通所介護の入浴介助加算は、加算(Ⅰ)が40単位/日・加算(Ⅱ)が55単位/日で算定できる加算です(平成12年厚生省告示第19号、最終改正:令和6年3月)。両者の最大の違いは、加算(Ⅱ)では利用者の自宅浴室を専門職が訪問して評価することが必要な点です。令和6年4月の改定では加算(Ⅰ)に職員への研修実施が新たな要件として追加されました。このページでは、加算の種類・単位数・算定要件・届出手続き・収入への影響を整理します。
入浴介助加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の単位数
入浴介助加算は令和3年4月に創設され、それ以前の「入浴介助加算(一本)」が二段階になりました。令和6年4月改定後の単位数は次のとおりです。
| 加算の種類 | 単位数 | 算定単位 |
|---|---|---|
| 入浴介助加算(Ⅰ) | 40単位 | 1日につき |
| 入浴介助加算(Ⅱ) | 55単位 | 1日につき |
単位数は令和3年の創設時から変わっていません(令和6年改定でも変更なし)。加算(Ⅱ)のほうが1日あたり15単位多くなります。
根拠となる告示は「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)」の通所介護費の欄です。令和6年3月の最終改正でも単位数自体に変更はなく、算定要件の一部が明確化・追加されました。
入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件
加算(Ⅰ)は、次の要件を満たす場合に算定できます。
(1)入浴介助を適切に行う環境の整備
事業所に入浴のための設備(浴槽等)があり、利用者が入浴介助を受けられる環境を整えていることが前提です。シャワーのみで浴槽のない事業所は算定できません。
(2)医師・専門職による職員への研修等の実施(令和6年4月新設)
令和6年度改定で加算(Ⅰ)に追加された要件です。入浴介助を適切に行うことができる医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員等が、事業所の職員に対して入浴介助に関する研修等を行うことが必要になりました(告示改正)。これは、加算(Ⅰ)の算定水準を引き上げ、入浴介助の質を確保するための改定です。
研修の形式・頻度の具体的な基準は各都道府県・市区町村の解釈通知によって異なりますので、届出前に指定権者への確認を行ってください。
(3)入浴介助の実施
実際に利用者に対して入浴介助を行った場合に算定します。入浴介助を行っていない日は算定できません。
入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件
加算(Ⅱ)は加算(Ⅰ)の要件をすべて満たしたうえで、さらに次の要件が加わります。
(1)利用者の居宅への訪問・浴室環境の評価
医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員等が、利用者の自宅を訪問し、浴室における動作と浴室の環境を評価することが必要です。この訪問評価は、通所介護事業所の職員が行う場合も含まれます。
令和6年4月改定で追加された要件として、事業所の介護職員が利用者宅を訪問し、医師・PT・OT等の指示のもとICT機器を活用して状況を把握・共有し、医師等が評価・助言を行う場合も算定可能となりました(告示・通知改正)。専門職が直接訪問できない場合の代替手段として活用できます。
(2)個別の入浴計画の作成
訪問評価の結果を踏まえ、利用者ごとの個別の入浴計画を作成します。計画には次の内容を含めることが求められます。
- 利用者の居宅での入浴環境の状況
- 目標(居宅での自立した入浴を目指す内容)
- 具体的な支援内容・介助方法
この個別入浴計画は、通所介護計画に組み込む形式でも可能とされています。
(3)個別入浴計画に基づく入浴介助の実施
作成した個別入浴計画に従って入浴介助を行った場合に算定します。計画を作成したとしても、計画に基づいていない介助を行った日は算定できません。
(4)居宅での自立した入浴を目指す方針の明記
令和6年改定では、加算(Ⅱ)の目的が「利用者が居宅において自立した入浴を行えるよう支援すること」である点が告示に明記され、要件として位置づけられました。加算(Ⅱ)は単に55単位を算定するためではなく、居宅での入浴自立を目標とした支援であることが明確化されています。
令和6年4月改定で変わったポイント
令和6年度の介護報酬改定(令和6年3月厚生省告示・通知改正)では入浴介助加算に次の変更がありました。
| 変更点 | 加算種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 職員研修の義務化 | (Ⅰ) | 専門職による職員への入浴介助研修が算定要件に追加 |
| ICT代替訪問の解禁 | (Ⅱ) | 介護職員がICT機器で状況共有し専門職が評価する方式も算定可 |
| 居宅自立目標の明文化 | (Ⅱ) | 「利用者の居宅での入浴自立」という目標が告示に明記 |
単位数(Ⅰ:40単位/日・Ⅱ:55単位/日)は変更ありません。
届出の手続き
入浴介助加算を算定するには、事前に指定権者(都道府県または市区町村)への届出が必要です。
届出先
都道府県または市区町村(事業所の所在地による)
届出書類(一般的な例)
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 体制等状況一覧表(入浴介助加算の種別を記載)
