グループホームの稼働率。黒字化するには何%必要か。
グループホーム(共同生活援助)の黒字化に必要な稼働率は、費用水準によって異なりますが、基本報酬と加算を合わせた収入が月の固定費を上回るには、一般的に70〜80%以上の稼働率が目安とされています。全国平均の月収入は347.4万円(定員15人・介護サービス包括型・令和5年経営実態調査第17表)で収支差率9.1%となっており、稼働率の管理が収益性の中心です。
この記事では、稼働率の計算方法・黒字化に必要な稼働率の試算・開業初期の傾向・稼働率を上げる具体的な方法を整理します。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 障害者グループホーム 開業向け収支シミュレーター
稼働率は、定員に対して実際に入居している利用者の比率。
グループホームの稼働率は、事業所の定員に対して実際に入居している利用者の比率です。
計算式:稼働率 = 入居者数 ÷ 定員 × 100%
定員15人の事業所に13人が入居している場合、稼働率は 13÷15×100 ≈ 87% になります。
月単位では「延べ入居日数 ÷(定員×月の日数)× 100%」で計算する場合もあります。この場合、月途中の入退居が日次で反映されます。報酬の計算は実際のサービス提供日ごとに行われるため、月平均の稼働率よりも「日々の実入居者数」が収入に直結します。
全国平均の月収入は347.4万円(定員15人・収支差率9.1%)。
厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」第17表(介護サービス包括型・令和4年度決算)によると、次のとおりです。
| 項目 | 全国平均(令和5年調査・介護サービス包括型) |
|---|---|
| 1事業所あたり平均定員 | 約15人 |
| 月収入(介護給付費+利用者負担等) | 約347.4万円 |
| 収支差率 | 9.1% |
この月収入には基本報酬のほかに処遇改善加算・夜間支援等体制加算・人員配置体制加算などが含まれています。加算の金額は事業所の体制や利用者の区分によって異なるため、「347.4万円」から単純に稼働率を逆算することはできません。ただし、この収入水準と収支差率は、定員15人で安定した稼働を達成したときの参考値として活用できます。
稼働率を変えたときの月収入(区分5・基本報酬のみの試算)。
加算を含まない基本報酬のみのモデルで、稼働率別の月収入を試算します(介護サービス包括型・区分5・456単位・その他地域10円・30日。出典:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」13ページ)。
| 稼働率 | 稼働人数(定員15人) | 月収入(基本報酬のみ) |
|---|---|---|
| 100% | 15人 | 2,052,000円 |
| 87% | 13人 | 1,778,400円 |
| 80% | 12人 | 1,641,600円 |
| 73% | 11人 | 1,504,800円 |
| 67% | 10人 | 1,368,000円 |
| 60% | 9人 | 1,231,200円 |
計算式:456単位 × 稼働人数 × 10円 × 30日
上の試算は区分5・加算なしの最もシンプルなモデルです。実際には処遇改善加算・夜間支援等体制加算等が加わり、同じ稼働人数でも収入は増えます。加算が収入に占める割合は事業所の体制によって異なります。
黒字化に必要な稼働率は、月の固定費の水準によって変わる。
損益分岐点(収入=費用となる稼働人数)は、月の固定費によって変わります。費用の主な内訳は次のとおりです。
| 費目 | 概要 |
|---|---|
| 人件費(最大の費目) | 世話人・生活支援員・管理者・サービス管理責任者の給与+社会保険料事業主負担分 |
| 家賃(賃貸の場合) | 物件数×月額賃料(定員15人・住居3か所なら各10〜20万円程度) |
| 光熱費・消耗品 | 電気・ガス・水道・共用部の消耗品等 |
| その他経費 | 保険料・通信費・システム利用料・車両費等 |
費用の合計は事業所の規模・地域・給与水準によって大きく異なります。区分5・基本報酬のみ(1人あたり30日分:456×10×30 = 136,800円)で、費用150万円・200万円の2つのケースの損益分岐を計算します。
- 費用150万円の場合:1,500,000 ÷ 136,800 ≒ 10.97人 → 定員15人中11人(稼働率73%)で黒字化
- 費用200万円の場合:2,000,000 ÷ 136,800 ≒ 14.62人 → 定員15人中15人(稼働率97%)が必要
基本報酬のみのモデルでは、費用200万円を達成するために稼働率97%が必要です。ただし実際には処遇改善加算・夜間支援等体制加算が加わります。たとえば区分5に夜間支援等体制加算(I)(54単位)を加えると1人あたり30日分は(456+54)×10×30 = 153,000円になります。この場合の損益分岐は次のとおりです。
- 費用150万円:1,500,000 ÷ 153,000 ≒ 9.8人 → 稼働率67%(10人)で黒字化
- 費用200万円:2,000,000 ÷ 153,000 ≒ 13.1人 → 稼働率87%(14人)で黒字化
