容を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。令和8年10月施行のカスタマーハラスメント対策義務については、施行後に最新の指針を確認してください。作成:fufumumu_design


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