有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)では、口腔衛生管理加算と栄養マネジメント強化加算の2つを算定することで、入居者の口腔機能維持と栄養状態改善に取り組みながら収入を増やすことができます。どちらも歯科・管理栄養士との連携が必要で、専門職の関与を文書で証明できることが算定の前提になります。
口腔衛生管理加算とは
口腔衛生管理加算は、歯科医師または歯科衛生士が定期的に入居者の口腔の健康状態を確認し、口腔衛生の管理を行う体制を整えた事業所が算定できる加算です。
高齢者の口腔機能低下は、誤嚥性肺炎・低栄養・フレイルのリスクと深く関連しています。口腔ケアを専門職が指導・実施することで、これらのリスクを下げる効果が期待でき、介護報酬上も評価されています。
根拠は介護報酬の告示(平成12年厚生省告示第19号・最終改正:令和6年3月)です。特定施設入居者生活介護の口腔衛生管理加算として規定されています。
口腔衛生管理加算の算定要件
口腔衛生管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分があります。算定要件の概要は以下のとおりです。
加算(Ⅰ)の要件
- 歯科医師または歯科衛生士が、口腔衛生管理に関する技術的助言・指導を月1回以上行うこと
- 事業所の介護職員等が、歯科医師または歯科衛生士の指導の下で口腔ケアを実施すること
- 口腔に関するモニタリング・記録を行うこと
加算(Ⅱ)の要件
加算(Ⅱ)は(Ⅰ)の要件に加えて、口腔衛生管理の体制をさらに強化した内容が求められます(医科・歯科連携の強化など)。詳細は告示原文・都道府県通知で確認してください。
単位数について
口腔衛生管理加算の単位数は、告示上(Ⅰ)と(Ⅱ)で異なります。ご提示いただいた参考値(Ⅰ:90単位/月・Ⅱ:110単位/月)は令和3年改定前後の数値として引用されることがありますが、令和6年改定後の正確な単位数は告示原文(平成12年厚生省告示第19号)または厚生労働省が公表するサービスコード表でご確認ください。単位数は報酬改定のたびに変わる場合があります。
栄養マネジメント強化加算とは
栄養マネジメント強化加算は、常勤の管理栄養士(または非常勤で週5日以上の勤務)を配置し、入居者の低栄養リスクに応じた個別の栄養管理を強化した事業所が算定できる加算です。
令和3年度の介護報酬改定で「栄養マネジメント加算」が廃止・基本報酬に組み込まれ、それよりも高い栄養管理に取り組む事業所向けに「栄養マネジメント強化加算」が創設されました。
栄養マネジメント強化加算の算定要件
主な算定要件は以下のとおりです。
- 管理栄養士の配置:常勤の管理栄養士、または週5日以上・1日6時間以上(目安)勤務の非常勤管理栄養士の配置
- 低栄養リスクに応じた管理:低栄養リスクが高い利用者には月2回以上の栄養ケア計画の評価・見直し
- 嚥下困難者への対応:嚥下困難者に対して、医師・歯科医師の指示のもと、嚥下機能に配慮した食事提供
- LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出:算定には原則としてLIFEへの情報提出が必要
単位数の参考値として50単位/日が示されることがありますが、令和6年改定後の正確な単位数は告示原文・サービスコード表でご確認ください。
LIFEへのデータ提出が必須
栄養マネジメント強化加算の算定には、LIFEへの情報提出が必要です(令和3年4月から)。LIFEとは、厚生労働省が運営する科学的介護情報システムで、利用者の状態・ケア内容・アウトカムのデータを収集・分析するためのプラットフォームです。
LIFEへのデータ提出を怠ると、算定していた加算の返還を求められる場合があります。システムへの登録・操作方法は都道府県や国保連の研修・説明会で確認できます。
口腔衛生管理加算(Ⅱ)もLIFEへのデータ提出が求められる場合があります。詳細は告示・通知で確認してください。
