差動式分布型感知器(空気管式)は、自動火災報知設備の中でも構造が独特な感知器だ。スポット型が一点で温度を感じるのに対して、分布型は細い銅管(空気管)を広い範囲に張り巡らせて、エリア全体の温度上昇を1つの検出部でとらえる。
この構造ゆえに、倉庫・体育館・工場のような広いスペースや、天井に煙が届きにくい高天井の建物に向いている。試験では「ダイヤフラムの役割」「リーク孔の役割」「ポンプ試験の手順」が繰り返し出題される。本記事では一次資料(規格省令・施行規則)の条番号を軸に、構造・設置基準・試験方法を整理する。
差動式分布型感知器とは
差動式分布型感知器は、周囲の温度が急激に上昇したとき(差動)に発報する感知器のうち、検知エリアを広く分布させた形式だ。消防法施行規則第23条第4項で設置基準が定められている。
分布型には「空気管式」「熱電対式」「熱半導体式」の3種類があるが、試験で最も頻出なのが空気管式だ。構造が複雑なぶん、各部品の役割を問う問題が多い。
空気管式の内部構造
空気管式は「空気管」と「検出部」の2要素で構成される。
空気管
空気管は天井面に沿って張り巡らせる細い銅管だ。感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(以下「規格省令」)第17条第1項で、以下の寸法が定められている。
- 外径:3mm以上
- 内径:1.5mm以上
- 肉厚:0.3mm以上
火災が発生すると、空気管の周辺温度が上昇し、管内の空気が膨張する。その膨張した空気が検出部へ送られ、発報の引き金となる。
なお、1つの検出部に接続できる空気管の長さは100m以下に制限されている(規格省令第17条)。この制限を超えると、空気管内の空気量が多すぎて膨張分が検出部に届きにくくなり、検知感度が低下するためだ。
検出部の4要素
検出部は空気管の末端に取り付ける箱状の部品で、以下の4要素で構成される。
| 部品名 | 役割 | 補足 |
|---|---|---|
| ダイヤフラム | 空気管からの空気圧を受けて変形し、接点を押し上げる | 薄い金属板。膨張した空気の圧力で接点が閉じる |
| リーク孔(小孔) | 緩慢な温度上昇(非火災要因)では空気を逃がして誤作動を防ぐ | 急激な膨張だけをダイヤフラムに届ける「ふるい」の役割 |
| 試験孔(試験コック) | 試験器を接続して人為的に空気を送り込む穴 | ポンプ試験に使う。規格省令第17条第1項第5号 |
| 接点 | ダイヤフラムが押し上げると閉じ、受信機に発報信号を送る | 火災信号の出力部 |
試験でとくに問われるのがリーク孔だ。「緩慢な温度上昇では空気がリーク孔から逃げるので作動しない」というのが正しい動作だ。リーク孔が詰まると、緩慢な温度上昇でも発報してしまう(誤報の原因になる)。逆に、リーク孔が大きすぎると急激な温度上昇でも空気が逃げて感知しなくなる。
差動式スポット型との比較
同じ「差動式」でも、スポット型と分布型は構造と用途が異なる。
| 比較項目 | 差動式スポット型 | 差動式分布型(空気管式) |
|---|---|---|
| 検知範囲 | 感知器1個の設置点付近のみ | 空気管を敷設した広いエリア全体 |
| 検知方法 | 感知器内部のバイメタルや空気室が温度変化を感知 | 空気管内の空気膨張を検出部のダイヤフラムが感知 |
| 設置個数 | 感知面積に応じて複数個が必要 | 1台の検出部で広いエリアをカバー可能 |
| 適した場所 | 一般的な居室・廊下・事務所 | 倉庫・体育館・工場・高天井の建物 |
| 故障時の特定 | 個別の感知器が故障したか特定しやすい | 空気管のどこが断線・詰まりか特定に手間がかかる |
| 試験根拠 | 規格省令第7条 | 規格省令第17条 |
設置基準(相互間隔と露出長さ)
差動式分布型感知器(空気管式)の設置基準は、スポット型感知器のような「感知面積で個数を割り出す」方式ではない。空気管の相互間隔と露出長さで設置計画を立てる点が特徴だ(消防法施行規則第23条第4項第四号・第八号)。