- 加算(Ⅱ)の場合:訪問評価を行った記録・個別入浴計画の様式
届出の書式や添付書類は自治体によって異なります。届出後、翌月(一般的には届出月の翌々月)から算定が開始されます。届出前に算定することはできません。
加算(Ⅱ)は加算(Ⅰ)との併算定ができません。(Ⅱ)を算定する場合は(Ⅱ)のみを届け出ます。
収入への影響試算
定員20名・稼働率80%(1日16名利用)・月22営業日の事業所で、地域区分「その他(1単位=10.00円)」の場合を試算します。
| 加算の種類 | 1日の加算収入 | 月間加算収入 | 年間加算収入 |
|---|---|---|---|
| なし | 0円 | 0円 | 0円 |
| 加算(Ⅰ)40単位 | 6,400円 | 約140,800円 | 約169万円 |
| 加算(Ⅱ)55単位 | 8,800円 | 約193,600円 | 約232万円 |
計算式:単位数×1単位単価×1日利用者数×営業日数
加算(Ⅱ)と加算(Ⅰ)の差は1日あたり2,400円・月間約52,800円・年間約63万円です。加算(Ⅱ)の要件(訪問・個別計画)を満たせるかどうかが、この差を受け取れるかどうかの分かれ目になります。
地域区分が高い地域(例:1級地11.40円)の事業所は、さらに収入が大きくなります(加算Ⅱの場合、月間約220,704円)。
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらを選ぶべきか
加算(Ⅱ)のほうが収入は大きくなりますが、取得に向いている事業所の条件があります。
加算(Ⅱ)が取得しやすいケース
- PT・OT・介護福祉士等の専門職が在籍または連携している
- 利用者の自宅浴室の環境確認・訪問が実施できる体制がある(またはICT活用が可能)
- 居宅での入浴自立を目標とした個別支援計画の作成に対応できる
加算(Ⅰ)にとどめるべきケース
- 訪問評価の体制を整えるのが困難な場合
- 居宅での入浴自立という目標設定が難しい利用者が大半の場合
加算(Ⅱ)の「訪問評価」については、令和6年改定でICT代替が認められましたが、実際には各自治体の解釈通知・Q&A の内容を確認してから体制を整えることが重要です。体制が実態と届出内容で乖離するリスクがあるため、指定権者への事前確認をお勧めします。
よくある算定ミスと注意点
(1)入浴を実施していない日に算定してしまう
入浴介助加算は「入浴介助を行った日」にのみ算定できます。訪問・外出等で入浴を行わなかった日・実施記録がない日は算定できません。日々の記録と算定日の突き合わせが必要です。
(2)加算(Ⅱ)で訪問評価の記録が不十分
加算(Ⅱ)は、訪問評価を行ったことの記録と個別入浴計画が残っていないと算定根拠を示せません。訪問日・訪問者の職種・評価内容を記録として整備してください。
(3)届出変更を忘れる
加算(Ⅰ)から(Ⅱ)に変更する場合、または加算をやめる場合は届出が必要です。変更を忘れると過誤請求となります。
(4)令和6年改定の職員研修要件(加算Ⅰ)への対応漏れ
令和6年4月以降、加算(Ⅰ)にも専門職による職員研修が要件として加わりました。改定前から算定している事業所で研修を実施していない場合は算定できなくなっていますので、体制を整えているかどうかの確認が必要です。
よくある質問
入浴介助加算(Ⅱ)の訪問評価は誰が行えるか
医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員等が対象です。令和6年改定以降は、事業所の介護職員がICT機器を活用して状況把握し、医師等が評価・助言する方法も認められています。ただし、ICT代替の具体的な要件(どのICT機器か、記録の方法等)は自治体の解釈通知で確認してください。
通所介護の契約利用者全員に加算(Ⅱ)を算定できるか
加算(Ⅱ)は「居宅での自立した入浴を目指す」目標がある利用者が対象です。認知症の重度化等で居宅での自立が目標として設定できない利用者には加算(Ⅱ)の算定は難しい場合があります。個別の状態を確認してください。
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の同時算定はできるか
できません。同一の利用者・同一の日について、加算(Ⅰ)と(Ⅱ)のいずれか一方のみを算定します。
入浴介助加算はシャワー浴でも算定できるか
算定可能とされています。「入浴」の中にシャワー浴が含まれるかどうかは通知・Q&Aで確認が必要ですが、一般的にシャワー浴も入浴介助に含まれます。ただし、手足浴・清拭は「入浴介助」には含まれません。
まとめ
通所介護の入浴介助加算について整理します。
- 単位数は加算(Ⅰ)40単位/日・加算(Ⅱ)55単位/日(令和6年改定でも変更なし)
- 加算(Ⅰ)は令和6年改定で専門職による職員研修の実施が要件に追加された
- 加算(Ⅱ)は利用者の自宅浴室への訪問評価と個別入浴計画の作成が必要
- 令和6年改定でICT機器を使った代替訪問も加算(Ⅱ)で認められた
- 定員20名・稼働率80%・月22日の事業所では、加算(Ⅱ)で月間約19万円の収入増
- 届出は事前申請が必要。届出前の算定は不可
加算(Ⅱ)を取得するかどうかは、訪問評価の体制を整えられるかどうかが判断の中心になります。令和6年改定のICT代替要件は対象者の拡大に有効ですが、自治体の解釈通知を事前に確認してから体制整備を進めてください。
通所介護の開業・収支計画を立てる際には、入浴介助加算をはじめとする加算収入の見込みを含めたシミュレーションが重要です。無料の収支シミュレーターをご活用ください。

コメント