両加算を同時算定した場合の収入試算
口腔衛生管理加算と栄養マネジメント強化加算を同時算定した場合の収入への影響を、仮の条件で整理します。
(以下の単位数は参考値です。正確な数値は最新の告示・サービスコード表で確認してください。)
- 入居者20名で口腔衛生管理加算(Ⅰ)を算定:20名 × 90単位/月(参考値)= 1,800単位/月
- 入居者20名で栄養マネジメント強化加算を算定:20名 × 50単位/日(参考値)× 30日 = 30,000単位/月
1単位の単価が地域区分により異なりますが、仮に10.27円(6級地)の場合:
- 口腔衛生管理加算:1,800単位 × 10.27円 ≒ 18,486円/月
- 栄養マネジメント強化加算:30,000単位 × 10.27円 ≒ 308,100円/月
栄養マネジメント強化加算は日単位で積み上がるため、入居者数が多いほど収入増の効果が大きくなります。ただし、管理栄養士の採用コスト(年収400〜500万円程度が多い)と加算収入のバランスを計画段階で確認することが重要です。
届出の手続き
口腔衛生管理加算・栄養マネジメント強化加算を算定するには、都道府県(または指定都市・中核市)への届出が必要です。
届出の主な書類は以下のとおりです。
- 加算算定に係る体制等に関する届出書
- 歯科衛生士・管理栄養士の資格証明書(写し)および勤務体制を確認できる書類
- 歯科医師等との連携体制を示す書類(口腔衛生管理加算)
- LIFEへの登録を確認できる書類(栄養マネジメント強化加算)
届出が受理された翌月(または翌々月)から算定可能になることが多いですが、自治体により異なります。
よくある算定上の注意点
口腔衛生管理加算:歯科衛生士の訪問頻度の記録不足
加算(Ⅰ)は月1回以上の技術的助言・指導が要件です。訪問日・実施内容・対応した入居者の記録が運営指導で確認されます。記録の様式は自治体指定のものがある場合があるため、事前に確認しましょう。
栄養マネジメント強化加算:低リスク者への月2回評価の漏れ
低栄養リスクが「高」の入居者に対しては月2回以上の評価が必要です。「中」「低」の入居者と区別して管理し、評価頻度の漏れがないよう記録を整備することが重要です。
LIFEへのデータ未提出
栄養マネジメント強化加算はLIFEへのデータ提出が算定要件に含まれます。システムへのアクセス権限の設定・定期的なデータ入力の体制を整えてください。
FAQ
口腔衛生管理加算の歯科衛生士は常勤でないといけませんか
月1回以上の訪問ができれば非常勤でも算定要件を満たすと解釈されるケースが多いですが、具体的な要件は告示・通知で確認してください。
管理栄養士を採用せず委託栄養士で対応できますか
栄養マネジメント強化加算では常勤または週5日以上の非常勤管理栄養士の配置が原則です。委託栄養士のみで算定できるかどうかは要件を満たさない可能性が高いため、都道府県に確認してください。
両方の加算を同時に算定できますか
口腔衛生管理加算と栄養マネジメント強化加算は別の加算であり、要件を満たせば同時算定できます。
住宅型有料老人ホームでも算定できますか
住宅型有料老人ホームは特定施設の指定を受けていないため、介護報酬(特定施設入居者生活介護)の加算は算定できません。居宅サービスとして訪問介護等を利用する場合は、各サービスの加算体系が適用されます。
まとめ
口腔衛生管理加算は歯科衛生士との月1回以上の連携で算定でき、栄養マネジメント強化加算は管理栄養士の配置とLIFEへのデータ提出で算定できます。どちらも専門職との連携が前提ですが、入居者の口腔・栄養状態の改善というケアの質向上につながる取り組みです。
加算取得を検討する際は、最新の告示・サービスコード表で単位数を確認した上で、人件費とのバランスを収支計画に反映させてください。

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