| 設置基準の項目 | 数値・条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 空気管の露出長さ(感知区域ごと) | 20m以上 | 施行規則第23条第4項第八号 |
| 1台の検出部に接続できる空気管の長さ | 100m以下 | 規格省令第17条 |
| 相対する空気管の相互間隔(1種・耐火構造) | 9m以下 | 施行規則第23条第4項第4号ロ |
| 相対する空気管の相互間隔(1種・その他) | 6m以下 | 施行規則第23条第4項第4号ロ |
| 天井面(取付面)の最も高い部分からの距離 | 0.3m以内 | 施行規則第23条第4項 |
| 壁からの距離 | 0.6m以上 | 施行規則第23条第4項 |
スポット型は「床面積 ÷ 感知面積=個数」で計算するが、分布型は「天井に張り巡らせた空気管が相互間隔の基準を満たしているか」で判断する。平面図に空気管のルートを描いて間隔と長さを確認する形だ。
ポンプ試験の手順
差動式分布型感知器(空気管式)の機能試験は、ポンプ試験器(試験ポンプ)を使って行う。試験の種類は「作動試験」と「不作動試験(流通試験)」の2つだ。
作動試験
作動試験は「火災時に正しく発報するか」を確認する試験だ。
| 手順 | 操作 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 1 | 試験コックを閉じる | リーク孔を遮断し、空気が逃げない状態にする |
| 2 | ポンプを試験孔に接続する | 試験孔(試験用コック)にポンプのノズルを差し込む |
| 3 | ポンプで空気を送り込む | 規定回数または規定圧力まで圧送する |
| 4 | ダイヤフラムの作動を確認する | 接点が閉じて受信機が発報することを確認 |
| 5 | 試験コックを開いて元に戻す | 作動した接点をリセットし、通常監視状態に戻す |
不作動試験(流通試験)
不作動試験はリーク孔が詰まっていないかを確認する試験だ。リーク孔が詰まると、緩慢な温度上昇でも発報してしまう(誤作動)。
試験コックを開いたまま(リーク孔を生かした状態で)ポンプから空気を送り込む。空気がリーク孔から流出していれば正常だ。空気が流れない場合はリーク孔が詰まっている可能性があり、検出部の交換や清掃が必要になる。
試験の根拠は消防法施行規則第31条の6(点検基準)だ。機器点検(6か月ごと)と総合点検(1年ごと)の両方でこれらの試験が行われる。
試験出題パターン5件
消防設備士4類の試験では、差動式分布型感知器(空気管式)について以下のパターンが繰り返し出題されている。
パターン1:ダイヤフラムの役割を問う問題
「差動式分布型感知器(空気管式)の検出部において、空気管内の空気の膨張を受けて変形し接点を閉じる部品は何か」という形式。答えはダイヤフラムだ。バイメタルと混同しないこと(バイメタルは差動式スポット型の部品)。
パターン2:リーク孔の役割を問う問題
「リーク孔の役割として正しいものはどれか」という選択肢問題。「緩慢な温度上昇による空気膨張を逃がして誤報を防ぐ」が正解だ。「急激な温度上昇を検知するため」という誘導選択肢が定番で引っかかりやすい。
パターン3:リーク孔が詰まった場合の影響を問う問題
「リーク孔が詰まった場合の影響はどうなるか」。緩慢な温度上昇でも発報(誤作動)するというのが正解。リーク孔が詰まると「ふるい」が機能しなくなるため、すべての温度上昇で発報してしまう。
パターン4:空気管の接続長さ制限を問う問題
「1つの検出部に接続できる空気管の最大長さはいくらか」。規格省令第17条より100m以下だ。これを超えると感度が低下する理由(空気量過多)もセットで覚えておくと応用問題に対応できる。
パターン5:作動試験の手順を問う問題