加算が1つ入るだけで損益分岐稼働率が大きく下がります。「一般的に稼働率70〜80%以上が目安」とされるのは、加算が一定程度入ることを前提にした経験的な目安です(一次資料による数値ではありません)。自事業所の費用水準と見込める加算をあわせて試算することが重要です。
稼働率が低い期間が続くと、運転資金が尽きるリスクがある。
開業直後は入居者が少なく、稼働率が目標水準に達するまでに時間がかかります。その間も家賃・人件費・光熱費などの固定費は毎月発生します。
定員15人・月の固定費200万円・区分5(夜間支援等体制加算Iのみ追加)のモデルで、稼働率60%(9人)が3か月続いた場合の試算です。
- 月収入:510×9×10×30 = 1,377,000円
- 月の赤字:200万円 − 1,377,000円 = 623,000円/月
- 3か月の累積赤字:約190万円
開業時に確保した運転資金(月次固定費の2〜3か月分、200万円なら400〜600万円)が3〜6か月程度で減っていく計算です。稼働率が低い期間を短くすることが、資金ショートを防ぐための最重要課題です。
収支シミュレーターでは「開始から何か月目に黒字化するか」「何か月目に資金ショートするか」を稼働率の段階的な設定で確認できます。資金計画の段階でこのシミュレーションを行うことで、必要な運転資金の規模を把握できます。
開業初期は、稼働率が定着するまでに時間がかかる。
グループホームの入居者は、市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員を通じてつながることがほとんどです。指定を受けてから入居者が集まるまでには数か月の時間がかかることが多く、開業直後の稼働率は低い時期が続くことが一般的です。
開業計画の段階では、次のような段階的な稼働率を想定して資金計画を組むことが現実的です。
| 時期 | 稼働率の目安(例) | 定員15人での入居者数 |
|---|---|---|
| 開業1〜3か月目 | 20〜40% | 3〜6人 |
| 開業4〜6か月目 | 40〜60% | 6〜9人 |
| 開業7〜12か月目 | 60〜80% | 9〜12人 |
| 開業12か月以降 | 80〜90%以上 | 12〜14人 |
上の目安は一般的な参考値であり、地域の需要・既存の相談支援専門員ネットワーク・競合施設の有無によって大きく変わります(公的データによる数値ではなく経験的な目安です)。全国の経営実態調査は安定稼働している事業所の平均値であり、開業初期はこれを大きく下回ることを前提に資金計画を組む必要があります。
稼働率を上げるためには、相談支援専門員との連携が最も重要。
グループホームの入居者は、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画を通じてつながることがほとんどです。地域の相談支援専門員に事業所を知ってもらい、空き情報を定期的に共有することが入居者確保の基本です。
具体的な取り組みの例は次のとおりです。
- 地域の基幹相談支援センター・相談支援事業所への定期的な情報提供(空き状況・支援の特徴・対応可能な障害種別)
- 障害者就業・生活支援センターとの連携(就労移行支援や就労継続支援の利用者との接点を作る)
- 市区町村の障害福祉担当窓口へのあいさつと空き情報の提供
- 地域の障害者支援施設・就労継続支援事業所との情報共有
- 事業所のウェブサイト・SNSでの空き情報・支援方針の発信
地域によって需要の多寡はありますが、「相談支援専門員との接点を広くつくる」ことが最も直接的に入居者確保につながります。開業前から地域の相談支援体制を把握し、関係を築いておくことが早期の稼働率定着につながります。
収支シミュレーターで稼働率を変えた試算ができる。
障害者グループホーム 開業向け収支シミュレーター(https://fufumumu-design.com/gh-keikaku/)では、稼働率(入居者数)を変えながら月次の収入・費用・収支差率・36か月の資金残高を確認できます。
Pro版(買い切り¥9,800)では次の試算が可能です。
- 稼働率の段階的設定(開始期・中期・定常期)で黒字化のタイミングを確認
- 障害支援区分の構成を変えて収入の変化を比較
- 処遇改善加算・夜間支援等体制加算・人員配置体制加算のオン/オフで加算の効果を確認
- 借入金額・金利・返済期間の設定で資金ショートしない稼働率の目安を確認
「自事業所の条件で何%の稼働率が必要か」をシミュレーターで確認してから、入居者の受け入れ目標を設定することをお勧めします。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 障害者グループホーム 開業向け収支シミュレーター
【出典一覧】
・厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」第17表(介護サービス包括型・共同生活援助・令和4年度決算)
・厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf)13ページ
・平成18年厚生労働省告示第523号(指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準・令和8年6月改正)


コメント