保育所の不審者対応訓練は、令和5年4月施行の安全計画(第6条の3)により、年1回以上の実施が義務になりました。「さすまたはあるが使い方を誰も知らない」「マニュアルが作られていない」という施設は、この記事で準備の手順を確認してください。
この記事では、根拠条文・対応マニュアルの作り方・訓練シナリオの例・日常の防犯対策・記録の残し方を整理します。
不審者対応訓練は、安全計画(第6条の3)の対象
令和5年4月1日施行の児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条の3(安全計画)は、保育所に安全計画の策定と年1回以上の研修・訓練の実施を義務づけています。
安全計画の対象分野は次の6分野です。
| 対象分野 | 具体的な場面 |
|---|---|
| 施設・設備の安全 | 遊具・設備の点検、転倒・落下防止 |
| 食事中の誤飲・誤嚥 | 食形態の確認、異物混入の防止 |
| プール・水遊び | 監視体制、水質管理、中止基準 |
| 交通安全 | 散歩ルートの安全確認、横断時の誘導 |
| 不審者等による犯罪への防犯 | 門の施錠、侵入時の対応、110番通報 |
| アレルギー対応 | 誤食防止、エピペン対応 |
不審者対応は6分野のうちの1つです。安全計画の中に不審者対応の方針と手順を盛り込み、年1回以上の訓練を実施して記録を残すことが求められます。
不審者対応マニュアルに盛り込む5項目
マニュアルがない施設では、実際に不審者が現れたときに現場が混乱します。次の5項目を最低限盛り込んだマニュアルを作成してください。
-
不審者の発見から施錠までの手順
発見した職員が大声を出さずに別の職員へ合図を送る方法(事前に決めた暗号を使う施設が多い)、侵入を防ぐための施錠ルートを記載します。不審者が敷地に入る前・入った後・建物内に侵入した後の3段階に分けて手順を書くと実用的です。 -
110番通報の担当者と手順
誰が通報するかを役割分担表で決めておきます。通報時に伝える内容(施設名・住所・不審者の特徴・現在の状況)を記載したカードをカウンターや職員室に貼っておくと、混乱の中でも正確に伝えられます。 -
子どもの避難誘導の手順
不審者の位置によって逃げる方向が変わります。「保育室の扉を施錠して中に待機する」「園庭の奥へ誘導する」「隣接する施設へ避難する」など、複数のパターンを想定して手順を書いてください。 -
さすまたの設置場所と使い方
さすまたがどこにあるか・誰が取りに行くかを決めておきます。使い方は後述します。 -
保護者への引渡し手順
不審者の侵入があった場合、通常の降園手順では対応できないことがあります。保護者への一斉連絡の方法・引渡し場所・本人確認の手順を事前に決めておいてください。
さすまたは、距離を保ちながら複数人で使う
さすまたは「不審者を倒す道具」ではなく、「警察が到着するまで時間を稼ぐ道具」です。使い方の要点を整理します。
- 1人で立ち向かわない:最低2人以上で対応します。1人がさすまたで牽制しながら、もう1人が逃げ道を確保・通報を行います
- 距離を保つ:さすまたの長さを活かして、相手に近づかせないようにします。相手の胸または腰あたりにU字部分を当て、壁や柱に追い詰めます
- 奪われないようにする:U字部分を相手に掴まれた場合は無理に引かず、押し込む方向で対抗します
- 定期的に触れておく:年1回の訓練でさすまたを実際に持って動き、重さと扱い方を体験させてください
さすまたを置いていても「誰も触ったことがない」という施設が多いです。訓練では実際に手に取り、2人1組で押さえる練習をしてください。
訓練のシナリオは2パターン用意する
不審者対応訓練のシナリオは、「門から侵入するケース」と「保護者を装うケース」の2パターンを使い回すと訓練に幅が出ます。
シナリオ1:不審者が正門から侵入するケース
訓練の流れ:インターホンに応答した職員が不審者に気づく→園長への報告(合図)→不審者と距離を取りながらさすまた対応→別の職員が110番通報→子どもを保育室へ誘導・施錠→警察到着→振り返り
この場合、「誰が不審者に対応するか」「誰が通報するか」「誰が子どもを誘導するか」の役割分担を訓練後に評価してください。
シナリオ2:保護者を装ったケース
訓練の流れ:「子どもを迎えに来た」と名乗る人物が来る→連絡帳や名簿で確認できない→施設内には入れずインターホン越しで対応→本人確認が取れない場合の手順(園長への報告・保護者への電話確認・110番の判断)
「知らない人でも迎えを装われると断りにくい」という現場の心理を訓練で意識化しておくことが大切です。
日常の防犯対策で「入らせない」環境を作る
訓練と並行して、日常的な防犯対策の習慣を全職員で共有してください。
- 正門・通用門は常時施錠:開放している時間帯がある施設は、その時間帯に職員が門付近で目を光らせる当番を決めてください
- インターホンで顔を確認してから開錠:急いでいる保護者が来ても、顔の確認を省略しない習慣を徹底します
- 外部者には必ず声をかける:「本日はどちらに御用ですか」という一声が不審者の抑止になります。「知らない人がいる」と気づいても声をかけにくい職員には、訓練で声かけの実践を
- 職員は名札を着用:内部者か外部者かを一目で判別できる環境を作ります
- 受付への名簿の常備:来訪者記録を残すと、後から確認ができます
訓練記録に残すべき項目
不審者対応訓練の記録として最低限必要な項目は次のとおりです。
- 実施日時
- 訓練のシナリオ(どのケースを想定したか)
- 参加した職員の人数・氏名
- 訓練の経過の概要(役割分担・対応の流れ)
- 振り返り(うまくいかなかった点・次回の改善事項)
- さすまた操作訓練の実施有無
運営指導でよく指摘される不備
- 不審者対応マニュアルが存在しない:「今まで何もなかったから」という理由でマニュアルを作っていない施設は少なくありません。安全計画の策定が義務化された現在は、対応手順の文書化が求められます
- 訓練の記録がない:「毎年やっている」という認識でも、記録がなければ実施の証明になりません。年1回の実施記録を保管してください
- さすまたの設置場所を職員が知らない:「どこかにあるはず」という状態では緊急時に使えません。設置場所を全職員に周知し、訓練で確認させてください
- 役割分担が決まっていない:「誰かが通報するだろう」という状態では、緊急時に通報が遅れます。通報担当・対応担当・誘導担当を事前に決めておいてください
まとめ
保育所の不審者対応訓練は、安全計画(第6条の3)に基づき年1回以上が義務です。マニュアルには「侵入確認の手順・施錠・110番通報担当・子どもの誘導・保護者への引渡し」の5項目を盛り込み、さすまたは実際に触れる訓練を組み込んでください。
日常の防犯対策(門の施錠・インターホン確認・外部者への声かけ)と訓練を組み合わせることで、「入らせない環境」と「入られたときの対応力」の両方を整えられます。
不審者対応訓練の計画・記録様式・マニュアルのひな形をまとめたツールを用意しています。ぜひ活用してください。


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