「空気管式感知器の作動試験でポンプ試験器を使う場合、最初に行う操作はどれか」。試験コックを閉じてリーク孔を遮断するのが最初の手順だ。試験コックを開いたままでポンプを使う試験は流通試験(不作動試験)であり、作動試験ではない。
設置場所と感知器選択の考え方
差動式分布型感知器(空気管式)が求められる場所は、主に以下の3パターンだ。
1つ目は高天井の建物(天井高8m以下の範囲内)。天井高が高いと煙が降りてきにくく、スポット型感知器では感知が遅れる。空気管式は天井面の広い範囲に管を張り巡らせるため、高天井でも有効に機能する。
2つ目は倉庫・工場など広い空間。スポット型では個数が多くなり費用もかかる。分布型は1つの検出部でエリアをカバーするため、広い空間でのコスト効率がよい。
3つ目は厨房など熱・蒸気が発生するが感知器の誤作動が困難な場所。ただし、厨房は定温式感知器(特種・1種)が一般的に選択されるため、空気管式が優先される場面は限られる。施行規則第23条第4項の「感知器の設置除外場所」(著しく腐食性ガスが発生する場所など)も確認しておくこと。
よくある誤解の整理
空気管式を学ぶときに混乱しやすいポイントを整理する。
「試験孔はリーク孔の代わりに使う孔ではない」
試験孔はポンプ試験器を接続するための専用の孔だ。リーク孔はダイヤフラムへの気圧路にある小孔であり、両者は別の部品だ。
「空気管の詰まりと断線は別の不具合」
空気管が詰まると空気が膨張しても検出部に届かず感知不良になる。断線すると同様に空気が漏れて感知不良になる。いずれの場合も総合点検の流通試験で発見できる。
「分布型は1本の空気管を検出部1台で管理する」
空気管の長さが100mを超える場合は検出部を増やして対応する。複数の検出部を並べることはできるが、1台の検出部に接続する空気管は100m以下に収める。
まとめ
差動式分布型感知器(空気管式)のポイントをまとめる。
- 空気管(銅管:外径3mm以上・内径1.5mm以上)を天井面に張り巡らせ、火災時の温度上昇による空気膨張を検出部に届ける
- 検出部の4要素:ダイヤフラム(接点を閉じる)・リーク孔(緩慢な温度上昇を逃がす)・試験孔(試験器接続)・接点(発報信号出力)
- 1台の検出部に接続できる空気管の長さは100m以下(規格省令第17条)
- 設置基準は感知面積ではなく相互間隔と露出長さ:感知区域ごとに露出長さ20m以上(規則第23条第4項第八号)・1検出部100m以下・1種の相互間隔は耐火9m以下・その他6m以下(規則第23条第4項第四号)
- 作動試験では試験コックを閉じてからポンプで空気を送り込む。不作動試験(流通試験)は試験コックを開いたまま行う
- リーク孔が詰まると緩慢な温度上昇でも誤作動する。リーク孔が大きすぎると急激な温度上昇でも感知しなくなる
構造を理解したうえで問題を解くと、選択肢の引っかかりポイントが見えやすくなる。AI問題集でダイヤフラム・リーク孔・試験手順の問題を繰り返し解いて定着させてほしい。
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試験の詳細・免除制度・学習の進め方は消防設備士4類 試験ガイドもあわせて参照してください。
出典・参考法令
- 消防法施行規則第23条第4項(感知器の設置基準・感知面積)
- 消防法施行規則第31条の6(点検の基準)
- 感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(規格省令)第17条(差動式分布型感知器の規格)
- 消防試験研究センター「消防設備士試験」(2026年度試験情報)
本記事の内容は執筆時点の法令・規格に基づいています。試験準備には必ず消防試験研究センターの最新情報を確認してください。問題集のAI出題機能は学習補助を目的としており、合格を保証するものではありません。


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