小規模多機能型居宅介護の処遇改善加算は、令和6年6月の改定で3種類の加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。加算率は最大14.9%で、月額報酬への上乗せが介護職員の賃金改善に充てられます。この記事では一本化後の加算区分・算定要件・届け出手順を整理します。
令和6年6月以降の加算:3種類が1本に
令和6年5月31日までは、以下の3種類の加算が別々に設定されていました。
- 介護職員処遇改善加算
- 介護職員等特定処遇改善加算
- 介護職員等ベースアップ等支援加算
令和6年6月1日以降、これらは「介護職員等処遇改善加算」(以下「処遇改善加算」)として一本化されました。小規模多機能型居宅介護の加算率は以下のとおりです。
| 区分 | 加算率 | 算定の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 14.9% | 職場環境等要件(複数の取り組み)+賃金改善要件をすべて満たす |
| Ⅱ | 14.6% | 職場環境等要件(一定数の取り組み)+賃金改善要件を満たす |
| Ⅲ | 13.4% | 旧加算の継続算定(経過措置あり) |
| Ⅳ | 10.6% | 旧加算の継続算定(経過措置あり) |
加算Ⅰが最も加算率が高く、新規開業の事業所も一定要件を満たせばⅠから算定できます。
加算が月額収入に与える影響
処遇改善加算は月額報酬に加算率を掛けた金額が上乗せされます。要介護3(月額22,359単位)で加算Ⅰ(14.9%)を算定した場合の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 基本月額報酬 | 約233,700円(22,359単位×10.45円) |
| 処遇改善加算Ⅰ(14.9%) | 約34,800円 |
| 合計 | 約268,500円 |
処遇改善加算の収入は、介護職員の賃金改善に充てることが義務付けられています(事業主の利益に流用することはできません)。
算定要件の概要
処遇改善加算(特にⅠ・Ⅱ)を算定するには、「賃金改善要件」と「職場環境等要件」の両方を満たす必要があります。
賃金改善要件
- 加算で得た収入を、介護職員の賃金改善(手当・一時金等)に充てること
- 賃金改善実施期間(毎年度)の計画・実績報告を行うこと
- 賃金改善の内容を就業規則・給与規程等に明記すること
職場環境等要件
- 入職促進に向けた取り組み(求人票の充実・見学・インターンシップの実施等)
- 資質の向上・キャリアアップに向けた支援(研修参加の費用補助等)
- 両立支援・多様な働き方の推進(育児・介護休業の取得推奨等)
- 腰痛を含む心身の健康管理(ストレスチェック・腰痛対策等)
- 生産性の向上のための体制整備(ICT・DX推進等)
加算ⅠとⅡでは、上記の「職場環境等要件」で実施が求められる取り組みの数・内容が異なります。厚生労働省が示す区分・取り組み数を確認することが必要です。
新規事業所が加算Ⅰを取る条件
開業直後の事業所が処遇改善加算Ⅰを算定するためには、開業年度の計画届け出の段階から職場環境等要件に対応した体制・取り組みを整える必要があります。
「まずⅢから始めて後でⅠに上げる」という方針も取れますが、一度低い区分で届け出ると、上位区分への変更は翌年度の計画届け出からとなるのが基本です(令和6年度の経過措置を除く)。開業時の計画段階から加算Ⅰの取得を目指すほうが長期的な収入増につながります。
届け出の手順
処遇改善加算を算定するには、毎年度の「計画書」と翌年度の「実績報告書」を指定権者(市区町村)に提出する必要があります。
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 毎年2月末〜3月(指定権者によって異なる) | 計画書の提出(翌年度の加算算定の根拠) |
| 毎年7月(指定権者によって異なる) | 実績報告書の提出(前年度の賃金改善の実績) |
| 加算を変更する場合 | 変更届の提出(区分変更・新規取得等) |
計画書の提出が遅れると、その年度の加算算定ができません。年度初めの加算算定(4月開始)に対して、多くの市区町村では前年2〜3月が計画書の提出期限になっています。新規開業の場合は開業時の計画届け出に含める形になりますが、指定権者に確認が必要です。
加算の実務上の注意点
処遇改善加算の実務で特に注意が必要な点は以下のとおりです。
- 配分方法の明確化:加算で得た収入をどの職員にどの方法(基本給・手当・一時金等)で配分するか、就業規則・賃金規程に明示する必要があります
- 対象職員の範囲:介護職員以外(事務職・管理者等)への配分も一定範囲で認められますが、割合の制限があります
- 賃金の「改善」要件:加算を取得する前の賃金水準を「ベースライン」として、そこからの改善を実施することが求められます
- 実績報告の記録整備:実績報告時に必要な給与明細・支給実績の記録を日常的に整備しておく必要があります
処遇改善加算を含めた収支計画
処遇改善加算Ⅰ(14.9%)を算定した場合と算定しない場合では、月額収入に大きな差が生じます。登録者20人(要介護3相当)の事業所では、加算Ⅰを算定することで月約70万円(年約840万円)の加算収入が生じます(加算収入は全額職員の賃金改善に充てる)。加算を取得しないと職員の採用・定着にも影響するため、開業時から積極的に取得することが事業運営の基本です。
処遇改善加算を含めた月次・年次の収支計画は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
- 介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月厚生労働省通知)
この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント