消防設備士 乙6 消防法上の主な命令の種類

消防法に違反している建物には消防署(消防長または消防署長)から改善命令・措置命令が出されます。消火器の未設置・点検未実施・型式廃止品の放置・防火管理義務の不履行等が対象となります。命令に従わない場合は命令の種類に応じて罰則(拘禁刑・罰金)の対象になります。命令への対応は迅速かつ正確に行うことが重要です。

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消防法上の主な命令の種類と根拠

消防長または消防署長が建物の関係者(所有者・管理者・占有者)に出すことができる命令の主な種類は次のとおりです。

命令の種類 根拠条文 命令の内容 命令違反の罰則
措置命令 消防法第5条第1項 防火対象物の改修・移転・除去・工事停止・その他の必要な措置 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(第39条の3の2)
使用禁止・停止・制限命令 消防法第5条の2第1項 措置命令が履行されない場合等に、当該防火対象物の使用の禁止・停止・制限 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第39条の3)
現場措置命令 消防法第5条の3第1項 危険物件・消防活動に支障になる物件への緊急措置 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第41条第1号)
防火管理者選任命令 消防法第8条第3項 防火管理者を選任していない場合に選任を命じる 30万円以下の罰金または拘留(第44条)
消防設備維持命令 消防法第17条の4第1項・第2項 設備等技術基準に従って消防設備を設置・維持するよう命じる 30万円以下の罰金または拘留(第44条第12号)

命令は原則として消防長または消防署長が発令します。緊急の場合、消防吏員が現場で措置を命じることができる場合もあります(第5条の3)。

措置命令(消防法第5条)の詳細

措置命令は消防長または消防署長が、防火対象物の位置・構造・設備・管理状況が次のいずれかに該当する場合に発令できます。

  • 火災の予防に危険であると認める場合
  • 消火・避難その他の消防活動に支障になると認める場合
  • 火災が発生したならば人命に危険であると認める場合
  • その他火災の予防上必要があると認める場合

命令の対象は「権原を有する関係者」です。特に緊急の必要がある場合は、関係者だけでなく「工事の請負人または現場管理者」にも命令することができます(第5条第1項)。

ただし、他の法令により建築・増築・改築または移築の許可または認可を受けた工作物で、その後事情が変更していないものについては措置命令を出すことができません(第5条第1項ただし書)。

命令の公示制度(消防法第5条第3項・第4項)

消防長または消防署長は、措置命令(第5条第1項)を発令した場合には、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければなりません(第5条第3項)。

公示の内容には違反の事実と命令の内容が含まれます。標識は命令に係る防火対象物またはその場所に設置することができ、所有者・管理者・占有者は標識の設置を拒み、または妨げてはなりません(第5条第4項)。

公示制度は命令の実効性を高めるための制度です。命令が出た建物に標識が設置されると、近隣・顧客等に命令の事実が知られることになります。このため、命令を受けた建物の関係者は早期に改善を行う動機となっています。

使用禁止命令が発令される条件

使用禁止命令(第5条の2)は、措置命令(第5条第1項)・防火管理者選任命令(第8条第3項)・消防設備維持命令(第17条の4)等が発令されたにもかかわらず、次のいずれかに該当する場合に発令されます。

  • 命令が履行されない場合
  • 履行されても十分でない場合
  • 期限が付された命令で履行されても当該期限までに完了する見込みがない場合
  • これらの命令だけでは火災予防の危険・活動支障・人命危険を除去できないと認められる場合

使用禁止命令は最も重い行政命令であり、命令に違反した場合の罰則は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第39条の3)と、措置命令違反よりも重くなっています。使用禁止命令は通常の措置命令が履行されないケースで段階的に発令される点が特徴です。

消防設備維持命令(消防法第17条の4)

消防長または消防署長は、防火対象物の消防設備等が設備等技術基準に従って設置されていない、または維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有する者に対し、技術基準に従って設置・維持に必要な措置をすべきことを命ずることができます(消防法第17条の4第1項・第2項)。

消火器については次のような状況が消防設備維持命令の対象になります。

  • 消防法施行令第10条の設置基準を満たす本数が設置されていない
  • 型式廃止消火器(期限後)が設置基準に含まれている
  • 消火器の配置・設置高さが基準に適合していない
  • 消火器の外観が著しく損傷しており消防設備としての機能を有していない

消防設備維持命令に違反した場合は30万円以下の罰金または拘留の対象となります(消防法第44条第12号)。

消火器に関連した命令が出される主な原因

立入検査(消防法第4条)の結果、消火器に関連した命令が出される主な原因は次のとおりです。

違反の内容 対応する命令
法定本数に満たない消火器しか設置されていない 消防設備維持命令(第17条の4)
型式廃止消火器(期限超過)が設置されている 消防設備維持命令(第17条の4)
消火器の点検が実施されていない 消防設備維持命令・点検報告命令
点検結果報告書が消防署に提出されていない 消防署長からの指導(報告命令)
廃棄対象(著しい腐食・変形)の消火器が放置されている 消防設備維持命令(第17条の4)
消火器の設置場所が障害物で取り出せない状態 措置命令(第5条)または消防設備維持命令

命令を受けた場合の対応フロー

消防署から命令(立入検査結果通知書・改善命令書等)を受けた場合の対応は次のとおりです。

  1. 命令内容と改善期限の確認:命令書に記載された違反事項・改善期限を確認する。命令書は必ず保管する
  2. 専門業者への依頼:消火器の設置・交換・整備は消防設備士乙6等の有資格者に依頼する。無資格者が対応しても法令上有効な措置とはならない
  3. 改善措置の実施:命令に記載された違反事項を是正する。消火器の交換・増設・点検実施・報告書提出等
  4. 改善完了報告書の提出:改善が完了したら「改善完了報告書」または「措置完了報告書」を所轄消防署に提出する
  5. 確認検査への対応:消防署から改善確認の立入検査が行われる場合がある。確認検査で問題がなければ命令は解除される

改善期限を過ぎても対応しない場合は、段階的に使用禁止命令・罰則の適用へと進む可能性があります。命令を受けた段階で速やかに対応することが最も重要です。

命令に従わない場合の罰則の体系

命令の根拠 罰則規定 罰則の内容
使用禁止命令(第5条の2第1項)違反 消防法第39条の3 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
措置命令(第5条第1項)違反 消防法第39条の3の2 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
現場措置命令(第5条の3第1項)違反 消防法第41条第1号 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
防火管理者選任命令違反・消防設備維持命令違反 消防法第44条 30万円以下の罰金または拘留
点検報告義務(第17条の3の3)違反 消防法第44条第11号 30万円以下の罰金または拘留

使用禁止命令違反(第39条の3)が最も重く、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。次いで措置命令違反(第39条の3の2)が2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。罰則は命令の重大性・危険性の大きさに比例して定められています。

なお「拘禁刑」は2022年(令和4年)の刑法改正により、従来の「懲役」「禁錮」が統一された用語です。消防法の条文も現行法では「拘禁刑」と記載されています。

命令への不服申立て(審査請求)

措置命令(第5条)・使用禁止命令(第5条の2)・現場措置命令(第5条の3)に不服がある場合は、行政不服申立て(審査請求)を行うことができます(第5条の4)。

審査請求の期間は、命令を受けた日の翌日から起算して30日以内です(第5条の4)。また、命令または審査請求に対する裁決の取消しの訴え(行政訴訟)は、命令・裁決を受けた日から30日以内に提起しなければなりません(第6条第1項)。

ただし、命令が出された後も是正義務は続くため、審査請求の期間中であっても改善措置を並行して進めることが実務上は推奨されます。

消防設備士乙6が関わる場面

消防設備士乙6が命令に関わる場面として次のことが考えられます。

  • 点検業務の受注時:立入検査後に消防設備維持命令・改善指導を受けた建物から緊急の点検・整備依頼が来る場合がある。命令の内容を確認した上で対応する
  • 点検中に違反状態を発見した場合:型式廃止消火器・廃棄基準に該当する消火器・設置本数の不足を発見した場合は、建物管理者に書面で通知する義務がある
  • 改善完了報告書の作成:消防設備士として点検・整備を行った場合、改善完了の証明として点検票・整備記録を作成することが求められる

試験での出題ポイント整理

問われ方 正しい答え 根拠
措置命令の根拠条文は 消防法第5条第1項 消防法第5条
措置命令に違反した場合の罰則は 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 消防法第39条の3の2
使用禁止命令の根拠条文は 消防法第5条の2第1項 消防法第5条の2
使用禁止命令に違反した場合の罰則は 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 消防法第39条の3
消防設備維持命令の根拠条文は 消防法第17条の4第1項・第2項 消防法第17条の4
措置命令発令後に公示義務があるか ある(標識の設置等による公示が義務) 消防法第5条第3項

まとめ

消防法上の命令は、措置命令(第5条)・使用禁止命令(第5条の2)・防火管理者選任命令(第8条)・消防設備維持命令(第17条の4)等があります。命令は原則として消防長または消防署長が発令し、措置命令の発令後は公示(標識設置等)が義務づけられます。命令に従わない場合の罰則は命令の種類で異なり、使用禁止命令違反が最も重く(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)、措置命令違反は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。消火器に関連する違反(設置本数不足・型式廃止品の放置・点検未実施等)が消防設備維持命令の対象となるため、消防設備士乙6は点検中に発見した違反状態を確実に記録・報告することが重要です。

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業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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