就労定着支援の多機能型。就労移行支援と一体で運営できるか。

就労定着支援の多機能型。就労移行支援と一体で運営できるか。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援は、就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)などと同一の建物・法人内で運営する「多機能型」または「併設型」として開設するケースが多くあります。単独で設置するよりも運営効率が上がる半面、それぞれのサービスとして人員・設備・記録を独立して管理しなければならない点に注意が必要です。この記事では省令・通知の原文を元に整理します。

多機能型は「同一の建物・法人で複数のサービスを提供する形」

多機能型とは、同一の事業所(または同一敷地内)で、就労定着支援と他の障害福祉サービスを一体的に運営する形態です。省令では「多機能型」という用語が使われており、就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・生活介護等と就労定着支援を組み合わせて指定を受けることが認められています。

就労定着支援は利用者の「就職先」からやってくる性質のサービスですが、同一法人が就労移行支援を運営している場合、就労移行支援で就職した方をそのまま就労定着支援に引き継ぐ流れができるため、実質的には多機能型の方が連携がスムーズです。

多機能型でも人員基準はサービスごとに満たす必要がある

多機能型を選択した場合でも、就労定着支援の人員基準と、もう一方のサービスの人員基準は、それぞれ独立して満たす必要があります。

就労定着支援の人員基準(省令第171号の規定):

  • 就労定着支援員:1名以上(省令の規定に基づく人員基準)
  • 管理者:1名(常勤・専従。ただし同一法人の他の職務を兼ねることができる場合あり)

人員の兼務が認められるかどうかは、各サービスの省令・通知・指定権者の判断によります。就労定着支援員と就労移行支援の就労支援員を同一人物が兼ねる場合の条件については、指定申請前に担当窓口で確認することをお勧めします。

設備の共用は一定範囲で認められる

多機能型・併設型では、共用部分(玄関・廊下・トイレ・相談室等)を複数サービスで共用することが認められています。ただし、就労定着支援の「専用の区画」は他サービスと区分する必要があります。

また、個人情報を含む就労定着支援の記録・書類は、就労移行支援等の書類と混在しないよう、別の書庫・ファイルで管理することが求められます。

会計は独立して管理する必要がある

多機能型で複数サービスを運営する場合でも、就労定着支援の会計(収支)は他のサービスと独立して管理することが省令で求められています。報酬の請求も、サービスごとに国民健康保険団体連合会(国保連)への請求が必要です。

法人全体でまとめて経理処理をする場合でも、サービスごとの原価・収支が把握できる形での記帳が必要です。

就労移行支援との連携が利用者確保の実際的な方法

実際に就労定着支援の利用者をどう確保するかという観点から、就労移行支援との連携は重要です。就職後6か月を迎えた就労移行支援の利用者を、就労定着支援に引き継ぐことが安定した利用者確保の基本的な流れです。

多機能型であれば、同一の担当者が顔なじみの利用者を引き続き担当できるため、本人への不安が少なく移行できます。一方で、就労移行支援と就労定着支援は役割・支援の性質が異なるため、「同じ担当者が続けるだけ」ではなく、就労定着支援の計画・記録を独立して整備することが求められます。

単独での開設よりも固定費が少なく済む

就労定着支援を単独で開設する場合と、既存の就労移行支援等に併設する場合では、設備・家賃・管理者の人件費の面で大きく異なります。特に開業初期(1〜2年目)は就労定着支援の報酬が低く(区分7・1,074単位/月)、単独での採算を取ることは難しい場合があります。

既存の事業所に就労定着支援を追加する形での開設は、固定費を抑えながら利用者の引き継ぎ体制を作るという点で合理的です。

多機能型の指定申請で気を付けること

多機能型・併設型で指定を受ける場合、申請書類は各サービスごとに作成します。人員配置(誰がどのサービスの担当か、兼務はどの範囲で認められるか)が明確でない場合、指定が下りない・修正を求められることがあります。

事前に担当窓口(都道府県または市区町村の障害福祉担当)に、多機能型としての申請の可否・必要書類・審査のポイントを確認してから準備を進めることをお勧めします。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)

この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。多機能型の詳細は指定権者によって取り扱いが異なります。指定申請前に担当窓口に確認してください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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