就労定着支援の運営規程。何を定めるか。

就労定着支援の運営規程。何を定めるか。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援の事業所を運営するには、運営規程を作成して掲示する義務があります。運営規程は「どのような支援を、どのような条件で行うか」を定めた事業所のルール集であり、指定申請の書類としても必要になります。この記事では省令(厚生労働省令第171号)が定める運営規程の記載事項を整理します。

運営規程は省令で記載事項が定められている

就労定着支援の指定基準省令では、事業者は以下の事項を定めた運営規程を作成しなければならないとされています。

  • 事業の目的及び運営の方針
  • 従業者の職種、員数及び職務の内容
  • 営業日及び営業時間
  • 就労定着支援の提供方法、利用定員その他就労定着支援の提供に関する事項
  • 利用者から受領する費用の種類及びその額
  • 緊急時等における対応方法
  • 非常災害対策
  • 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
  • 虐待の防止のための措置に関する事項
  • その他運営に関する重要事項

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令第171号)の就労定着支援に関する条文

運営規程は指定申請の提出書類の一つ

運営規程は、都道府県・市区町村への指定申請の際に提出を求められます。申請書類として審査されるため、省令の記載事項を網羅していることが必要です。

また、利用者や家族からの求めに応じて閲覧できるようにしておくこと(重要事項説明書としての機能)も求められます。実務上は、重要事項説明書と運営規程をセットで整備し、利用契約時に説明・署名をとる形が一般的です。

「営業日及び営業時間」の定め方

就労定着支援は通所型ではなく、利用者の職場・自宅への訪問や電話・メールでの相談が中心です。そのため、「営業時間」の定め方は他のサービスと異なる面があります。

一般的には「月曜〜金曜、9時〜17時」などの基本時間を定め、「訪問支援・電話対応は別途調整」といった形で補足することが多いです。ただし、利用者が就労している時間帯(日中)に連絡・訪問が必要な場面もあるため、実態に即した柔軟な定め方が求められます。

「利用者から受領する費用」の定め方

就労定着支援は障害福祉サービスであり、利用者の自己負担は応能負担(収入に応じた上限額)で定められています。報酬告示に基づく公定価格の1割が原則の自己負担ですが、利用者の収入が低い場合は上限額が設定されており、実質無料になる場合も多くあります(利用者負担については別記事で詳しく説明します)。

運営規程には、利用者から受領できる費用の種類と金額を明記します。食費・交通費等の実費を受領する場合は、その根拠と金額も記載します。

虐待防止に関する事項は令和4年4月以降の必須記載

令和4年4月改定で、すべての障害福祉サービス事業者に虐待防止の取り組みが義務化されました。就労定着支援の運営規程にも、以下の事項を盛り込む必要があります。

  • 虐待防止委員会の設置と定期的な開催
  • 虐待防止のための指針の整備
  • 虐待防止に関する研修の実施
  • 虐待防止のための担当者の配置

これらは運営規程の「虐待の防止のための措置に関する事項」の章に記載し、別途「虐待防止に関する指針」を整備します。

非常災害対策も記載が必要

省令では非常災害対策(地震・火災等)に関する定めを運営規程に盛り込むことが求められています。具体的には以下の内容を定めます。

  • 非常災害時の利用者・職員の安全確保の方針
  • 地域の避難体制・避難場所の確認
  • 非常時の連絡体制(利用者・家族・行政機関等)

就労定着支援は通所型ではないため、施設内の避難訓練よりも「利用者の職場や自宅での災害時の安否確認・連絡体制」を整備することが実態に即した取り組みになります。

BCP(業務継続計画)との関係

令和6年4月以降、障害福祉サービス全体でBCP(業務継続計画)の策定が義務化されています。BCP は運営規程とは別の文書として作成しますが、「非常災害対策」の記載と整合性を保つ必要があります。

BCPには感染症・自然災害の両方に対応した内容が求められており、就労定着支援の場合は「スタッフが感染等で出勤できない際に、利用者への連絡・支援をどう継続するか」が中心的な課題になります。

運営規程の変更には届け出が必要

運営規程の内容を変更した場合は、速やかに指定権者(都道府県・市区町村)に届け出ることが必要です。報告義務がある変更事項は省令の規定に従いますが、営業日・営業時間・利用定員の変更は届け出が必要な事項の代表例です。

変更後の運営規程は利用者・家族にも周知する義務があります。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
  • 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律

この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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